9月17日現地時間20時、F1シンガポールGP決勝のスタートを迎えた。例年ならば昼過ぎに雨が降るこの季節のシンガポールだが、この日は午後4時頃にスコールに見舞われ、サポートレースもディレイするようなコンディションに。雨は1時間弱で上がり、その後も雨がパラつくことはあったものの決勝が始まるまでに路面はほぼ乾き上がった。
しかし各車がグリッドについたスタート15分前になって雨が降りだし、路面はウエットに。シンガポールGPとしては10年目で初めてのウエットレースであり、F1ではウエットセッション自体が初めてとなった。
気温は28度、路面温度は31度というコンディションで決勝のスタート。今季からのレギュレーションでウエットでもスタンディングスタートとなったが、上位勢は各車ともインターミディエイトを履いたのに対し、中団勢ではルノー勢、マクラーレン勢、フォース・インディア勢などがフルウエットタイヤでスタートに臨んだ。
セクター2~3が完全に濡れてフォーメーションラップで「視界が厳しい」と訴えるドライバーも多数いる中でスタートが切られた。
好加速を決めたキミ・ライコネンがイン側からマックス・フェルスタッペンの前に出ようとするが両者が接触し、右リヤを引っかけたライコネンは首位セバスチャン・ベッテルにクラッシュ。
マシンを壊してまっすぐ滑っていったライコネンのマシンはターン1でフェルスタッペンのマシンに再び激突し、混乱をぬってアウト側からジャンプアップを図っていたフェルナンド・アロンソもこの2台の接触の巻き添えとなって弾き飛ばされコースオフ。フロアに大きなダメージを負い、12番手まで順位を下げた。
ベッテルはターン3の立ち上がりで単独スピンを喫しウォールにクラッシュ。レースに復帰しようとしたがライコネンによるクラッシュでラジエターから冷却水を失っており、チームに指示されてマシンを止めることとなった。
これでセーフティカーが導入され、首位はルイス・ハミルトン、2番手ダニエル・リカルド、3番手ニコ・ヒュルケンベルグ、4番手セルジオ・ペレス、5番手バルテリ・ボッタス、6番手ジョリオン・パーマー、7番手ストフェル・バンドーン、8番手エステバン・オコン、9番手カルロス・サインツJr.、10番手ケビン・マグヌッセンという予選とは大きく異なるオーダーになった。
再開直後のターン1でウエットタイヤを履くパーマーがインターミディエイトのボッタスをパスして5番手に浮上。雨は上がったものの、この段階では路面コンディション的にはウエットタイヤの方に分がある。
6周目、インターミディエイトのサインツはターン1でコースオフしてしまう。12番手のアロンソは高速域での違和感を訴えてペースが上がらず、ウイリアムズ勢の突き上げを喰らってしまい、7周目のストレートで2台まとめてパスされてしまった。
さらにテレメトリーを失っており「全くペースがない」と訴えるアロンソに対してチームはTVで見守る以外どうすることもできず、アロンソはロマン・グロージャン、ザウバー勢にも抜かれて最下位まで後退。これでアロンソは「ノーパワー」と訴え8周でピットに戻りリタイアした。
11周目、10番手のマグヌッセンとバトルを展開していたダニール・クビアトがターン7で止まりきれずバリアにクラッシュ。これで再びセーフティカー導入となり、前後タイヤともタレを訴えていたリカルドはすかさずピットに飛び込んで新品のインターミディエイトに交換。
この間にヒュルケンベルグが2番手に上がり、リカルドはSC中の最小限のロスで済ませ3番手でコースに戻った。ウエットタイヤを履いていたフォース・インディア勢、マグヌッセンもピットインし、ルノー勢とマクラーレン勢は1周遅れてピットインし順位を下げ、オーダーは首位ハミルトン、2番手リカルド、3番手ボッタス、4番手サインツ、5番手ヒュルケンベルグ、6番手ペレス、7番手パーマー、8番手ストロール、9番手バンドーン、10番手マッサという順になった。
