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窪田正孝ら、DISH//のライブに乱入!? 『僕やり』“そこそこ幸せ”な青春に終止符打った第9話

2017年09月13日 10:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 「自由に生きてきた人間ほど、不自由に弱い」市橋(新田真剣佑)の突然の自殺に打ちひしがれるトビオ(窪田正孝)に、刑事の飯室(三浦翔平)が告げるこの言葉は、自分が辿る結末を決めようとしていたトビオに、追い討ちをかけた(いや、むしろ飯室の存在は正義の象徴であるから、「後押しをした」というほうが適切かもしれない)。


参考:『僕たちがやりました』劇伴はなぜ耳に残る? origami PRODUCTIONS 対馬芳昭氏インタビュー


 矢波高のボスとして君臨していた市橋が、爆破事件で体の自由を失ったのと同じように、トビオもまた事件によって心の自由を失ったのである。それは、パイセン(今野浩喜)が無罪となり、真実を目の当たりにしたときの飯室の言葉で決定的なものとなって、屋上から飛び降りるという行為に結びついた。そして今回もまた、飯室の言葉によってトビオは動かされる。心の自由を取り戻すために、“そこそこ幸せ”という腑抜けた自由を犠牲にする覚悟を身につけたのである。


 12日に放送されたフジテレビ系列火9ドラマ『僕たちがやりました』は、クライマックスに突入する第9話。自首を決意したトビオたち4人は、警察に出向いてもまた揉み消されるに違いないというパイセンの言葉に従い、自らを社会的に“死刑”にするための作戦に乗り出すのだ。


 今回のエピソードの終盤から始まる衝撃的なフィナーレの直前まで、4人それぞれが残り少ない“そこそこ幸せ”だった青春を謳歌していく展開に、何とも言えない切なさがこみ上げる。今宵(川栄李奈)に一目会おうと毎日彼女の家を訪ねつづける伊佐美(間宮祥太朗)。彼は子供の名前を考えたと「明日男(トゥモロオ)」と書いた紙を掲げる原作通りのシーンでユーモアを誘う。一方で、街で偶然にもウララ(おのののか)と再会したマル(葉山奨之)は、彼女にはっきり別れと感謝を告げる。二人とも逃亡中に見せていたような、どうしようもないキャラクターから、大人の男へと成長していることを窺わせるのだ。


 そして、市橋の死を受け止めようとする蓮子(永野芽郁)とトビオはデートを重ねていく。この二人が醸し出す雰囲気は、最近のいわゆる“キラキラ映画”のような甘酸っぱい場面ばかり。とくに、二人が学校帰りに水族館でデートしている場面を見ると、『ひるなかの流星』でも同じようなシーンがあったことを思い出してしまう(ちょうど新城毅彦演出の回だから意識した部分があったのだろうか)。


 小高い丘の公園で会話している場面で、先に歩き出したトビオのワイシャツの裾を掴む蓮子。この不意打ちの“裾クイ”からの、後ろから抱きついて「好き」と告げるシーンは、まさに少女漫画的な場面。また、最後の夜に待ち合わせした二人が手を繋ぐ直前、差し出した手を引っ込めたトビオに思わず蓮子が「あ!」と発するところは、これまでのドラマの空気をガラリと変え、この後に待ち受けている展開さえも思い出させないほどにときめいてしまう場面であった。


 渋谷の街に放たれたドローンとバズーカによってばら撒かれる無数のビラとともに始まったクライマックスの贖罪劇。主題歌を歌うDISH//のライブに乱入するという、粋なサプライズ演出もさることながら、ここ数話はオープニングにキャストクレジットを出すことで、スッと途切れるようなエンディングの演出が冴え渡っている。ライブに乱入したトビオたちのもとに、別の乱入者が現れ4人をハンマーで殴打していく。そして頭を殴られて倒れこむトビオの姿。何て続きの気になる終わらせ方だろうか。


■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。