F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。
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☆ セバスチャン・ベッテル
タイトルを争う彼は2度ぶつかった。まず土曜予選、19コーナーで壁に当たりながらも(ぎりぎりセーフ)、気迫の予選アタックでPPを。一夜明けたスタートではマックス・フェルスタッペンに過剰なブロック反応(タッチ・アウト)、キミ・ライコネンともどもあっけない“ゼロ・レース”。
プレッシャーがかかると強気になるレーサー魂を見る思いがした。28点ビハインドは数字上苦しくとも今のフェラーリの総合戦力はメルセデスに大きく劣ってはいない。「くいさがれ、セブ」――。
☆ バルテリ・ボッタス
初日からカーバランスに苦しんでいた。フロントタイヤをハミルトンほどこじらない → 発熱度が低めに→リヤタイヤとの“温度差”が増す→ハンドリングに影響。こんな連鎖反応が想像できる。それでも雨上がりのレース後半はそれを修正、ノー・ドリンク状態で3位入賞、表彰台でたまらず冷えたシャンパンをガブ飲み。
☆☆ キミ・ライコネン
ぶっつけ本番となったウエット・スタート、キミが会心のダッシュ。まっすぐに加速、ホイールスピンしてぶれるような動きは全くなかった。結果的にこのダッシュが災いに転じてしまったが、目覚ましいスタート・プレーがどこかで奏功するのを期待しよう。
☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ
マクラーレン勢の願望を砕く予選7位、ルノーのセクタースピードは彼らより伸びていなかった。優っていたのはセクター3(4位相当)だ。昨年スタート直後に接触事故、今年は混乱を回避し一気に3番手へ。129戦目で遂にお立ち台かと思わせたがPUに不具合発生、またも“レース運”、尽きる。
☆☆☆ ジョリオン・パーマー
カルロス・サインツJr.来季移籍加入が正式発表されいわば宙に浮いた状態。どこかに着地できるか否かの正念場にトップ6ゴールを決めた(最速ラップ5位相当)。ルノー・チーム7位にランクアップ、彼自身の“F1就活”にもプラスとなるか。
☆☆☆ ランス・ストロール
『雨のストロール』と言ったら誉めすぎか。ウエットが不得意な傾向のウイリアムズでモンツァ予選に続き、ここでも濡れ乾きレースで健闘、ベテランのマッサに先行。
ドライよりアベレージ・スピードが下がり、コーナーでのGフォースも軽減されるウエット、新人は教わるのではなく自習して何かをつかんだのだろう。18位→8位、開幕3連続リタイア後は11戦完走中で5度目の入賞である。
☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
あの事故ではっきり分かった。フェラーリ勢二人とも“深層心理”でフェルスタッペンを意識しすぎている。彼の動きばかりを警戒、周囲への注意がおろそかに……。チャンピオンをそうさせてしまうまだ二十歳前のマックス、月並みな言葉だが『大物』だ。土曜FP3からQ2までトップ・キープ、コース幅を広く大きく使いきる“MAXライン・ワーク”に見とれた。
☆☆☆☆ ストフェル・バンドーン
初めてとは思えないくらい初日からスムーズなテンポ、シミュレーターで徹底学習してきたのだろう。ここでフェルナンド・アロンソに0.219秒差の予選9位は立派、決勝ではピットワークにロスがありトップ6を逃したが内容的に今季ベストレース。
☆☆☆☆ ハミルトン
昨年からの10勝はいずれもPPスタートからだった。5位グリッドに沈み苦戦覚悟でいた彼に“恵みのシャワー”が。気付いたのは巧みなスタートだ。濡れた路面を2速ギヤで発進、するすると加速。カオスと化した事故現場を抜け、目前でスピンするベッテルを回避。それからはギャップ・コントロールしつつ今季7度目の最速ラップ、獲得率は50%に達する(!)。
☆☆☆☆ ダニエル・リカルド
金曜FP2での1分40秒802ラップは完璧、2位フェルスタッペンをセクター3で0.280秒も上回ってみせた(予選もセクター3最速)。3位グリッドでも“勝機”は見えていたのだろう。
だが先頭に立ったハミルトンを追うレース展開で最後まで仕掛けられず、後になってギア関連に問題があったと知った。無念の気持ちを隠して笑顔の表彰台、ここには母国からやってくるサポーターが多いから。
☆☆☆☆☆ カルロス・サインツJr.
バルセロナの次に波長が合うコースなのだろう。15年は9位入賞、16年には予選6位に進出。いつも以上に縁石をまたぐような走法で挑み、それだけ壁際に近くなっても自信あり気に踏み込む。
ボッタス、ヒュルケンベルグ、セルジオ・ペレスらとの接近レース、彼だけスーパーソフトで31周のディフェンスは厳しかったに違いない。トロロッソと彼自身の『18年プラン』が決まった週末にこの4位は大きな意味を持つ。レース後の祝宴には先輩アロンソもやってきたであろう……。