2017年09月27日 10:13 弁護士ドットコム
全国のクリーニング店が、客が数か月以上に渡って引き取りに来ない品物を抱え困っているーー。そんな業界団体の調査結果を9月19日、NHKが報じた。
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NHKによると、数か月以上にわたって客が引き取りに来ない衣類や、布団などの品物を保管している事業者は、回答があった全国427の事業者のうち87.4%にのぼった。中には25年以上保管していると答えた事業者もいるそうだが、預かった品物は勝手に処分できず、多くの店が困っているという。
衣類を保管し続けることで、スペースも取られるなど、多くのクリーニング店が悩みを抱えている。ある程度期間が経過しても、商品を捨ててはいけないのか。上田孝治弁護士に聞いた。
「クリーニングに出した衣類については、客にその所有権があり、民法上、所有権は消滅時効にかかりません。したがって、衣類の所有権に基づいて衣類の返還を求める権利も消滅時効にかかることはないというのが民法に基づく結論になりますし、クリーニング業法にも保管期間に関する規定はありません」
所有権が消滅しないとなると、預かったものは永久に処分できないのか。
「クリーニングについては、一つ一つの衣類自体はそれほど高価でないことがほとんどであり、他方で、客が取りに来ないにもかかわらず、クリーニング業者が永遠に衣類を保管しなければならないとなると、クリーニング業者の保管費用等の負担が大きくなってしまいます。
そこで、クリーニング業者が、あらかじめ合理的な衣類の保管期間や、期間経過後の衣類の処分に関する規約等を定め、個々のクリ-ニングの契約に先立ってこの規約等を客側に周知していれば、その規約等の内容に従って衣類の処分をすることもできると考えられます」
現在はどういった規約になっているのか。
「全国クリーニング生活衛生同業組合連合会が定めたクリーニング事故賠償基準には、クリーニング業者が洗たく物を受け取った日から原則として1年を経過したときはクリーニング業者は賠償責任を負わない旨の規定があります。この原則1年という期間が、クリーニング業者が保管期間に関するルールを定める場合の一つの目安になると思います。
もちろん、規約等で定めることができると言っても、本来は所有権は消滅時効にかからないわけですので、クリーニング業者が全く自由にルールを定められるわけではありません。例えば、規約等で保管期間が極端に短く定められていれば、そのような定め自体が不当な内容として無効になります。
その場合、クリーニング業者は、規約等で定めた保管期間の経過後も、客からの衣類の返還請求や返還不能な場合は返還に代わる損害賠償請求に応じなければならないことになります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
上田 孝治(うえだ・こうじ)弁護士
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行っている
事務所名:神戸さきがけ法律事務所
事務所URL:http://www.kobe-sakigake.net/