フォース・インディアF1チームのCOOであるオットマー・サフナウアーは、F1で年間予算の上限を1億5000万ドル(約165億円)にしてもレースを行うには十分すぎるとし、FIAがこれを監視することも可能であると考えている。
2021年以降のF1がどうあるべきかを検討する作業が進んでいるが、新たな各種レギュレーションの導入にあたってはチームのコスト削減が最優先テーマになっている。
1990年代にFIA会長を務めたマックス・モズレーはバジェットキャップ制度(予算上限制)の推進を図ったものの、導入に至らなかった。しかし今、これが財政改革を達成するための手段として再び検討され始めている。
サフナウアーはこの件について「我々は現実的になるべきだ」とし、さらに以下のように語った。
「仮に数年のうちにバジェットキャップ制度が導入されるとする。そして、これは決して無理な数字ではないのだが、年間2億5000万ドル(約275億円)の予算と1000人のスタッフを抱えたチームが、翌年急に1億ドル(約110億円)の削減を求められたら、300から500人の人員整理をしなければならなくなるかもしれない。それは難しいことだ」
「しかし個人的には、もし予算の上限が1億5000万ドルだとしても、それで十分にレースをやっていけると思うし、他のレースシリーズと比べても予算規模はひと回り大きいだろう」
「我々は、1億5000万ドルだけでファンのために素晴らしい仕事ができるようでなければならない。これは現実的な数字だと思うし、言うまでもなく半数のチームはこれほどの額を使ってはいない」
「予算の上限が設けられても、全チームの半数はそれよりはるかに小さい額でやっていけるので、さらに何かをする必要はないのだ」
「残り半分のチームがその上限に合わせて削減をしないといけない。おそらく全体の4割ほどが上限を超えているだろう」
一方で、惜しげなく金を使える余裕のあるチームはバジェットキャップを歓迎しないだろう。予算制限を導入した場合、自動車メーカー系のチームが開発費を関係の薄い子会社に移管して、全体の予算を計上するような事態を誘発することが考えられる。それによって、監督者であるFIAの目を逃れてノーマークで派手な支出を続けるためだ。
とはいえサフナウアーは、内部告発も考えられるため、自動車メーカー系のチームを監視する状態を作れると考えている。
「これは常についてまわる疑問だ。もし予算上限が設けられたら、それをうまく回避しようとする人々が出るのではないか、ということだ」
「私は、それを防ぐための方法や仕組みを作るべきだと考える。政府と税金を例にとれば、人々は自分がより多くの金を持っておきたいために、なるべく税金を払いたくないという強い動機を持つことになる。しかし政府は、税の支払いについて調べ、照合し、督促する仕組みを持っている」
「我々の知らないところで多くの人が税金逃れをしているに違いないが、時折巨額の罰金が科せられている」
「もし捕まったときの処罰が十分に厳しいものなら、それによって安定性を維持することができると思う」
「そして私の考えでは、F1における最大の違反抑止力は、たとえば誰かがあるチームで行われていることを把握した状態で別のチームに移籍して、『彼らが何をやっているか知っているか? こういうやり方で1億5000万ドルの上限を上手に回避しているんだよ』としゃべることだ」
「おそらく内部告発行為が違反に対する最大の抑止力になると思う」