2017年09月22日 10:33 弁護士ドットコム
公園や浜辺で酒を飲み、大騒ぎする酔っ払いたちを、怖く思ったり、迷惑に思ったりしたことがある人は多いだろう。自治体の中には、酔っ払いに対して具体的な取り組みを開始しているところもある。
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神戸新聞の報道によると、神戸にある須磨海水浴場では、神戸市の意向により、今年から海の家でのウォッカ・テキーラの販売を禁止している。しかし、7月13日の海開きから8月22日までの泥酔者に対する救急出動は18件に上った。死亡者は出ていないものの、増加傾向にあるという。搬送された泥酔者の中には、自分でウォッカ・テキーラを持ち込んでいた人もいたそうだ。
法律ではこれらの「酔っ払い」はどのように扱われているのだろうか。
警察官職務執行法には「精神錯乱又は泥酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼすおそれのある者」に該当し、応急の救護を要する場合、保護しなければならないとの規定がある(第3条1項)。
また、「酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」でも、「アルコールの影響により正常な行為ができないおそれのある状態にある者」と定義があり、同じく保護しなければならないと規定がある。
なお、酒に酔った状態で警察官に傷害を負わせれば公務執行妨害、一般人に傷害を負わせた場合は刑法上の傷害罪に問われる可能性がある。飲酒問題には、様々な法律が関わってくるようだ。
飲酒についての法律はないのだろうか。飲酒問題に詳しい中原 潤一弁護士に聞いた。
「アメリカのほとんどの州では公園や浜辺などの野外や公の場所での飲酒は法律で『禁止』されています。しかし、日本では、酩酊者や泥酔者を警察が保護するという規定があるだけで、野外や公の場所での飲酒は法律上禁止されていません。ですので、ハワイなどを旅行する際には、飲酒に関する日本とアメリカの法律の違いを理解しておかないといけません」
日本では飲酒に関して、なんらかの罪に問われることはあるのだろうか。
「ただ、グループで飲んでいて泥酔者が出た場合、その人を放置して帰ると保護責任者遺棄罪に問われる可能性があります。また、その人が亡くなってしまえば保護責任者遺棄致死罪に問われる可能性もあるのではないかと思います。『高度の酩酊者』が刑法218条にいう『病者』に該当するという判例があります(最決昭和43年11月7日)」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
中原 潤一(なかはら・じゅんいち)弁護士
埼玉弁護士会所属。日弁連刑事弁護センター幹事。刑事事件・少年事件を数多く手がけており、身体拘束からの早期釈放や裁判員裁判・公判弁護活動などを得意としている。
事務所名:弁護士法人ルミナス法律事務所
事務所URL:http://luminous-law.com/