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三浦大知、なぜアーティストからも支持される? ドリカム提供曲「普通の今夜のことを」から考察

2017年09月27日 10:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 9月18日に放送された『ミュージックステーション ウルトラFES』(テレビ朝日系)においてSOIL&”PIMP”SESSIONSとともに「Cry & Fight」のコラボレーションを披露した三浦大知。ピアノとトランペットが引っ張るジャジーなサウンドに生まれ変わったこの曲を流麗に歌いこなしたかと思えば、サビの後にはダイナミックさと繊細さが同居するソロダンスを見せつけ、そこからダンサー4人とのシンクロダンスに突入するなど、彼のポテンシャルが存分に発揮されたステージだった。打ち込みのビートに生楽器が絡み、そこに三浦大知のフィジカルな魅力が上乗せされたこのセッションのインパクトは、10時間という長丁場で行われた番組の中でもトップクラスのものだったと言っていいだろう。


参考:三浦大知、雨の中で見せたエンターテインメントの力!  代々木公園フリーライブレポート


 テレビ番組でのセッションというのは、今の日本の音楽シーンにおいてユニークな表現の生まれる場所としてより重要度を増している。三浦大知はここ数年のそんな流れと非常に親和性の高いアーティストである。アーティスト同士のセッションを前面にフィーチャーしたフジテレビ『水曜歌謡祭』に常連として出演し、同局の『FNS歌謡祭』では数多のセッションをこなしてきた。昨年末に放送された同番組におけるMIYAVIとの「Cry & Fight」が大きな話題を呼んだのも記憶に新しい。また、今年の7月に放送された『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)では坂見誠二やRADIO FISHのメンバーと即興ダンスを披露していたが、短い時間で振り付けを考える際のとても楽しそうな様子が印象的だった。


 テレビ番組のセッションにおいて求められるのは、一発勝負的な瞬発力である(特に『FNS歌謡祭』『ミュージックステーション』のような生放送の番組であればなおさらである)。普段とは異なる環境において、ノーミスのパフォーマンスを行わなくてはならない。そんな状況下において、ダンス、歌ともに高いスキルを併せ持つ三浦大知が重宝されるのは、ある意味では自明とも言える。メディア露出が急速に増え始めたここ最近よりもずっと前から、彼のスキルは多くの同業者から羨望と尊敬の眼差しを浴びていた。多数のコラボレーションに三浦大知が引っ張り出される最近の風潮は、そう言った評判にテレビが追いついたという説明の方が正確かもしれない。


 また、同時に着目したいのが、彼のミュージシャンとしての足跡である。もともとはFolderで自分以外の人が作った楽曲を表現するところからキャリアをスタートし、楽曲制作に関わるようになった今でもコライトの形で他のアーティストと絡むことも多い。「1人でこもって何かを作り上げる」より「チームで一つのアウトプットを組み上げていく」というスタンスが彼の中にインストールされているのだろう。外から見えるハイレベルなスキルとコラボ慣れした内面のスタンス、その双方が三浦大知を様々なセッションの場に向かわせている(それに加えて、テレビ番組のトークなどで垣間見える人柄の良さも大いに関係しているように思える)。


 これまでテレビ番組や楽曲制作において様々なコラボを経験してきた三浦大知。9月27日に配信限定でリリースされる「普通の今夜のことを - let tonight be forever remembered -」でのコラボ相手は、DREAMS COME TRUEである。作詞作曲をDREAMS COME TRUEが手掛け、その曲を三浦大知が歌う。彼への注目が高まりつつあるタイミングで、超大物と真正面から向き合ったコラボレーションが実現した。角度は違えど、海の向こうのダンスミュージックをいかに日本のポップスに落とし込むかということを腐心し続けているこの2組。相性が良くて当然の組み合わせである。


 この曲に先駆けて、7月には三浦大知による「決戦は金曜日」のカバーが発表されている(7月7日リリースの『The best covers of DREAMS COME TRUE ドリウタVol.1』に収録)。シェリル・リン「Got To Be Real」を下敷きに作られたこの曲を、彼は原曲の印象的なホーンを生かしながらトロピカルハウス風のサウンドにアレンジした。1992年にリリースされた楽曲を時流にあわせて再構築した「決戦は金曜日」に対して、「普通の今夜のことを - let tonight be forever remembered -」で志向されているのは「決戦は金曜日」とは逆ベクトル、つまり「流行」ではなく「普遍」を追求するようなアプローチである。ゆったりと刻まれる生っぽいリズムトラック、前述の「決戦は金曜日」よりまろやかに響くホーンなど、オーセンティックなR&BからAORっぽさまでを包含するこの楽曲の雰囲気はどこまでも大人っぽい。そんな落ち着いたムードと同期するように、メロディラインもサビで必要以上に歌い上げたりしないナチュラルな響きを湛えている。歌唱力がなければ歌いこなすのは難しいであろうこのメロディをぶつけたところに、DREAMS COME TRUEが三浦大知へ寄せる信頼の高さがうかがえる。


 本サイトに先日掲載された『U』に関する原稿(三浦大知はいかにして音楽シーンで稀有な存在になったかーーFolderからの20年を追う)でも触れたが、三浦大知はこれまでもコラボ相手の持つ才能とうまくリンクしながら自身の表現を磨き上げてきた。今回の「普通の今夜のことを - let tonight be forever remembered -」でも、大先輩の胸を借りながら以前とは一味違うアダルトなアウトプットを生み出すことに成功している。この先も、様々なアーティストと有機的につながりながら新たなトライを見せてくれることを期待したい。(レジー)