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WEC、DTM、WTCC……。欧州発、スポーツカーとツーリングカーレースにまつわるウワサ

2017年09月18日 17:12  AUTOSPORT web

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WEC、DTM、WTCC……。欧州発、スポーツカーとツーリングカーレースにまつわるウワサ
ヨーロッパのモータースポーツや国際的なレースカテゴリーは、現在もポルシェのWEC世界耐久選手権撤退、メルセデスベンツのDTMドイツツーリングカー選手権撤退の余波に揉まれている。

 しかし、ここ数週間で少しずつだが状況が動きはじめた。事態を重く受け止めたシリーズオーガナイザーたちが、ゆっくりではあるが将来に向けた地固めを始めているのだ。

■WEC、2020年規定でのプジョー呼び戻しに自信?
 まず、WECに関してはこれまでクラスのなかでハイブリッド搭載車のLMP1-H、非ハイブリッド車のLMP1-Lが存在したが、これをひとつのカテゴリーに集約するという、同クラスを“破壊”すると表現してもいい、ドラスティックな決断が下された。オーガナイザーが“スーパーシリーズ”と称する2018年シーズンは5月4~5日のスパ6時間を開幕戦として、2019年6月のル・マン24時間を最終戦とする1年以上に渡るシリーズとなった。

 年間の開催数もニュルブルクリンク、オースティン(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ/COTA)とメキシコを削ることで縮小。

 その一方で、スパとル・マンについては2回開催となり、シルバーストン、富士スピードウェイ、上海国際サーキットについては1回の開催でカレンダー入り。またアメリカ・セブリングもひさしぶりのカレンダー復活を果たした。

 LMP1を“ひとつのカテゴリー”とする決断についてはドイツの主要メーカーが絡む大規模なカルテル疑惑や、議論が進まない2020年レギュレーションの影響も受けたようだ。

 当初導入が予定されていた2020年レギュレーションについて、ある自動車メーカーの関係者は「(2018/19年の)新規定はWECというシリーズを潰すには最適なものだ。誰も参加したがらない上、費用だけは馬鹿みたいに必要になるのだから」と皮肉をこめて語っていた。

 今回、そのレギュレーションは白紙に戻される形となったが、新たな2020年規定について、概要は明かされていない。

 アウディ、ポルシェが姿を消し、LMP1に唯一マニュファクチャラー参戦するトヨタに関しても、2018/19年シーズンは限定的な参戦プログラムを組むか、もしくは活動終了を発表する可能性すらある。

 パドックではスパとル・マン、お膝元である富士の3レースに活動を絞るか、あるいはSARDやトムス、TMG(トヨタ・モータースポーツGmbH)がプライベーターとしてル・マンに参戦するというのが、もっぱらの噂だ。

 しかし、WECメキシコで情勢が変わったとの噂も流れている。トヨタに対し、シリーズを主宰するACOが、WECの2018/19年シーズンにフル参戦しない場合、ル・マン24時間へのエントリーは認めないと通達したというのだ。

 おそらく、ACOはまだ誰も詳細を知らない2020年規定がプジョーを呼び戻すに充分な魅力を備えていると考えているのだろう。

 また、IMSAウェザーテック・スポーツカーチャンピオンを戦うDPi規定が採用されることもなさそうだ。ACOはマニュファクチャラーがしのぎを削るLMP1以外に興味はないらしい。

■WTCCはDTMとの合併望む? DTMはレクサス、ニッサンに期待か

 危機にさらされているのはWECだけではない。当初は合併の道を模索していたというDTM、そしてWTCC世界ツーリングカー選手権についても、先行きが不透明になってきたのだ。

 DTMは2018年限りでメルセデスを失い、現状では2019年からアウディとBMWによる一騎打ちの構図になる。WTCCについてはシトロエンとラーダが2016年限りでワークス参戦を終了しており、現状はボルボとホンダの争いになっている。

 シリーズに近い有力な情報源によれば、WTCCは2017年初め、2018年シーズンを開催せず、2019年にFIAが主導する“クラス1”を主体としてDTMと合体する道を模索していたという。

 しかしDTMを主宰するITR.e.Vのゲルハルト・ベルガー代表はWTCCと合併する可能性を否定し、日本のスーパーGTと関係を強化する方向へ動いている。

 これを裏付けるかのようにDTMニュルブルクリンク戦期間中の9月9日、シリーズに参戦するBMWのイェンス・マルカルトは「我々はいわゆる『クラス1』規定の導入をサポートし、DTMマシンにとって非常に効率的で、パワフルな4気筒ターボエンジンの導入と、空力性能を下げる準備を整えている」というコメントを発表している。

「これによってスタンダード化された世界的なレギュレーションへの扉を開き、たとえば日本のスーパーGT車両のような、同じ技術基盤のマシンとともに走ることを可能にする」

「このコンセプトがDTMの将来を確保し、国際的に開かれた魅力的なプラットフォームを提供するだろう。我々は他のマニュファクチャラーが、DTMに関心を示すのであれば、それを歓迎したい」

 この声明がスーパーGT500クラスに参戦するレクサス/トヨタ、ニッサンを意識したものであることは間違いなく、彼らをシリーズに呼び込みたいという意向も垣間見える。ただし、唯一ミッドシップを採用しているホンダについては、現時点で迎え入れるのは難しいようだ。

 DTM側の動きが、WTCCの将来にどう影響するかは定かではないが、先行きが不透明なことに変わりはない。DTMについては日本メーカーが参戦しなかった場合、アルファロメオやボルボが参戦を望んでいるという噂を現実のものにしなければ、WTCCと同じく、厳しい未来に直面することになる。

 この2シリーズと比べれば、LMP2とLM-GTEプロクラスが活気を帯びているWECは安泰と言える。ただしLMP1に関してはトヨタとプジョーが参戦しない限りプライベーターが争うカテゴリになってしまうのだが。

 彼らが直面している問題を解決するには何カ月も時間が必要となり、2018年初頭まで解決することはないと思われ、一連の騒動は長引くことになりそうだ。

筆者:サム・コリンズ
イギリスでモータースポーツファン、レース業界関係者に広く読まれている『レースカー・エンジニアリング』誌のテクニカル担当ライター兼副編集長。F1からハコ車まで幅広い知見をもち、独特のレーシングカーには目がない。スーパーGT300クラスのJAF-GTカーを見るためだけに日本に訪れることもしばしば。