世界三大レースのひとつである『ル・マン24時間』をシリーズの1戦に組み込むWEC世界耐久選手権。静岡県・富士スピードウェイでは今年もシリーズ第7戦富士6時間レースが10月13~15日に開催されるが、そもそもWECとはどのようなシリーズなのか、WEC富士の前におさらいしておこう。今回はWECに参戦するドライバー、チームオーナーにフォーカスを当てる。
1台あたり2~3名のラインアップで構成されるWECは、総勢70名近いドライバーが参戦。各ドライバーは過去のレース実績や年齢など、FIA国際自動車連盟が定める評価基準によってプラチナ(F1に参戦に必要なスーパーライセンスを所持、メーカーワークスドライバーなど)、ゴールド(国内フォーミュラ、GTカテゴリーでランキング上位入賞など)、シルバー、ブロンズという4つのランクに分けられている。
このうちプラチナ、ゴールドドライバーは“プロ”とみなされ、LMP2クラス、LM-GTEアマクラスへの出場が制限される。一方でシルバー、ブロンズドライバーは安全上の観点から最高峰のLMP1クラスに参戦することができない。
そんなLMP1クラスには中嶋一貴、小林可夢偉というふたりの日本人元F1ドライバーがTOYOTA GAZOO Racingから参戦。同じく元F1ドライバーのセバスチャン・ブエミ、アンソニー・デビッドソン、WTCC世界ツーリングカー選手権王者のホセ-マリア・ロペスらとマシンをシェアしている。
また、スーパーGT500クラス、スーパーフォーミュラの両カテゴリーでチャンピオンを獲得するなど、日本でお馴染みのアンドレ・ロッテラーは今シーズン、昨年限りで撤退したアウディからポルシェに移籍して参戦中だ。
日本人ドライバーでは一貴と可夢偉のほか、スーパーGT300クラスの優勝経験もある澤圭太が2017年シーズンよりLM-GTEアマクラスにフル参戦を開始。第6戦までに優勝1回、3度の表彰台獲得と参戦初年度から好成績を残している。
今シーズンのWECにおいて、もっとも注目集めるドライバーライアップを擁するのはLMP2クラスのヴァイヨン・レベリオンだろう。
13号車と31号車の2台体制で参戦する同チームは“セナ、プロスト、ピケ”という1980年代のF1ファンにはたまらないビッグネームを揃え、ブルーノ・セナとニコラス・プロストが31号車オレカ、ネルソン・ピケJr.が13号車オレカをドライブする。
WECにはこのほかにも元F1ドライバーのジャン-エリック・ベルニュ、ビタリー・ペトロフ、ペドロ・ラミー、今季のル・マンで3台目のトヨタTS050ハイブリッドをドライブしたニコラス・ラピエール、元アウディ・ワークスドライバーのオリバー・ジャービスなど、多数の有力ドライバーが参戦。
またスーパーGT500クラスで活躍し、日本でも人気のあるフレデリック・マコウィッキや、フォーミュラEのトップドライバーのひとりであるサム・バードなどが参戦するLM-GTEプロクラスでは、各メーカーのワークスドライバーがしのぎを削る。
そして、多くの注目ドライバーが出場するなかで忘れてはならないのは、チームオーナーを務めるふたりの世界的映画俳優の存在だ。
LMP2クラスに2台体制で参戦するジャッキー・チェンDCレーシングはその名の通り、アクション映画でお馴染みのジャッキー・チェンが共同オーナーを務めるチーム。
シーズン開幕前から話題を集めていた同チームは、ル・マン24時間で総合優勝まであと一歩に迫る総合2位、3位(LMP2クラスワン・ツー)となったことで注目度がさらに上昇した。
また、LM-GTEアマクラスには、ハリウッド映画俳優のパトリック・デンプシーの名を冠するデンプシー-プロトン・レーシングが参戦。
今シーズン、すでに2勝をマークしている同チームは2015年、デンプシー自らがドライバーとして参戦し、同年のWEC富士ではキャリア初優勝を達成した。現在は本業の俳優業に専念しているデンプシーだが、ふたたびドライバーとしてサーキットに戻ってくることを願うファンも多い。