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チェコ×SKY-HI、MIYAVI、オザケン×セカオワ……アーティストコラボはなぜ増加?

2017年09月16日 10:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 近年の音楽シーンにおいて、アーティスト同士による共同制作が増えている。9月27日にCzecho No RepublicとSKY-HIのコライトシングル『タイムトラベリング』がリリース、11月8日にはMIYAVIが9組のアーティストを招いて制作したコラボアルバム『SAMURAI SESSIONS vol.2』のリリースが控えるなど、音楽ジャンルを超えたコラボレーションも目立つ。さらに世代をも超えたコラボレーションとなった、小沢健二とSEKAI NO OWARIの『フクロウの声が聞こえる』が大きな話題を集めたのも記憶に新しい。


(関連:小沢健二とSEKAI NO OWARI、コラボの必然性 『フクロウの声が聞こえる』発売までの流れを読む


 もともと、こうした共作や客演はHIPHOPやR&B、ダンスミュージックなどで盛んな手法だ。それらの音楽が世界的な流行になり、チャートの上位を占めるようになった現在では、1曲に対して複数名のアーティストの名前が並んでいることは海外チャートでは当たり前の光景と言える。例えば、9月23日付のBillboard Hot100では、ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキー feat. ジャスティン・ビーバーの「Despacito」、DJキャレド featリアーナ&ブライソン・ティラーの「Wild Thoughts」など、上位10作品中4作品が客演を招いた作品だ。


 こうした客演文化は、制作環境のコンパクトさやクラブ/ストリートカルチャーにおける横のつながりなど、ジャンル特有の要因によって形成されたものだが、それらが世界的なメインストリームへとのし上がったことで、ここ日本にも波及してきていると考えられる。


 もう一つ大きな理由として考えられるのが、アーティストたちが楽曲制作のノウハウを共有しようとする傾向が強まっていることだ。海外では、DTMや楽器のチュートリアル動画が日本に比べてはるかに多い。YouTubeで「ableton live tutorial」と検索すると約136万件ヒットするのに対して、「ableton live 使い方」と調べるとたったの約8,320件しかヒットしない。プログラマーやエンジニアのようなオープンソース的な思想が音楽においても反映されており、有名なプロデューサーが自身の制作に使っているサンプル・パックを配布することも珍しくない。こうした考え方が徐々に日本にも広がってきているのではないだろうか。


 日本では、tofubeatsが『FANTASY CLUB』のプロモーション動画として制作した「HARD-OFF BEATS」が上記のような考え方を如実に表している。ハード・オフで購入したレコードをサンプリングして、時間内に楽曲を作るという内容だ。動画では細かいところまでは見られないが、実際にDTMの画面を確認することができ、サンプリングされた音源が徐々に曲になっていく様は音楽をやっている人にとっては参考になるはずだ。また、w-indsの橘慶太もこうした楽曲制作に焦点を当てた活動に積極的だ。今年6月にはアルバム『INVISIBLE』に収録されている「We Don’t Need To Talk Anymore」のリミックスコンテストを開催。ステムデータを一般に公開し、コンテスト受賞者とのコライト作品の制作も予定しているという。


 以上のように、J-POPにおいてもアーティスト同士の交流や、フットワークの軽い活動スタイルが徐々に普及してきている。今年6月にリリースされたカルヴィン・ハリスの新作『Funk Wav Bounces Vol.1』は時代の潮流を読みつつも、異なるジャンルを取り込むことによって生まれた傑作だ。この作品のように、ジャンルやメジャー/インディーにとらわれず、アーティスト同士が自由にコラボを重ねることで、より日本の音楽的な土壌は豊かになっていくはずだ。共同制作だけでなく、多様な活動スタイルが生まれることを期待しながら今後もシーンを見守っていきたい。(山田勇真)