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『ひよっこ』怒涛の幸せラッシュ! 和久井映見と佐々木蔵之介、“2番目”を選んだ大人たちの恋

2017年09月26日 06:03  リアルサウンド

リアルサウンド

 およそ半年に渡って放送してきた『ひよっこ』(NHK総合)もいよいよ佳境へ。みね子(有村架純)と秀俊(磯村勇斗)、美代子(木村佳乃)と実(沢村一樹)など……様々なキャラクターの恋愛模様が描かれ、それぞれの思いが溢れた第25週「大好き」。キャラクター毎に背負う物語は各々違う。“愛する人を亡くした”2人、愛子(和久井映見)と省吾(佐々木蔵之介)の恋、そして悲しみを乗り超え新たな一歩を踏み出そうとする彼らに、多くの視聴者が涙したことだろう。


(参考:『ひよっこ』脚本家・岡田惠和は菅野美穂の人生をどう描いた? “乙女たち”それぞれの幸せの形


 「スターに恋しているみたいな感じ」と、高嶺の花である“シェフ様”省吾とは会話することも拒み、片思いをし続けてきた愛子。裏天広場で「ごめんね」と空につぶやく愛子とばったり会った省吾は、「美味いコーヒー入れますよ」と、彼女をすずふり亭に誘う。愛子は結婚の約束をしていた人を戦争で亡くしている。同じ、向島電機の職員だった。戦争に出向く前、彼が残した言葉が新しい人と幸せになること。それは彼女を愛しているが故の思いだった。早くに親を亡くし、彼を戦争で失った愛子は、向島電機で働いていた時も、あかね坂で暮らす今も、みんなに笑顔を振りまいてきた。独りで生きる悲しみを知っているからこその明るさ。「辛いけど、下を向くのはやめよう」。そう言って乙女寮の女子達を励ましてきたのは、ほかでもない愛子だった。


 「こんな私でも恋をしていいでしょうか」、その言葉に省吾は笑顔でピースサインを送る。“今でもずっと好きな人”、恋をし続けているのは省吾も同じだった。見合い結婚で出会った省吾と亡き妻・節子。ロマンスはなかったが、調理場から見える彼女にどんどん惹かれていった。もう少ししたら暮らしも安定する。贅沢もしたい。けれど、必死に働く節子は過労で死んでしまう。「ちゃんと言えなかった。あなたと結婚してよかったって。ありがとうって」「今でもずっと好きです」。伝えられなかった思い、愛子には痛いほど省吾の気持ちが分かったはずだ。


 省吾が出したピースサインの意味は、“2番目”。「お互い、忘れなくても。いなくなった人の気持ち変わらなくても。恋は出来ますよね」「2番でいいです。愛子さんにとって私は世界で2番目に好きな男で構わない。そうなりたいです」。互いに気持ちが通じあった2人は、デートとしてまずは墓前に挨拶へ行くことを約束する。2人の会話を厨房から立ち聞きしていたみね子、由香(島崎遥香)、鈴子(宮本信子)たち。由香は、2人の関係、父親である省吾の思いをここで初めて知ることになる。「父をよろしくお願いします」、由香のその言葉に愛子は舞い上がり、すでに“結婚”した気でいる。なんとも愛らしい一幕だ。いずれ愛子が、自分の新しい母親になる。そう察した由香にとって、かけ違えたボタンをまた新しくはめ直した瞬間でもあった。


 出来なかったこと、してやれなかったこと、してほしかったこと、諦めていたこと。人生はいつだってやり直せる。それを愛子と省吾が教えてくれた。


(渡辺彰浩)