レースは15周目に再開となり、マッサとパスカル・ウェーレイン以外は全車がインターミディエイトで大きな混乱なく走行を続けて行く。メルセデスAMG勢はSC中にステイアウトしておりタイヤの走行距離は進んでいるが、ハミルトンはファステストラップを記録して2番手リカルドを引き離していく。後方ではハース勢がマッサを抜いて順位を上げていき、一旦はマグヌッセンに抜かれたオコンもこれについていく。
新品タイヤに換えたリカルドのペースを心配していたハミルトンだが、タイヤの性能を維持して自身がファステストラップを叩き出しリカルドをじわじわと引き離していく。3番手ボッタスは10秒以上遅れ、4番手サインツには5番手ヒュルケンベルグが迫る。20周目にはターン7でオーバーシュートしたストロールにバンドーンが追い付きターン9でインを突いて8番手に浮上した。
各チームがスリックタイヤへの交換を模索する中、24周目にマグヌッセンが先陣を切ってピットインしてウルトラソフトに交換。14番手のマッサもこれに続いた。彼らのタイムが上がっていくのを見て各車が続々とピットインしてウルトラソフトに換えていく。
ハミルトンとパーマーが最後に29周目にピットインし全車がタイヤ交換を終えた時点で順位は首位ハミルトン、2番手リカルドは8秒後方、3番手ボッタスは25秒後方。その直後に4番手ヒュルケンベルグ、その6秒後方ではサインツとペレスが5番手を争い、7番手にパーマー、そのピットアウト直後にターン13でインを突いたが逆転されたバンドーンは8番手に留まった。
ここからハミルトンは再びファステストラップを記録し続けリカルドをさらに引き離していく。34周目からは3番手ボッタスがファステストを刻み2番手リカルドとの差を縮めに掛かり、その後方ではサインツとペレスの5番手争いが白熱する一方で、7番手パーマーもペースを上げて6番手ペレスを追い上げに掛かる。
その矢先の37周目、エリクソンがターン12の出口でスピンしアンダーソンブリッジ内で左リヤをぶつけストップ。これでセーフティカー導入となり、ハミルトンが築き上げた10秒のギャップは水泡に帰してしまう。4番手ヒュルケンベルグはマシントラブルが発生したのか、このタイミングでピットイン。タイヤ交換後の作業に時間がかかりグロージャンの後ろ10番手へと大きく後退してしまう。その後方のオコン、マグヌッセン、マッサもここで新品のウルトラソフトに交換する。
42周目にレース再開となり、レース残り時間は26分。ハミルトンは再開直後に一気に後続を引き離しに掛かる。8番手ストロールの後ろには11番手オコンまでが繋がった状態で、バンドーンはパーマーを追いかけることはできないものの単独で7番手を走行する。
10番手を走っていたヒュルケンベルグは48周目にピットに戻りリタイア、12番手のマグヌッセンも50周目にMGU-Kを失ってスローダウンを指示されピットに戻ってリタイアした。3番手ボッタスは54周目にファステストラップを刻み2番手リカルドの2秒後方まで迫る。さらに4番手サインツの2秒後方にペレス、そしてパーマーもペレスの2秒後方まで迫ってきた。
本来は61周のレースだが、度重なるセーフティカー導入とウエットコンディションによるスローペースのためスタートから制限時間の2時間が過ぎてレースは58周目で終了となった。
ハミルトンは55周目にファステストラップを刻み後続を寄せつけることなくトップでチェッカードフラッグを受け、苦戦が予想されていたシンガポールGPを制し3連勝を果たした。
2位にリカルド、3位ボッタスという表彰台で、サインツがペレスを寄せつけることなく4位、そしてパーマーが6位でフィニッシュしシート喪失が噂される中で今季初入賞を勝ち獲った。バンドーンは7位、ストロールが8位、9位グロージャン、10位オコンという入賞圏で、完走は12台のみという大荒れのレースとなった。