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間宮祥太朗のポテンシャルは計り知れないーー『トリガール!』『僕やり』で見せた技術派の演技

2017年09月12日 06:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 旬な俳優からベテランまでもが一癖も二癖もあるキャラクターを演じ、怒涛の展開を見せる『僕たちがやりました』(フジテレビ系、関西テレビ)。この出演者陣の中でも、コミカルとシリアスを自由に往来し、ひときわ存在感を放っているのが間宮祥太朗。そんな彼が、これでもかと魅力を炸裂させている『トリガール!』が現在公開中だ。


(参考:窪田正孝ら“クズ”からの脱却なるか? 『僕やり』新田真剣佑が残したもの


 間宮といえば、ドラマや映画、舞台と、着実にキャリアを積み重ねている新進気鋭の若手俳優の一人として、広く認知され始めているところだろう。とりわけ筆者個人としては『戦国鍋TV~なんとなく歴史が学べる映像~』(テレビ神奈川、千葉テレビ放送、テレビ埼玉、サンテレビジョン)で見せていた、歌に踊り、弾ける笑顔に、“スター誕生”を予感したものだった。現在では、『帝一の國』や『お前はまだグンマを知らない』など、その端正なルックスから多くの人々が抱くであろうイメージを、ことごとく破壊。その熱演っぷりが印象深く、彼の持つポテンシャルの高さは底が知れない。


 『トリガール!』は、土屋太鳳と間宮の激しい掛け合いが、なんとも楽しい一作に仕上がっている。2人の“犬猿の仲”で交わされる言葉は、超高速キャッチボールどころか、ほとんどマシンガンの撃ち合いのよう。他の部員たちが、本当にこの2人で大丈夫かと心配するのも当然のことである。しかしこの掛け合いは激しい罵り合いでありながら、不思議と聞いていて不快ではない。これだけの言葉の応酬を、テンポ崩さず交わすことがどれほど難しいか。両者とも、いかに自分のセリフ言うかではなく、いかに相手のセリフを受け、返すか。この連続で成立している。物語が進むにつれ、この掛け合いは見事な「リズム」のように感じられ、果ては人力飛行に必要な「シンクロ」感を生むのだ。


 半ケツも辞さない覚悟で、坂場役に挑んだ間宮(彼にとっては半ケツくらい、容易いことにも思えるが)。粗野で、やたらと声の大きなキャラだが、腹から響く芯の通った声からは、間宮が技術派で器用な俳優だということが良く分かる。クライマックスのフライトシーンで、本作で芸達者ぶりをさらに進化させた土屋との真剣勝負。狭い密室空間での言葉の応酬は、極限状態で展開される。カナヅチである間宮は、水面を目前とした精神的負荷と、ペダルを漕ぎ続けることによる身体的負荷のある中、次々に言葉を放つのだ。クマを素手で倒したと噂される“狂犬”から、カナヅチとして水を恐れる“子犬”まで、荒々しくも繊細なアプローチで、この快活な男は、笑いも取れば涙も誘う。


 思えば『僕たちがやりました』第3話で、首吊り自殺に失敗した伊佐美(間宮)がトビオ(窪田正孝)の前で見せた暴走、間宮onstageも圧巻だった。彼の力強さには、なぜだか見ているこちらもテンションが上がってしまう。第8話では、これまでのおバカなハイテンションとは一転。恋人の今宵(川栄李奈)に別れを告げられ、夜の川に向かって「このままじゃダメだ。きれいになりてぇ」と瞳を潤ませていた。伊佐美役としての新たな一面に、(前のシーンに気圧されながらも、ちょっとだけ)ジーンときたのではないだろうか。


 いよいよ佳境を迎える『僕たちがやりました』。原作とは異なる結末が用意されているという話だが、間宮はどんな表情を見せてくれるのだろうか。そして単独初主演映画となる『全員死刑』。強烈なタイトルもさることながら、メインビジュアルから、新たな間宮の“ヤバさ”を予感させる。


(折田侑駿)