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sébuhirokoとTHE NOVEMBERSの音楽に共通する点は? 狂気と美しさで魅せた2マンライブ

2017年09月23日 10:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 sébuhirokoが8月30日にLIVE HOUSE FEVERにて開催した『Her Majesty’s Secret Night : Part Ⅱ』。sébuhirokoが「本当にかっこいいと思うアーティスト」をゲストに迎えて行っている自主企画の第2回目である。前回、記念すべき第1回のゲストには向井秀徳アコースティック&エレクトリックを迎え、sébuhiroko、向井秀徳ともに、言葉や音楽から情景を浮かび上がらせるストーリーテラーのようなライブパフォーマンスで観客を魅了した。


(関連:sébuhirokoと向井秀徳アコースティック&エレクトリック、“ストーリーテラー”としての表現力


 そして今回のゲストは、THE NOVEMBERS。ステージに登場すると、ケンゴマツモト(Gt)が鳴らすアラートのようなノイズ、高松浩史(Ba)の轟くベース音、吉木諒祐(Dr)の身体の芯を揺らすドラムが会場全体を覆い、小林祐介(Vo/Gt)の叫びのようなボーカルで歌われる「dogma」からライブがスタート。耽美的かつパンクなサウンドによる「1000年」や激しいセッションが繰り広げられたカバー曲「lovebirds」など、ライブ空間を音の渦で包みこむ。その一方で、つまびくギターの弦の音からはじまった「愛はなけなし」や「ただ遠くへ」などに見られる小林の艶のある歌声は、激しさの中にロマンティックなエッセンスを加える。そして、小林は「世武さんは尊敬している音楽家なので、今日一緒にできることを楽しみにしてきました」と告げ、「最近あなたの暮らしはどう」を穏やかに歌いあげた。


 後半は鋭利なドラムとベースのビートからはじまった「dysphoria」、妖しげなリフに大きな歓声が湧いた「Blood Music.1985」を披露。まっすぐ前を睨みつけながら歌う小林の気迫あふれるボーカルや髪を振り乱しながら楽器を演奏するマツモト、高松、吉木の姿は視覚的にも観客の興奮を煽る。そのままの勢いで「こわれる」「黒い虹」をプレイすると、「今の自分たちの一番きれいな曲を世武さんと一緒にやりたいと思います」とステージへsébuhirokoを呼び込み、「Hallelujah」をコラボレーション。sébuhirokoのピアノの調べとコーラスが入ることにより、楽曲の繊細さが一層際立つ。幸せの光が差し込むような美しい余韻を残し、THE NOVEMBERSのステージを終えた。


 sébuhirokoは、“メタ地獄”と呼ばれるおなじみのバンドメンバーたちとステージに登場。村田シゲ(Ba/Syn/□□□)、常田大希(Gt/PERIMETRON/King Gnu)、BOBO(Dr)といった最強の布陣と共に音を鳴らした。「Lara」「Aplil 11」「Too Far」では電子音のビートに乗せてsébuhirokoのイノセントな歌声が響く。今回のライブで特徴的だったのは、「Jakie Onassis」「John Doe」「Lost Highway」の3曲でステージ後方にVJ :Peter John Bettyの映像を映し出していたこと。sébuhirokoと言えば、世武裕子名義で映画やドラマ・CMのサウンドを手がけている映画音楽作曲家としての一面を持つ。音と映像が交わり合うことで、sébuhirokoが表現する世界のさらなる広がりを体感することができた。続く「Night walk」は、前回の自主企画でsébuhirokoがアンコールで一人ギターを鳴らし歌ったCrypt Cityとの共作曲。THE NOVEMBERS・小林祐介を迎えたこの曲では、小林の放つ熱量に感化されるようにsébuhirokoとメタ地獄のメンバーたちのボルテージがみるみる上がっていく様が見て取れた。


 sébuhirokoとTHE NOVEMBERSの音楽には共通した激しさがある。しかし、それは乱暴なものではなく、「Mein Land」のような楽曲に見られる狂気と美しさが表裏一体となった激しさだ。また、声が一つの楽器のように作用する「Homme Anodin」の音の海に沈んでいくような感覚も、THE NOVEMBERSの音楽に通じる部分があった。


 そして、ステージのラストを飾った「Triple Play」ではsébuhirokoが即興的な凄まじいキーボードテクニックを披露、プレイヤーとしての腕を光らせる。楽曲、歌、演奏……sébuhirokoの持つアーティスト性を余すことなく発揮したステージングで本編を終え、アンコールは一人シーケンサーを操って奏でるダンスミュージック「Wonderland」で幕を下ろした。


 sébuhirokoは今後、9月25日代官山晴れたら空に豆まいてでは波多野裕文(People In The Box)、11月10日新代田FEVERでは阿部芙蓉美との2マンライブを開催するなど、ソロでの公演が続く。しかし、2回の自主企画を通してわかったように、それぞれ違った楽しみ方ができる公演になることは間違いないだろう。(久蔵千恵)