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【今宮純のキャッチポイント】F1マレーシアGPはスコール襲来時のタイヤチョイスが重要な要素に

2017年09月26日 12:22  AUTOSPORT web

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2016年はルイス・ハミルトンがエンジントラブルでリタイアを喫している
過去3年間、メルセデスが全セッションでトップタイムもレースは1勝止まり
いたずらなスコール襲来時のタイヤチョイスが重要なファクターとなる
「フィナーレ・キャンペーン」が4月から行われてきたマレーシアGP。今年、第19回が最後になる。一時は2018年まで継続する動きもあったが、開催権料や観客減少など問題を抱えた主催者は判断せざるを得なかった。 

 1999年にヘルマン・ティルケ氏による設計監修で完成したコースは、2本の往復ストレートと低・中・高速コーナーがバランスよく続き、高低差も22mある。この後に続々できたいわゆる人工的な“ティルケ・タイプ”に比べると、クラシックな味わいもあり、カレンダーから消えるのは惜しい気がする。

 右に長くまわりこむターン1と左に曲がるターン2では、シャシーの回頭性とドライバーのバランス・スロットルが見どころだ。セクター2は6つのコーナーが連なり、高速で抜けるだけに空力バランスがキーポイント。バックストレート入口のターン14はトリッキー、曲がりこみながら減速し、立ち上がり加速につなげる(1年目はここでスピンが目立った)。

 セパンと言えば、スコール。雨がらみセッションが奇跡的に(?)昨年なかったが、15年の予選Q3は20分中断、14年の予選は50分遅れ、13年は雨上がり決勝スタート、12年はセーフティカースタート後に中断……、09年は31周終了の“ハーフポイントレース”。午後から夕方が現地のスコール時間帯なのだ。

 コース排水性は前戦シンガポールとまったく違い、個人的にはF1サーキットで一番だと思う。毎年、改修対策され、高温と風によって路面が乾くのは早い。これはタイヤチェンジのタイミング判断において、忘れてはならないファクター。うまく決断すれば、“ローリスク・ハイリターン”作戦成功だ。

 最近の傾向は、メルセデス勢が14年から3年間全セッションでトップ、ルイス・ハミルトンが連続ポールポジション。ところが、ウイナーは昨年レッドブルのダニエル・リカルド、15年フェラーリのセバスチャン・ベッテル。ちなみにポール・トゥ・ウインは、18年で9回(50%)と五分五分できている。

 1年前の悪夢、思い出さずにはいられない。ベッテルはいきなりニコ・ロズベルグと絡み、0周リタイア、ハミルトンはメルセデスのパワーユニット・トラブルで40周リタイア……。短かった“セパン物語”、勝者は1999年エディ・アーバインから16年ロズベルグまで10人。最後のマレーシアGPにはそのうち4人だけ、これが時の流れというものだ──。

■今宮純が厳選するF1マレーシアGP 6つの見どころ

■キャッチポイント1
 メルセデス勢が3年間セッション1位を独占、それはセクター1と3の“ストレートラインタイム”による。昨年の予選では、マックス・フェルスタッペンとリカルドがセクター2で2位ロズベルグ以上のタイムを記録。だが、ハミルトンに僅差で及ばなかった。ここセパンもやはり、この高速コーナリングエリアが“ホットセクター”になる。

■キャッチポイント2

 前戦で大敗フェラーリ、母国メディアに叩かれ、ベッテルは批難を浴びた。動揺してはいけないこの一戦、チーム内が平常心で臨めるかどうか。首脳陣は引き締めていきたい。今のSF70Hは、高速コーナリングで敵に引けはとってはいない。となれば、2本ストレートに振り向けた”空力バランス“。レッドブルはセクター2、フェラーリはセクター1と3、そこを注視してみたい。

■キャッチポイント3
 いたずらなスコールがやってきたウエットの予選ポールポジションタイムを振り返ると、15年ハミルトン1分49秒834(インターミディエイト)、14年ハミルトン1分59秒431(ウエット)、13年ベッテル1分49秒674(インターミディエイト)。もし、前戦シンガポールGPの決勝でふたりが序盤の水中戦を争っていたら、どうだったか。その前イタリアGPのウエット予選では8位に沈んだベッテル、ちょっと気になるが……。


■キャッチポイント4
 昨年は45グリッドダウンペナルティ、逆ポールポジション(22位)からニューソフトでつなぎ、3ストップ作戦を敢行して7位入賞を果たしたフェルナンド・アロンソ。6位のセルジオ・ペレスに1.411秒差、鈴鹿・日本GP直前に挙げた大戦果だった。パワーユニットのローテーションをセパンからどう組み込むか、ファイナルカウントダウンが始まる。

■キャッチポイント5
 トップ5戦線に火がついてきた。5位ウイリアムズ、6位トロロッソ(7点差)、7位ルノー(10点差)。上位入賞圏から遠ざかるウイリアムズは、来季に精力を向けた。追う2チームに勢いがあり、前戦カルロス・サインツJr.とジョリオン・パーマーが奮戦、ルノー製パワーユニットは、アップデートではない“最新チューニング”を施しているのだろう(前戦は雨がらみでドライバビリティ向上)。

■キャッチポイント6
 コンストラクターズ選手権では、首位メルセデスがフェラーリを三桁102点リードする。昨年は第17戦だった日本GPで、タイトル3連覇を決定した。冒頭でも触れたように、セパンはマシンの総合力が問われる“クラシックなティルケ・コース”。過去18年間で優勝マシンが13回コンストラクターズ選手権を制覇している。これを見てもセパンは、近代で屈指の名コースだと思う。