2018年シーズン限りでメルセデスベンツAMGが撤退することになり、シリーズの岐路に立たされているDTMドイツツーリングカー選手権。9月8~10日に行われたニュルブルクリンク戦では、会場でBMWモータースポーツ代表のイェンス・マルカルトが、BMWのDTMに対する取り組みと将来について語ったが、ここでは興味深いコメントが語られている。
メルセデスがDTM撤退を突如発表し、モータースポーツ界に衝撃的なニュースが走ってからは、さまざまな不穏な噂が交錯しているDTMのパドック。そんな渦中のさなか、ニュルブルクリンク戦のレースウイークに、マルカルトの主催でごく限られた少数のメディアだけを招待しての、バーベキューパーティが開催された。
このなかでマルカルトは、ラフながらも緊張感がある雰囲気のなか、今後のBMWモータースポーツの方針や質疑応答に関して真摯に対応を行った。このなかの一部は、BMWからメディア向けに配信されているが、その他にも興味深いコメントが多数発せられている。
■DTMとスーパーGTの共通化へ前向きなコメント
「現在もDTMの主催者であるITRと、スーパーGTをプロモートするGTアソシエイションとで話し合いが続けられている『クラス1』レギュレーションだが、現在はまだ両国の独自のレギュレーションに沿って活動しており、完全なレギュレーション統一化という部分では少し時間が掛かっているが、スーパーGTとの交流戦には非常に魅力を感じている」とマルカルトはスーパーGTとの規定統一化について、前向きなコメントを残した。
すでに2014年からモノコックの共通化は進み、BMWは最大の障壁とも言える2リッター4気筒ターボエンジンについても、すでに開発を進めていると公言した。マルカルトは、BMWモータースポーツとしての今後の活動において、インターナショナルなプラットホームに身を置くことは非常に重要であると考えているとも述べている。
「今後はさらにGTAとの協議と詰め、関係を強化し、なるべく早い時期に完全なるレギュレーションの統一化へ努めたいと願っている。また、今後なるべく早い時期に細部に渡るレギュレーションまで詰めていきたい」
「日独両国が歩み寄り、両国にとって実りのある、インターナショナル化したレース運営が行えることが重要であり、BMWとしてもクラス1は理想的なレースレギュレーションだと考えている。クラス1が実現し、フィールドが広がることによって世界中のファンにも興味深いレースになることは間違いないだろう」
「ITR代表のゲルハルト・ベルガーもクラス1には賛同しており、共通化に向けて精力的にプッシュしていることもあり、BMWの希望とITRの方針が一致して良い方向に向かっている」
「BMWは2012年にDTMへ20年ぶりにカムバックを果たし、わずか数年でこの素晴らしいシリーズからまた撤退することは考えてはいない。クラス1についてはGTAとともに、ITRが長年に渡って話し合いを重ねてきており、これを実現するために双方が非常に努力をしている。両国にとってクラス1は今後のモータースポーツ活動の発展のために重要な位置を占めると確信している」
またマルカルトは、細部のDTMとスーパーGTのレギュレーションの違いについて、「DTMはスプリントでスーパーGTはセミ耐久。スーパーGTはDTMにない給油やドライバー交代、タイヤメーカーがフリー、さらにはエアロやDRSなど、さまざまな件も話し合いのテーマに上がり、双方で異なる部分も多々あるものの、たがいに譲歩しながらそれらを詰めていく」としている。
■マルカルトが“古巣”を訪問
さらにこのバーベキューパーティのなかでマルカルトは、9月6日に、ケルンにあるトヨタ・モータースポーツGmbHを訪れたことを明かした。マルカルトはBMWモータースポーツの代表になる前は、トヨタF1チームのビジネス・デベロップメント・マネージャーとしてTMGに在籍していたこともあり、TMGは古巣と言える。
ここでマルカルトは、レクサスブランドのDTMへの“勧誘”を行ったことを認めたTMGはロジスティクスや開発拠点の面で、DTMに参戦するには最良であること、またレクサスブランドのマーケティング戦略においても魅力的なプラットフォームであることを強調しており、当日は「元同僚たちと良好な話し合いができた」と語った。
DTMは2018年はさらにドイツ国外でのレース開催数を増やす可能性を探って、カレンダーの調整を行っているとの情報もある。今後残される2メーカーの動向、そして新規参入のゆくえ等々、今後のDTMの動向にはますます注目が集まりそうだ。