トップへ

「乗るべしスーパーカー」発売記念連載09『ポルシェ・911 GT3RS』

2017年09月22日 12:12  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

写真
9月5日に発売となった「乗るべしスーパーカー」の発刊を記念して、この本の主役である気鋭のフォトグラファー・悠佑氏が切り取った珠玉の写真たちと、オーナーとスーパーカーのライフストーリーをご紹介。最終回は「ポルシェ・911 GT3RS」だ。

●Car Details Porsche 911 GT3RS
Text:Fumiaki HARA

 ポルシェ911には、どの世代にもサーキットのノウハウが注がれる高性能グレードが用意されているが、その中でも別格のグレードとして君臨するのが、“RS(レンシュポルト)”の名を冠するモデルだ。2015年に発売された991 GT3RSは、歴代のRSモデルと同様に911の限界に迫るチューニングが施される。

たとえば伝統の水平対向エンジンは、3.8リッターから4リッターに排気量が拡大され、さらに制御系も専用プログラムに変更。高回転特性が強化されたことでGT3と比べ25PSほど出力が向上し、500PSまでパワーアップされている。ボディもマグネシウムルーフに加えて、エアロパーツもカーボン素材が多用された専用アイテムを装着。空力性の向上に加えて、軽量化も抜かりがない。

●Owner's Story 昔から語り継がれてきたポルシェ評。それを実体験させてくれる性能と感触
A氏/Text:Akira YOKOTA

 ポルシェ911が伝統の空冷エンジンから水冷エンジンにスイッチしたころ、スポーツカーではなくなった、という声がファンから上がったことがある。ピックアップの鋭い空冷エンジンとRRの組み合わせによる、限界付近でのナーバスな挙動が押さえ込まれ、水冷化で音も静かになったことが、「乗用車的になった」と評されたのだ。

 しかし、FRの928に始まり、911シリーズも964、993、997と歴代を乗り継いで、今も最新のGT3RSに乗る筋金入りのポルシェ乗りであるA氏は、そんな声を一蹴する。「たしかにモデルチェンジのたびに乗りやすくなっているけど、それは着実に進化したということ。昔から言われているとおり、ポルシェはやっぱり最新が最高なんですよ」と。

 その言葉を自身で証明するように、今所有しているRSは、その前の“フツーの”GT3からの乗り換えだという。「私はポルシェに限らず、つねに最高のモノを持っていたい。だからRSが出たところで、迷わず乗り換えたんです」

 もっとも、最高のポルシェという賛辞がどんなシーンにでも当てはまるとは、A氏も思わないという。

「RSでも、ただ走らせるだけなら誰にでもできるけど、車高が低いから駐車場のちょっとしたスロープでもバンパー下を擦っちゃうし、足も硬いから路面のギャップをいちいち拾って乗り心地も悪い。ウチの奥さんは乗ってくれません」と笑う。だから、じつはふだんの足として、ベーシックな911カレラも発注済みという。実用車としては、たしかにそれが最高に違いない。

「だけどサーキットを走らせれば、やっぱりRSが最高ですね。走る、曲がる、止まるのすべてに信頼がおける。たとえ300㎞/hで走っていても、何か起きるんじゃないか、という不安は皆無。そういうところは、機能をとことん追求したドイツ車ならではの美点だと思うんです」

 最高のサーキットスポーツと、最高の実用車を同じ素材から作り分けられる実力。それこそがポルシェの凄さであることを、彼は肌で知っているのだろう。