2017年09月15日 10:13 弁護士ドットコム
会社を退職する際には出来るだけ円満に辞めたいものですが、思いがけないトラブルにあうことも多いようです。都内在住のJ子さんは、以前勤めていた出版社を退職する際、「社内の人間とのアクセス禁止令」を出されたといいます。
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「人事担当者から『社内の人間も資産です』と言われ、『今後社内の人間と連絡をしない』といった書面に署名を書かされました。さらには、『今同期などとLINEやFacebookで繋がっているなら、友達をこの場で切ってください』とまで言われて…」(J子さん)
転職時に「退職後、競業他社へは就職しない」という「競業禁止契約」を企業と従業員が結ぶケースはよく聞きますが、退職する社員に対して、同僚との連絡を禁止することまで出来るのでしょうか。黒柳武史弁護士に聞きました。
「会社が連絡を禁止するに至った背景を知る必要もありますが、基本的に、退職者がかつての同僚と連絡を取ることを全面的に禁止するような合意は、公序良俗(民法90条)に反し、無効になる可能性が高いと考えられます」
黒柳弁護士はそう指摘します。なぜでしょうか。
「本件と同じケースではありませんが、会社が社員と、社員の退職時などに、競合他社への転職を禁止する旨の合意書を交わすことがあります。しかし、このような合意も、社員の職業選択の自由を制限するものとして、無条件に認められるものではありません。競業禁止の範囲が合理的な範囲を超える場合には、公序良俗に反し無効とされます」
合理的な範囲というと、どこまでを指すのでしょうか。
「競業禁止の場合でいえば、合理的な範囲は、企業の利益(企業秘密の保護など)、退職者の不利益(転職の制限など)等の視点に立って、制限の期間、場所及び職種の範囲、代償措置の有無などを検討した上で、確定されることになります」
J子さんは、社内の人間と連絡をしないよう書面を書かされたそうです。
「本件の合意内容は、かつての同僚とコミュニケーションを取る自由といった退職者の人格的利益を、広く制約するものといえます。一方で、これにより守るべき企業側の利益は判然としません。仮に企業秘密の保護等の目的があるのであれば、その観点から合理的な範囲において規制をすればよいといえます。
したがって、本件の合意は、退職者の人格的利益を、合理的範囲を超えて制限するものといえ、公序良俗に反し無効になる可能性が高いと考えられます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
黒柳 武史(くろやなぎ・たけし)弁護士
2006年関西学院大学大学院司法研究科修了。2007年弁護士登録(大阪弁護士会)。取扱い分野は、民事・家事事件、労働事件、刑事事件など。
事務所名:中本総合法律事務所
事務所URL:http://nakamotopartners.com/