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『ひよっこ』佐久間由衣が羽ばたくとき 第24週で描かれた3人の物語のクライマックス

2017年09月16日 06:03  リアルサウンド

リアルサウンド

 みね子(有村架純)にとって時子(佐久間由衣)は、同郷の幼なじみであり、共に上京し励ましあってきた親友であり、女優という夢を追いかける一目置いた存在だ。『ひよっこ』(NHK総合)第24週「真っ赤なハートを君に」では、時子が「ツイッギーそっくりコンテスト」で優勝し、女優への階段を駆け上がっていく。みね子と同じ幼なじみであり、時子の心の支えとしての“片思い”をし続けた三男(泉澤祐希)、どんな時も一番近くにいたみね子。それぞれが時子が“遠い存在”になっていくことを察するシーンは、ここまで積み重ねてきた3人の物語のクライマックスであり、新たなスタートでもある。


(参考:『ひよっこ』で“新しい恋”のはじまり? 泉澤祐希、佐久間由衣、伊藤沙莉の三角関係やいかに


 時子のコンテストに向け、女性のみで開かれる「あかね荘作戦会議」。女優としての大先輩である世津子(菅野美穂)は、「男の人たちが選ぶお気に入りの女の子像ではなく、女の人が選ぶスターが求められている」と作られたブームを超え、予想を超えた新しい風、スターが必要とされていることをアドバイス。夢を追う時子の相談相手であったみね子は、「もっと堂々としていてほしいんだ」と弱さや辛さを忘れさせる、憧れの存在になるべきだと時子の背中を押す。


 ピンクのミニスカート姿でステージに颯爽と現れた時子は、まさに女優であった。壇上で求められるのは、演じること。裏天広場でいち早く行われた女性だけのリハーサルも、三男が固唾を飲んで見届けたコンテスト本番も、時子は堂々とした態度であり続けた。「日本中の、世界中の女の子達、女性達。いろいろ大変だよね、女として生きて行くのは。でも、女の子の未来は私に任せて! みんな、私についてきて!」。自信に満ち溢れたその姿は、ツイッギーを彷彿とさせる女の子が憧れるかっこいい女性像そのもの。裏では緊張する彼女の様子を描くことで、時子が演じていることを表しているのが分かる。


 殻を自分で破り、女優として羽ばたいていった時子。それを見守る三男の片思いも、同時に終わりを迎えることとなる。時子を思うことで、彼女の心の支えになっていた三男。彼の思いを受け止め、「解放してやりたい」と夢を追うことを決心した時子。嬉しさをにじませる彼の笑顔にの奥には、涙が溜まっていた。<好きなんだけど/離れてるのさ/遠くで星をみるように/好きなんだけど/だまってるのさ>、三男が帰路、震える声で歌う西郷輝彦の「星のフラメンコ」が二人の関係を痛いほどに表している。


 時子があかね荘を離れる夜、みね子はこれからを心配がる彼女を抱きしめ「大丈夫にするしかないんだよ」とエールを送る。この言葉は、『ひよっこ』において何度も繰り返されてきた言葉だ。第3週「明日(あす)に向かって走れ!」で、実(沢村一樹)が行方不明になったことを時子と三男に打ち明けた時、明るく振る舞うみね子が自分に言い聞かせるように。第21週「ミニスカートの風が吹く」で、実が離れ一人になった世津子が心配するみね子に返した言葉でもある。みね子は時子を送り出しながら、一抹の寂しさを覚えるのだった。ちなみに、時子の新たな芸名「和泉真琴」は、『ビーチボーイズ』(フジテレビ系)で広末涼子が演じた役名。脚本は岡田惠和。彼の悪戯心が光る。


 『ひよっこ』も残り2週。ナレーションを務める増田明美のセリフを借りれば、マラソンに例えて40キロ地点だ。第25週のタイトルは「大好き」。様々な人物の物語が動く中で、みね子と秀俊(磯村勇斗)の恋模様に新たな展開が待っているのかもしれない。


(渡辺彰浩)