2017年09月14日 07:53 弁護士ドットコム
女優の斉藤由貴さんが既婚者である医師の男性と男女関係にあったとメディアで報じられているが、プライベートな写真が写真週刊誌に掲載されたため、警察に相談しているという。
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写真はキス写真や、男性が女性ものの下着を頭にかぶっている写真などで、斉藤さんや男性が保存していたものとみられる。
一部メディアでは、保存していた写真が第三者によってハッキングや不正アクセスされた可能性があると報道されている。もしも、当事者の許可なく、故意にプライベートな写真を流出させた場合は、流出させた本人はどのような罪に問われるのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。
流出させることの罪をどう考えればいいのか。
「プライベートな写真を流出させることで、その人の社会的評価を低下させるような事態になれば、名誉毀損罪に問われる可能性があります。
人の社会的評価を低下させることが名誉毀損とされますが、たとえば不倫関係を推認させるような写真やわいせつな写真などが公にされれば、社会的評価の低下があり得ることになります。
本件では、おそらく写真は不倫関係を推認させるものと思われるため、名誉毀損となる余地があります。
ちなみに、写真を掲載するかどうかは写真週刊誌側の判断になりますが、写真を持ち込むのは掲載してもらうためであり、掲載されることで多くの人の目に触れることが前提になっています。したがって、実際に流出させた写真週刊誌側とともに、流出させた本人にも名誉毀損が成立する余地があると考えます」
では、犯罪になってしまうということか。
「社会的評価の低下があるとしても、(1)公共性があること、(2)公益を図る目的があること、(3)内容が真実であること、という3つの要件を満たせば違法性がないとされます。
(1)不倫は一般的には公序良俗に反することと考えられているため、公共性はあり、また、(3)不倫関係があったことは事実上認めているようなので、真実であるということがいえます。問題は(2)公益目的の有無です。
『公序良俗に反することをさせないようにする目的があった』と見るとすれば、公益目的があるということができます。しかし、週刊誌に写真を提供する意図は必ずしも明らかではないですが、流出させた人物との間で何らかのトラブルがあったとすれば、一定の復讐や嫌がらせの目的があるとみなせることも少なくないでしょう。そうすると、流出させた人物に公益目的があったとすることは難しくなります。
また、流出写真を掲載する週刊誌などは、もっぱらゴシップネタとしてこのような情報を消費しているに過ぎないのが通常であり、そのようなゴシップネタに公益目的が本当にあるといえるかは大いに疑問があるところです」
つまり、不倫写真の流出は、問題があるということか。
「そういうことです。個人的には、今回のようなケースでは、厳密に言えば違法性がないとすることは難しく、名誉毀損罪が成立すると考えてもよいのではないかと思います。
ただし、警察がこのような成立するかどうか微妙なラインのものを扱うかというと、扱わないことが一般的なように感じます。したがって、名誉毀損罪として立件されるという可能性は低いでしょう」
写真の入手方法に問題があった場合は、どうなのか。
「プライベートな写真を流出される原因が、クラウドに外部からハッキングしたということであれば、そのハッキング行為自体は不正アクセス禁止法違反ということになります。
したがって、ハッキングした人物はこの罪に問われる可能性があります。
しかし、仮にこれを写真週刊誌が掲載したとしても、週刊誌側がハッキングを指示しているといった特殊な事情がない限り、出版社側は同罪に問われることはありません」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、Twitterに対する開示請求、Facebookに対する開示請求について、ともに日本第1号事案を担当。2016年12月12日「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第2版(弘文堂)」、2017年1月18日「企業を守る ネット炎上対応の実務(学陽書房)」を出版。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp