2017年09月19日 18:33 弁護士ドットコム
アイドルグループ「BiS」のメンバー、プー・ルイさんの活動休止が9月16日、公式サイトで発表された。プー・ルイさんは、今年3月から6月にかけて行われたダイエット企画で、体重51.5キロ・体脂肪率30.7%から、体重44.6キロ・体脂肪率21%と約7キロの減量に成功。しかし、3か月後の9月15日に測定したところ、体重が45キロ・体脂肪率20.5% だったことから、「体重をキープできなかった」として、わずか0.4キロオーバーで「活動休止」が決定された。BiSは10月6日に東京・赤坂BLITZでライブが予定されているが、当面の公演はプー・ルイさん以外の6人で実施、1か月後の測定で体重が戻るまでは復帰できないという。
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この企画はYouTubeで動画が公開されており、9月16日には「この豚から卒業できませんでした」という説明と共に、体重測定をするプー・ルイさんの様子が投稿された。その中で、落ち込むプー・ルイさんに対して、マネジメント会社社長の男性が「もっと減らせって言ってきた」「キープできないんだったら、辞めたほうがいいんじゃないの?BiSを」「 辞めなよ、もう。いいよ、辞めれば」「食わなきゃいいだけじゃん」と厳しい口調で話す場面もあった。
これに対し、ユーザーからは「いじめているようにしか見えない」「パワハラ」という批判のコメントと共に、プー・ルイさんには「拒食症にならないか心配」「アイドルだから痩せてないといけないはおかしい」という同情の声が多く寄せられている。身長153センチ(公称)というプー・ルイさんにとって、体重45キロは「痩せすぎ」という指摘もあり、「ちゃんと身長と筋肉量見直して無理のない目標体重設定してほしい」との意見もみられた。今回の問題をどう法的に考えればよいのか。芸能問題に詳しい河西邦剛弁護士に聞いた。
一般的にアイドルの契約には、「体重管理」まで含まれているのだろうか。
「芸能プロダクションとアイドルの契約は、専属マネジメント契約などといわれますが、契約書には『容姿・体重の維持』『髪型の維持』等が記載され、これらに違反した場合には契約解除や損害賠償責任が発生する規定も存在します。
しかし、専属マネジメント契約は、一般的に、アイドル側が圧倒的に不利な内容になっていますから、裁判所も、契約書に記載されていれば全て有効とは判断しておらず、アイドルに対して一方的に不利な規定は無効と判断される傾向にあります。なので、体重管理を怠ったとしてもアイドル側に法的責任が生じることはおよそ考えにくいでしょう。
今回のダイエット企画について、双方が『演出』であると納得をしていれば法的問題は生じにくいといえます。『リアリティ』があるからこそ、視聴者やファンの興味を引き付けるのも事実でしょうから、どこまでが演出かは視聴者による判断は難しいとも言えます」
双方が納得していたとしても、ファンはプー・ルイさんの状態を心配しているが……。
「もっとも、双方納得した『演出』だとしても、アイドルの身体、健康、精神が害された場合には、事務所に損害賠償責任が生じます。
専属マネジメント契約により、事務所がアイドルの健康を維持しなければならない安全配慮義務が生じ、具体的には今回の企画により、アイドルの身体や精神を害する危険があれば、企画自体を即中止、変更しなければならない法的義務が生じています。
企画の当事者であるアイドル自身は、年齢も若く、必死になって今回の企画を達成しようとするでしょうから、逆に事務所が冷静にアイドルの体調を把握して管理しなければなりません。今回の企画自体がアイドルの身体や精神に危険を及ぼす可能性がある以上、結果的にアイドルの健康に被害が生じた場合には、双方が演出と納得しても、事務所に責任がある、と裁判において判断される可能性が高いと言えます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
河西 邦剛(かさい・くにたか)弁護士
「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。アイドルファンで、今まで参加したコンサートは300公演以上。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/