2017年09月25日 10:43 弁護士ドットコム
9月5日に放送されたテレビ番組「ガイアの夜明け」で、ビールの市場シェアで万年2位が続くキリンの奮闘が紹介された。しかし、仕事終わりの居酒屋で男性の営業マンが先輩から叱責を受けるシーンについて、「パワハラではないか」「不快だ」などの声があがっている。
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番組では、関西の営業担当者が集まって打ち合わせをした後、「本当の会議が始まる」として居酒屋で先輩が後輩の男性社員を激しく詰めるシーンが放送された。
「覚悟が足らん!」「10年後に会社を背負うのはお前たちの世代だ!」「お前どれだけやっとんねん。やってないねん。やれや!」などと言われ、後輩社員は涙していた。
先輩が後輩を居酒屋に連れて行き、仕事の説教をするというのは、「飲みにケーション」の一環として時折見かける光景だ。ただ、叱責された後輩社員は心が折れて、働けなくなってしまったり、逆に「これはパワハラだ」と憤ったりすることもあるかもしれない。
居酒屋での説教が「パワハラ」になってしまう可能性はあるのだろうか。高木由美子弁護士に聞いた。
そもそもパワハラの定義は何か。
「パワハラ、つまりパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職場内の優位性を利用して、業務の適正な範囲を逸脱して、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる言動とされています」
どういった行動がパワハラになるのか。
「パワハラになりうる行動の典型例としては、暴力行為、人格を否定するような暴言、侮辱的発言、無視や仲間はずれ、遂行が不可能な質・量の業務命令、業務をさせない、させたとしてもそれまでのキャリアから見て明らかに程度の低い業務を命じられる、私的なことに過度に立ち入ることーーなどが挙げられます。また、今回のケースのような、上司や先輩による部下や後輩に対する叱責もパワハラになりえます」
叱責があれば全てパワハラになるのか。
「それが全てパワハラになるわけではありません。実際にパワハラになるかは、叱責の内容、その発言があった経緯や、時、場所によっても、変わってきます。例えば、あまりにも無責任な行動をする部下に対する上司の叱責は、人格を否定する執拗なものでなければ、業務の適性な範囲内とされてパワハラとはされないことが多いでしょう」
今回のケースはどうか。
「今回のケースでは、後輩に対する悪意や自分の気晴らし目的ではなく、後輩の為を思い、後輩に期待して叱咤したといえれば、人格を否定する発言内容とまではいえないことからも、パワハラとはされない可能性が高いです。
とはいえ、必ずしもパワハラに当たらない場合でも、発言内容により、相手を嫌な気持ちにさせて仕事への士気が下がり、職場の雰囲気が悪くなることもあります。常に、時、場所を考えて、相手の立場に立った言動を心がけるべきだと思います。
また、信頼関係がある場合とない場合で、同じこと言われても、受け止め方は全然ちがってきます。そのため、日頃からよくコミュニケーションをとって信頼関係を築く努力をすることも大切だと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
高木 由美子(たかぎ・ゆみこ)弁護士
高木 由美子(たかぎ・ゆみこ)弁護士
第一東京弁護士会所属。米国・カリフォルニア州弁護士
事務所名:さつき法律事務所
事務所URL:http://www.satsukilaw.com/