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aikoのライブは常にスペシャルだーー攻めの姿勢と愛に溢れたツアー『Love Like Rock vol.8』

2017年09月16日 10:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 aikoの全国ライブハウスツアー『Love Like Rock vol.8』のファイナル公演が9月7日、Zepp Tokyoにて開催された。『Love Like Rock』は全国のライブハウスで行われる、aiko恒例のライブツアーシリーズ。今回は4月27日のZepp Tokyoを皮切りに、Zepp Osaka Baysideや新潟LOTS、チームスマイル・仙台PIT、高松festhalleなど初めてライブを行う会場を含む全国9カ所・31公演を約4カ月半にわたり開催するという『Love Like Rock』史上最長のツアーとなった。


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 また、今ツアーでは各会場とも2日連続でライブが行われ、それぞれ異なる2つのセットリストを用意。そのセットリストもツアー中に曲の入れ替えが行われるなど、複数回観ても新鮮な気持ちで楽しめるaikoらしい演出が用意された。


 定刻が過ぎた頃、ステージを隠すように垂らされていた真紅の幕が下りると、さらに1枚紗幕が用意されており、そこにCGを駆使したオープニング映像が映し出される。そして映像の終了とともに紗幕が下されると、そこには真っ赤なワンピースを着たaikoの姿が。そのまま勢いよく、オープニングナンバー「夢見る隙間」でライブをスタートさせた。『Love Like Rock』のタイトルからおわかりかもしれないが、この日のセットリストは同曲を筆頭にロック色の強い選曲で、とにかく息つく暇もないくらいに“攻め”の姿勢でライブが進行していく。aiko自身もステージ上をところ狭しと動き回り、時にパワフルな、そして時に伸びやかで艶やかな歌声を会場中に響き渡らせた。


 2曲目「milk」冒頭では「ツアー最終回です。皆さんよろしくお願いします!」と元気に叫ぶ一幕も。このaikoの声に応えるかのように、オーディエンスはリズムにあわせてジャンプを繰り返す。続く「相合傘」では曲の持つスピード感にあわせ、赤と青の眩いレーザー光線が場内を飛び交う。さらに、ライブ終盤に歌われることの多い「Power of Love」が早くも登場すると、会場の盛り上がりはさらに加速。aikoはフロア中央まで延びたランウェイを走り、センターステージでファンとコミュニケーションを図っていった。


 疾走するかのごとく4曲を終えると、aikoは「今日はみんなの顔を見て、しっかり目を合わせて、心の中をえぐるような、そんな1日にしたいと思います」と宣言する。以降もビートの強い「なんて一日」「恋愛」「プラマイ」や、ポップでじっくり聴かせる「ドライヤー」「えりあし」などを連発。特に「アンドロメダ」では天井のミラーボールが回転し、フロアをカラフルで眩い光で照らし続けた。


 ライブ中盤のMCでは、aikoは今回ツアーから新たに加わったバンドメンバーについて言及する。このツアーは佐野康夫(Dr)、佐藤達哉(Key)、芳賀義彦(Gt)、須藤優(Ba)といった過去のツアーでおなじみのメンバーに、初参加の設楽博臣(Gt)、伊澤一葉(Key)の2名を加えたツインギター&ツインキーボードという新たな編成で展開。ロック色の強い選曲ながらも、音のふくよかさが耳に残るアレンジが印象的だったのも、今回のツアーの見どころ、聴きどころだったのではないだろうか。


 ライブ後半はポップな「雨踏むオーバーオール」を挟んでから、「恋のスーパーボール」で再び攻めの姿勢に。「明日の歌」では真っ赤な照明の中、aikoが情熱的な歌を聴かせる。また、この曲では歌詞がスクリーンに表示されることによって、この曲の持つ言葉の強さがより際立って響いた。さらに終盤に入ると、aikoもフロアの観客も汗だくになりながら、ともに笑顔でエールを送り合う。気づけばaikoはイヤーモニターを外しており、オーディンスの声を直接聞こうとする彼女ならではの愛情が伺えた。そして「be master of life」では曲の最後に、いかにこの日が待ち遠しかったか、その愛をストレートに伝えてライブ本編を締めくくった。


 中盤のミディアム/バラードパートを除けば、ほとんどの楽曲がロックテイストの強いものばかりで、気づけば2時間が経過していた。さすがのZepp Tokyoもこの日ばかりは夏の暑さ以上の熱気が充満していたが、観客たちはそれでもアンコールを求めるハンドクラップや声援を響かせる。すると、ツアーTシャツに着替えたaikoやバンドメンバーが再登場し、切ないラブバラード「恋をしたのは」からライブを再開させた。この曲で会場の空気が一変したかと思いきや、aikoは続くMCで「出張に行っていた旦那さんが久しぶりに帰ってくるから、めっちゃ頑張って料理を作ったらめっちゃ濃い味になった、みたいなのがいつも最終日なんです」と言って場を和ませる。さらに「アンコールとはいえ、ここからは一世一代の大勝負の舞台ですから。しっかりとみんなに、たくさんの球を投げまくりたいと思います。みんなのハートに届きますように!」と言い放つと、「Loveletter」「キラキラ」と極上のナンバーをプレゼントして再びステージを後にした。


 アンコールで会場の盛り上がりがピークに達したものの、この日はツアー千秋楽。オーディエンスはさらなるアンコールを求めて声援を送り続ける。すると、ステージに戻ってきたaikoから「実は8月12日のライブで、骨折したんです、足」と衝撃的な告白が。左足を骨折し全治3カ月と診断されたものの、絶対にライブを中止にしたくないという思いからライブを強行。正直この告白がなければ、この日のライブも「いつもどおり元気いっぱいに歌い踊るaiko」との評価で終わっていたかもしれない。しかし、ライブ1本1本が彼女にとって当たり前のものでないように、我々観客側にとってもライブ1本1本が常にスペシャルなものなのだということを、このエピソードで強く実感させられた。痛みに耐えてツアーを最後まで強行したaiko、そして彼女を全力でサポートし続けたスタッフに賞賛を送りたい。


 そしてaikoは「魂の交換がしたい」と、観客とエールを交換。そのまま「エナジー」「mix juice」「鏡」の3曲を喉が瞑れんばかりに、すべてのパワーを歌に注いで、約3時間におよぶ熱演に幕を下ろした。aikoがステージを後にすると、エンドロールとともに千秋楽のためだけに用意されたスペシャル映像が流れ、最後は「骨折するほど楽しかったです!」という彼女の直筆メッセージで締めくくった。


 来年2018年7月17日にメジャーデビュー20周年を迎えるaiko。2017年は『Love Like Rock vol.8』を通じて、彼女および彼女のファンにとって改めてライブの重要性を再確認する1年になったのではないだろうか。だからこそ、20周年を迎える2018年はどんな活躍を見せてくれるのか、今から楽しみに待ちたい。(西廣智一)