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【インスタ映え】転落死亡事故招いた伊良部大橋 観光客の危険行為が常態化

2017年09月11日 16:23  弁護士ドットコム

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プロポーズ直後、ふざけて橋の欄干に立った男性が転落し、死亡する事故が起きた沖縄県宮古島市の伊良部大橋。現場となった伊良部大橋は、「インスタ映え」するスポットとして知られ、大勢の観光客が訪れている。しかし一方で、風景写真や自撮り写真を撮ろうと、駐停車禁止の路肩に車を停めたり、車道に座り込んで撮影したりする観光客やインスタグラマーの危険な行為が常態化している。


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あまりのマナーの悪さに、地元の男性が転落死亡事故が起こる約2か月前、その実態を訴える動画をYouTubeに投稿。「本当に危ないので、注意喚起をしてほしい」と訴える。伊良部大橋での観光客やインスタグラマーの危険行為は防止できるのだろうか。その後の安全対策について聞いた。


●欄干に登り、車道に座り込むインスタグラマー

Instagramで「#伊良部大橋」というハッシュタグの写真を検索すると、2万件以上の写真が見つかる。青い海を背景にポーズを決めるインスタグラマーが多いが、中には欄干に腰掛けた男性や車道に座り込んでポーズを取る女性など、「インスタ映え」を求めるあまりの危険な行為の写真も少なくない。


伊良部大橋は、2015年に宮古島と伊良部島を結ぶ橋として開通した。無料で通行できる橋としては国内最長の3540mで、自動車のほか自転車や徒歩で渡ることも可能だ。開通以来、観光客の足は絶えないが、本来は駐停車禁止であるにも関わらず車を停め、風景を眺めたり、撮影したりする人が続出。旅行口コミサイトにも、「駐停車禁止なのに、みんな橋の途中で記念撮影していました」「駐停車している車が多いので要注意」といった内容が投稿され、違法な駐停車が常態化していることがわかる。


伊良部大橋は歩行者と自転車の通行は可能だが、幅1.25メートルの「幅広路肩」と呼ばれる路肩があるだけ。車道と路肩は色分けで区別されているのみで、縁石や柵などは設けられていない。そのため、以前から地元では歩行者や自転車の事故の危険性が指摘され、沖縄県議会でも歩道設置が取り沙汰された経緯がある。しかし、事業費のコスト削減などのため、歩道の設置実現には至っていない。


●地元男性が投稿した動画に写っていたものは…

そうした伊良部大橋でのマナーの悪さや事故の危険性を訴えるのが、宮古島などでシュノーケリングツアーを開催している「清水万次郎商店」の清水靖さんだ。転落死亡事故が起こる約2か月前に、清水さんはYouTubeに伊良部大橋の様子を撮影した動画を投稿していた。




「ひどすぎる伊良部大橋のマナー」というタイトルの動画には、両脇の路肩に違法駐車している車が邪魔となり、はみ出し禁止のセンターラインを飛び出して走行せざるを得ない車が写っていた。停車している車の中にはタクシーもある。動画は反響を呼び、再生回数は2万2000回を超えた。


「違法駐車が多く、車で走っていると危ないです。歩いて渡っても良い橋なのですが、中には車道を横断する人もいて危険です。違法に駐停車している車には、プロのタクシーまでいます。他の人が投稿した動画でも同じような状況です」と清水さんは指摘する。転落死亡事故でも、亡くなった男性は橋の上に駐車していたと報じられている。旅行口コミサイトでは、「途中で停車できるスペースがあります」と緊急車両用の退避スペースに駐停車できると勘違いしている観光客もいる。十分な周知がされていないと清水さんは考えている。


清水さんによると、宮古島に他にも、池間島との間に池間大橋(全長1425メートル)、来間島との間に来間大橋(全長1690メートル)という橋が、やはり観光名所となっているが、それぞれ歩道が設置されており、伊良部大橋が最もひどい状態という。


●求められる伊良部大橋の安全対策

観光客やインスタグラマーたちの危険な行為について、対策はとられているのだろうか。伊良部大橋を管理する沖縄県土木建築部宮古土木事務所に聞いたところ、駐停車禁止の標識は伊良部大橋上に設置されているという。歩行者がむやみに車道を歩いたり、撮影のために座り込んだり行為は、道路交通法に抵触する恐れもあるが、手すりの上に登る行為については、「取り締まることはできず、あくまで個人の方にお任せするしかない」と話す。


しかし、これまでは利用者の良識に委ねる形となってきたが、転落死亡事故が起きたことからも、「今後は県警と連携して、どのような対策ができるのか、模索している段階」とする。


伊良部大橋の危険性を訴えてきた清水さんは、「伊良部大橋では取り締まりもあまりされず、注意を呼びかける看板もない。役所や警察、レンタカー会社は、観光客の人たちに対して、もっとしっかり注意喚起をしてほしいです」と話している。



(弁護士ドットコムニュース)