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「僕が2018年にF1参戦できる場合は、たぶんそうなるだろう」注目のガスリーがトロロッソ・ホンダに言及

2017年09月26日 14:02  AUTOSPORT web

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F1への昇格が近づくなか、ガスリーの焦点はスーパーフォーミュラのタイトルへ
自己最高3番グリッド発進から3連勝を狙ったスーパーフォーミュラ第6戦SUGO、ピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)は2位という結果で決勝レースを終えた。近年のこのカテゴリーでは稀な3連勝の快挙こそ達成ならなかったが、3戦連続表彰台でシリーズ首位に0.5点差と接近。ホンダ勢唯一のタイトルコンテンダーとして、さらには来季のホンダF1ドライバー有力候補としても、その存在感をさらに強めている。

「とにかくスタートが重要だと考えていた」とレース後に語ったガスリー。そのスタートでは上位陣でもっとも良い出足を見せ、目の前のポールポジションからの動き出しが良くなかったニック・キャシディ(KONDO RACING)を瞬時に避け、右斜め前の2番グリッドから先頭に出た関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)に並びかけようかというところまで迫った。

「いいスタートが切れて2番手になることができた」。だが、レース序盤は「タイヤのグリップに悩まされていた」こともあり、トップ関口との差は次第に開いていく。レース中盤の30周目過ぎには7秒ほどまでギャップが拡大した。しかし、「中盤あたりからグリップが良くなり、ペースも良くなった」というガスリーは、お互いに給油ピットストップを終えた後の終盤、関口に迫っていく。

 残り3周、差は1秒を切る。「レース終盤は特にマシンが速かったから、関口選手に近づくことができた」。関口がピットで完全給油ならずペース調整を余儀なくされていたことの影響もあったが、どうやら今回のガスリー車はタンクが軽い時ほど感触が良かったようだ。こういうマシンの状態変化に応じて、セーブ/プッシュを適切に使い分けられるのがガスリーのレースマネージメント力の高さでもある。

 だが、多くの競争相手のいるなかで、何もかも思ったようには進まないのがレースの常。「オーバーテイクシステムがもう残っていなかったんだ」。関口攻略は最終的に0.243秒差で叶わず、ガスリーは2位でSUGO戦を終える。3連勝はならなかった。

 でも、「ポジティブなレースだったと感じている。戦略も良かったし、チームは素晴らしいクルマを用意してくれた」。そして、「今回はセーフティカー導入がなかったというのに無給油で走りきったマシンがいたね。我々もさらに学習する必要がある」と、さらなる向上を目指す姿勢を忘れていなかったのも彼らしかった(最終戦は2レース制なので、彼がスーパーフォーミュラの250km戦を走ることはおそらくもうないが)。

 さて、2週間前のオートポリス戦の際にはF1でのトロロッソ・ホンダ誕生という当時はウワサ段階だった話に、「僕は今年スーパーフォーミュラでホンダと仕事をしている。もし来シーズン僕がF1に参戦できて、その関係が維持されるならナイスなことだと思う」と話していたガスリー。この中間に来季のトロロッソ・ホンダ誕生は正式に決定した。

 ガスリーが念願のF1昇格を来季に果たすならば、レッドブルのジュニアドライバーである彼の加入チームはほぼ確実に、系列のトロロッソだろう。つまり、彼はホンダ製パワーユニットで走ることが濃厚になってきつつあるのだ。自身憧れの存在であるアイルトン・セナが長く親しんだ「Powered by HONDA」で、ガスリーもF1を走ることになる。

 それを言うと、ガスリーは『まだ決まってないよ』という感じで笑いながらも、「そうだね。僕が来季F1に参戦できる場合は、たぶんそうなるだろう」と語った。

「僕はこれまでのレースキャリアの多くの時間をレッドブルとともに歩んできた。フォーミュラ・ルノー3.5でシリーズ2位(2014年)になり、GP2でチャンピオン(2016年)になり、今年もこうして(レッドブルカラーのマシンで)スーパーフォーミュラのチャンピオンを狙える位置にいる。これからもレッドブルとともにありたいからね」。F1参戦が実現するなら、それはやはりトロロッソ・ホンダなのだ。そして、「今はチャンピオンを獲るためにベストを尽くしたいと思っている」とも。

 一時は年内のF1デビュー、日程重複によるスーパーフォーミュラ最終戦欠場の可能性もウワサされたガスリーだが、ここへ来てその方向性はトーンダウンしてきたように感じられる。もちろん、どうなるかはまだ分からないが、今の彼はスーパーフォーミュラ王座獲得のチャンスにフォーカスしているようだ。

 SUGO戦終了後、片付け作業の続くチーム無限のピットでガスリーは、携帯端末を駆使しながら自分とチームスタッフたちの映像を熱心に、楽しそうに自撮りしていた。もしかするとレッドブルのサイトか何かにアップする“仕事”だったのかもしれないが、チームメンバーともすっかり打ち解けている姿が印象的だった。チームの士気も高まっている。

 ガスリーの自撮りで「マジシャン」と称されていたようなのが、担当の星学文エンジニアである。星エンジニアは「初めてのコースで、金曜からの限られた走行機会のなか、毎レース手探りのような状況でも最近は(セットアップ面で)ベストな“解”に近いところまで辿り着けています。(第2戦のレース2以降)毎回ホンダ勢トップの決勝成績ですしね。すべての能力が高いドライバーです。ポールポジションこそ獲れていませんが、それはクルマのコンディション等々の状況もあってのことで、一発の速さも彼はもっています」とガスリーを高く評価、彼との共同戦線に好感触を得ている。

 星エンジニアは最終戦の舞台・鈴鹿に向けても、「開幕戦の時はレースペースがもうひとつでしたが、今はオートポリス戦のように、高荷重のコーナーが多いコースに対しても速さを発揮できていますからね」と手応えを語る。

 最終戦を前に数字上は8人に可能性が残ったスーパーフォーミュラ王座争いだが、ホンダ勢ではガスリーが唯一のタイトル争覇圏内ドライバーとなった。3戦連続2位以内という勢いと充実感のまま、2度目の鈴鹿実戦を彼がどう戦うのか。1カ月先が楽しみである。