金曜日に発表されたトロロッソ・ホンダ。しかし、イタリアGPが終了した段階で、多くの人々はホンダがマクラーレンとの関係を解消することはほぼ間違いないとしながらも、トロロッソへのパワーユニット供給に関して、疑問を抱く者が少なくなかった。場合によっては、ホンダがF1から撤退するのではないかという者も少なからずいた。
しかし、ホンダのモータースポーツ全体を統括している執行役員の森山克英ブランド・コミュニケーション本部長は、次のように撤退に関する憶測を否定した。
「ホンダにとって、F1は非常に特別なものです。創業者の本田宗一郎が参戦を夢見たことから始まり、それから50年以上もこのF1に関わっています。確かにいまは非常に厳しい状況にあり、社内でも大変厳しい議論があったことは事実です。現状に満足している者はだれもおらず、どうしたらこの苦境から抜け出せるかについて、激しく議論を重ねました。しかしながら、撤退という言葉は、ひと言も出ていません」
ホンダに撤退の意思がないことは、今回トロロッソとの契約が2020年まで3年間ということでもわかる。これは2020年で契約を切るという意味ではない。
F1は2021年にパワーユニットに関するレギュレーションを大きく変更するための措置で、ほかのチームとエンジンマニュファクチャラーの契約もほとんどが2020年末までとなっている。
もちろん、2021年以降の新しいレギュレーションを決める会議には毎回ホンダも出席し、議論している。いまのホンダにF1からの撤退はない。
だが、パートナーをマクラーレンからトロロッソに変えても、パフォーマンスが上がらなければ、再び撤退の危機に直面する。
「今回、マクラーレンとのコラボレーションがうまく行かなかったのは、(2008年限りでF1から撤退した)空白期間があったことが大きかった。しかし、いまはその遅れを取り戻すべく、かなり大きな資源を投入していています。トロロッソとの新しいパートナーシップは、ホンダF1にとって新たな歴史の1ページを開くことになるでしょう。いまから来年の開幕が楽しみです」森山本部長は語る。
では、ホンダは来年の目標をどのように設定しているのか。
「トップ3、上位に加われるところに到達することがわれわれの早期の目標です。たしかに現在は苦しい状況ですが、この苦境を乗り越えることが、ホンダのチャレンジングスピリットです」
そう森山は語ったが、トロロッソがこれまで表彰台が上がったのは2008年のイタリアGPでセバスチャン・ベッテルが優勝した1回だけ。現実的にはかなり厳しい。
それよりも、ホンダとしてはまずはルノーを選択したマクラーレンには負けたくないというのが本音ではないか。これはマクラーレンと同じPUを搭載することになったレッドブルも同様。
そういう意味では来年のF1は、それぞれの思惑が交錯する熱い戦いになりそうで、見る側にとっては、今回のスワップは歓迎すべきことだったのかもしれない。