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「乗るべしスーパーカー」発売記念連載08『ランボルギーニ・アヴェンタドールSV』

2017年09月20日 12:22  AUTOSPORT web

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9月5日に発売となった「乗るべしスーパーカー」の発刊を記念して、この本の主役である気鋭のフォトグラファー・悠佑氏が切り取った珠玉の写真たちと、オーナーとスーパーカーのライフストーリーをご紹介。第8回は「ランボルギーニ・アヴェンタドールSV」だ。

●Car Details Lamborghini AVENTADOR SV
Text:Fumiaki HARA

 メカニズム面において前時代の構造を継承していたムルシエラゴとは異なり、アヴェンタドールはCFRP&アルミの複合構造のボディシャシーや新設計のV12エンジンなどが採用され、21世紀にふさわしい最先端のスーパーカーに進化した。これまでに多くのシリーズラインアップを誇るが、その中でも多くの注目を集めているのが、2015年に発売された伝統のSV(スーパー・ヴェローチェ)だ。

アヴェンタドールSVは、前後バンパーにカーボンパーツを多用するなどで50㎏程度の軽量化を実現。車両重量は1525㎏までシェイプアップされた。また自然吸気のV12エンジンも制御系の変更で最高出力を50PS増しとし、750PSまで高めている。他にも可変ダンピング式のアダプティブダンパーの採用など、ベースグレードとは明らかに異なる速さを披露してくれる。

●Owner's Story 注目の的だったお父さんのエスパーダ。その父から息子たちに向けたメッセージ
A氏/Text:Shinnosuke OHTA

 技術系企業でエンジニアとして仕事をしていたA氏のお父様が、家族とともに出かける愛車に選んだのは、ランボルギーニ・エスパーダ。カウンタックと同じV12を搭載する4座の巨大なスーパーカーは、当時のブームにあっても異例なほど人目を引いた。

 週末にはピンポンピンポンと自宅の呼び鈴が鳴り、近所の子供たちが「写真を撮らせてください」と押しかけ、お母様が優しく対応する光景が日常だった。また、東名高速を箱根まで走れば、通過する陸橋陸橋にカメラを構えた少年たちの放列が見えた。

「注目を浴びてるのは俺じゃないけど、なんか気持ち良い。あれ? 見られてる、気持ち良い(笑)」


 子供ながらに「音もカッコいいし、スーパーカーってすごいな、ランボルギーニすごいなって」刷り込まれて育ったこともあり、その存在は不動のものとなっていく。そして2004年に手にしたのは、日本1号車となるeギヤのムルシエラゴ。この個体は、懐かしい記憶の中にあるエスパーダと同様に、とにかく壊れた。

「エスパーダは箱根に行くまでにいつも止まってた。だから帰りは毎回、代車のクラウン。俺が買えるころにはムルシエラゴになってたけど、本当は形はディアブロが好き。カウンタックよりもディアブロっていうぐらい。ムルシは新車で買ったけど、最初から壊れてる。親父のエスパーダがあんだけ壊れたから、まあこんなもんだろうと。でも言ったんだよ。『こんなに壊れるの? 新車でしょ?』って。そしたらディーラーの営業担当が『え? ランボルギーニですよ?』って真剣に言うのよ。だから『ああ、そうだよな!』みたいな(笑)」

 当時のエスパーダもエンブレムは3回ほど盗まれ「牛さんが脱走した」と騒動になったが、ムルシエラゴのエンブレムも「走行中にどっか飛んでいって」同じように脱走した。

 お父様が丸目のエスパーダを角目のヘッドライトに換装していたように、ムルシエラゴもアーキュレーのマフラーを入れ、アブフラックでカーボンフルエアロ、エンドレスでブレーキローター&キャリパーをワンオフで製作し装着。オートサロンにも2度出展するほど、カスタマイズにこだわってきた。

 そんな折、エスパーダ以来ランボルギーニを所有せず、ジャガーEタイプなど他銘柄のスポーツカーを乗り継いできたお父様が、オーナーA氏と弟さんに向け「お前らも乗れ」と言って、アヴェンタドールSVを買ってきた。もともとゴールドだったエスパーダをブルーメタリックにオールペンしていたのにちなんで、ボディカラーは鮮やかなフレークの入ったブルーだった。

「闘病生活のときから『最後はランボルギーニに乗りたい』と言っていて、ある日『お前らも乗れ』と。カッコイイでしょ? 俺はランボルギーニに乗ってるけど、弟は乗ってないから、それで乗せてやりたいっていうのもあったんじゃないかな。運転席に座らせたらさ、『よし、行くぞ』って言うから、みんなで『いや、いけない、いけない』って(笑)。で、隣に母親も乗せて写真撮ってさ」

 今は実家で静かに時を過ごしているというそのアヴェンタドールSVは、機会あるごとに弟さんが小学生の息子さんを乗せてドライブに繰り出し、次の世代の物語を紡いでいる。あの日見た、エスパーダのように。