ERCヨーロッパ・ラリー選手権の第7戦『ラリー・デ・ローマ・キャピタル』が9月15~17日に初開催され、フランス人ターマック・マイスター、ブライアン・ブフィエ(フォード・フィエスタR5)が、2連覇中の王者カエタン・カエタノビッチとのデュエルを0.3秒差で制し、イベント初代ウイナーになると同時に、今季初の2勝目を挙げたドライバーとなった。
イタリアの首都ローマ市街のコロッセオに設定された金曜夜のスーパースペシャルから幕を開けた初開催の首都ローマ戦は、明けた土曜の本格的デイ1からアレクセイ・ルキヤナク(フォード・フィエスタR5)がスパート。
まだ多重骨折の療養中で完治には程遠い状態ながら、キャンセルとなったSS3を除いてSS2、SS4、SS5で連続トップタイムをマーク。2番手ブフィエに8.4秒のリードを築いて、最終ナイトステージ26.44kmのSS6をスタートしていく。
しかし、ここで身体的な理由以外で、ルキヤナクのラリーは終了を迎えることになってしまう。
「SS6をスタートしてすぐ、マシンのヘッドライトが突然消えたんだ。夕闇の中でその状態では視界が30~40m程度しかなく、ペースノートを聞き取ることに全力で集中したよ」とルキヤナク。
「最初は悪くなかった。ペースは落ちていたけど、タイムロスはそれほど大きくない。そう思って走り続けていたんだけど、コ・ドライバーの読み上げが一瞬遅れた地点があって距離が足りなくなり減速が充分できなかった。それで左サイドをウォールにヒットし、フロントタイヤがなくなってしまったんだ……」
これでラリーリーダーはブフィエに変わり、2番手にカエタノヴィッチが続いてラリーは夜を越すこととなった。
明けたデイ2も、全6SS、106.16kmのラリーはドラマティックな展開を見せる。朝1番に設定された32.70kmの今ラリー最長SSで飛び出したカエタノヴィッチは、続くSS8、SS9とスパートし3連続でベストタイムをマーク。彼のフィエスタには若干のブレーキトラブルが出ていたにもかかわらず、これで前日には7秒以上あったブフィエとのタイム差を逆転してラリーリーダーの座を手にする。
一方のブフィエは、選択したソフトコンパウンドがドライのステージにマッチせず、時折現れる水たまりやマッドな路面にも苦戦しながら、なんとかカエタノヴィッチのタイムに喰らい付くと、SS10ではベストタイムを叩き出し0.4秒逆転し首位奪還。しかし最終目前のSS11は再びカエタノヴィッチが0.9秒上回り、0.5秒の僅差で再び首位に立つなど、緊迫したシーソーゲームが続いた。
そして迎えた最終SS12。11.75kmのステージで最速を競い合った2台は、ブフィエがカエタノヴィッチを0.8秒上回るベストでフィニッシュし、総合でわずか0.3秒差という逆転劇で勝利。見事、この2017年シーズンで最初の2勝目を挙げたドライバーとなった。
「こんな地獄のようにハードな勝負に勝てたことは本当にうれしいよ」と喜びを語るブフィエに、次戦ラリー・リエパヤで3年連続王座獲得のシナリオが見えてきたカエタノヴィッチは、勝者を祝福する言葉を贈った。
「みなにとって初めてのイベントで、こうして優勝争いを展開できてうれしい。マシンは完璧な仕上がりだったし、ブライアン(・ブフィエ)との勝負は楽しかった。彼は今日、本当に素晴らしいドライビングを見せたし、おめでとうを言いたい」
久々の表彰台となる3位に入ったポルトガルのスター、ブルーノ・マガラエス(シュコダ・ファビアR5)は、このポディウムでなんとかタイトル争いに踏みとどまり、最大36ポイントの獲得が可能な残る有効1戦で、現状24ポイント差を逆転することに望みをかける。
ERCの次戦、10月6~8日開催の最終戦ラリー・リエパヤは、これまでの初春開催から秋にスケジュールが移動。ラトビアのバルト海沿岸部を中心としたステージは、これまでと異なりまったく雪や氷と無縁のステージが待ち受ける。