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「石浦包囲網」と「負けられない」プライドが交錯するスーパーフォーミュラSUGO戦

2017年09月22日 18:42  AUTOSPORT web

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チームメイトのガスリーが多くの脚光を浴びるなか、ホンダのエース、日本のトップドライバーのひとりとして意地を見せたい山本尚貴
スーパーフォーミュラ第6戦SUGOは、今シーズンの濃度の高いレースをさらに凝縮したように見どころが多い。残り2戦となって、まずはチャンピオンシップのゆくえに目が移るが、見逃してはいけない戦いがこのSUGO戦には詰まっている。

 前回の第5戦オートポリスのスタートで出遅れ、その後に接触してリタイア。0ポイントでレースを終えてランキング2位から4位に後退してしまったアンドレ・ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM’S)。

「もちろん、前戦の結果にはがっかりしているよ。クラッチにトラブルがあってスタートで動けなかった。獲れるはずのポイントを失ってしまって、チャンピオンシップも本当に残念な結果になってしまった」と、オートポリス戦を振り返る。

 チームによるとクラッチはトラブルというよりも、スタート前のフォーメンションラップ時のスタートでロッテラーがクラッチをかなり使ってしまい、レーススタートではミートポイントがズレてしまったことが原因だったとのこと。ロッテラーの自業自得とも言えるが、今シーズン、ロッテラーは5戦連続入賞でポイントを重ねてきたが、その連続記録も途切れてしまった。

 そのオートポリスでの悔しさを晴らすように、第6戦SUGOの金曜日走行からロッテラーはトップタイムをマーク。

「SUGOは僕たちのチームにとって相性のいいサーキット。とにかく、今回も勝つことだけを考えているよ」と語るロッテラー。金曜日の走行は使用しているタイヤが各車異なり、一概に順位は比較できないが、ロッテラーとトムスが好調なのは誰の目にも明らか。昨年のこのSUGOラウンドの内容からもトムスに加え、金曜日の走行で2番手、4番手となったITOCHU ENEX TEAM IMPULが今年のSUGO戦の主役となることは間違いなさそうだ。

 一方、ランキングトップで迎える石浦宏明(P.MU/CERUMO·INGING)にとっては、このSUGO戦がタイトル獲得に向けての最初の鬼門となる。去年のSUGO戦では石浦は予選10番手、決勝16位、チームメイトの国本雄資も決勝15位でチーム全体で低迷。しかも、その原因がわからず、苦手意識だけが残っていた。

 それでも、「去年のようなことはないと思います」と、金曜日走行を5番手で終えた石浦。

「今回は今までとまったく違ったセットアップで、このSUGO対策をしてくれてフィーリングは良くなっていますし、きっと早いクルマに仕上げられると思います。今回もトムスは速そうですが、インパルとは同じくらいの位置にいるのかなと思っています」

「ただ、金曜日の走行を見ても上位7台くらいは誰がトップになってもおかしくないタイム差ですし、SUGOはいつも僅差の戦いになるので予選の最後の最後は自分がビシッとアタックを決められるか。あとは予選が混雑するので、Q1をしっかり通って、Q2、Q3は自分のミスなくアタックを決めたいと思います」と石浦はこのSUGOの抱負を語った。

 現在、ランキングトップの石浦は5ポイント2番手に差を付けやや抜けている状態。ランキング2位以下のピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)、フェリックス・ローゼンクビスト(SUNOCO TEAM LEMANS)、ロッテラーは当然、石浦包囲網とも言える、石浦より上位でのフィニッシュを最低目標に挑んでくる。その面々と石浦との戦いは、このSUGO戦の最大の見どころとなる。

 今年のスーパーフォーミュラも残り2戦。どうしてもチャンピオン争いに目が移ってしまうが、このSUGOに並々ならぬ決意で臨むドライバーがいる。TEAM MUGENの山本尚貴だ。

 同じTEAM MUGENでチームメイトのガスリーはこの2戦で2勝を挙げた一方、山本は0ポイント。もてぎ、オートポリスの2戦でのソフトタイヤ投入が山本にとっては悪い流れになってしまい、予選での赤旗のタイミングなどさまざまな不運にも巻き込まれてしまった。

「全然、うまく行かない展開が続いていますが、チームメイトが結果を出していますし、レースはリザルトがすべてなので言い訳はしません。僕の流れが悪いというよりも、彼がいい流れを引き寄せている。ドライバーの力の差になっているのかなと思います」と、敗北宣言とも採れる言葉を残す山本。

「ピエールはGP2などで2スペックタイヤの経験が豊富とはいえ、慣れない異国の日本に来て初年度から結果を出している。これはもう彼の実力ですし、隣で見ていて努力をしないで結果を得ているわけではないので、素直に認めざるを得ません」

 レッドブルの秘蔵っ子のひとりであり、来季のF1昇格の可能性が高いガスリーを相手に、現状を見つめる山本。だが、このまま負けたまま終わるわけにはいかない。

「今の現状に真摯に向き合って、まずは彼の前に立つことが最低限の目標。なんとしてでも、今回のSUGOでいい結果を残したい」

 静かな口調ながら、レーシングドライバーとしての意地をみせる山本。TEAM MUGENのふたりがSUGOでどんな戦いを見せるのか、このふたりの戦いはスーパーフォーミュラというカテゴリーに限らず、どうしても欧州トップvs日本トップという構図を投影してしまう。

 チャンピオン争いだけでなく、そして山本だけでなく、自分のプライドを懸けて、そして来季のシートを懸けて残り2戦に全精力を注ぐ19人のドライバーたち。例年になく劇的な展開が続いている今シーズンのスーパーフォーミュラで、今回のSUGOもアツイ戦いが展開されることになりそうだ。