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現役看護師が見た『コード・ブルー』の面白さ チーム医療の現在をどう描いている?

2017年09月11日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

 『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON』(フジテレビ)は、第8話となる9月4日放送分で、平均視聴率15.4%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)をマークした。2008年のファーストシーズンから9年経った今も、その人気は根強い。


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 本来、「コード・ブルー」とは病院内で患者に緊急事態が発生した場合に用いられる、医師・看護師を緊急徴集するための専門用語だ。ドラマにおいては、毎話、救命救急のため、フライトチームである医師と看護師がドクターヘリで一刻を争う現場に赴き、命をつなぐストーリーを展開する。目に鮮やかなブルーの診察衣も印象的で、まさに「コード・ブルー」というタイトルがぴったりな作品である。過去にも『ER緊急救命室』『救命救急24時』シリーズなど、救命救急現場に迫ったドラマは人気を博したが、今作の見どころはやはり、「ドクターヘリ」での救命だろう。


 認定NPO法人救急ヘリ病院ネットワークによると、日本におけるドクターヘリの現状は、2015年8月現在、38道府県で46機が運航し、最近の出動件数は年間約2万件を超え、消防からの現場要請に対する出動が全体の約7割を占める。疾患別では、外傷が約4割と最も多い。2017年3月現在では、全国41道府県に51機のドクターヘリが配備されている。


 ドクターヘリが初めて日本に配備されてからわずか17年、従来の地上救急にくらべて救命率は3割以上向上したという。よって、維持費などさまざまな問題を指摘されている反面、まさに救命救急の最先端を担うという点で、今後の活躍が高く期待されるのだ。


 そしてもうひとつ、ドクターヘリと同様、今作により濃く描かれているテーマがもう1点ある。それは「チーム医療」である。チーム医療推進協議会によると、チーム医療とはひとりの患者に複数の医療専門職が連携して、治療やケアに当たることを指す。


 実はチーム医療が日本で本格的に普及されたのは日本にドクターヘリが導入された2001年のこと、日本癌治療学会で行われた上野直人医師のシンポジウムと言われている。これまでは、看護師や薬剤師などの各専門職が医師の指示のもと、治療を行うのが主流だったが、現在は、医師だけでなく、各医療職の専門性をより活かすために、メディカルチームを築き、患者も一員として加わってもらうことでより安心・安全で質の高い医療を提供するという医療にシフトされつつある。


 『コード・ブルー』においてのチーム医療について特筆したい点はふたつある。ひとつめは、「ドクターヘリの運行スタッフ」だ。ドクターヘリでの救命には、医師、看護師、救命救急士の医療職のほかに、パイロット、整備士、コミュニケーションスペシャリスト(CS)の存在が欠かせない。彼らの役割は、ドクターヘリで迅速、安全に現地に赴き、患者のもとにフライトドクターとナースを送り届け、限られた時間で、救命のために患者を病院に搬送することだ。


 彼らのエピソードとして、第7話では、パイロットの立場での救命への真摯な姿勢を垣間見ることができる。


 踏切事故のもとにドクターヘリが急行する際、フェローの灰谷俊平(成田凌)がパイロットの早川正豊(伊藤祐輝)に急ぐよう指示をしたため、ドクターヘリが木に触れて着陸に失敗するという事態になった。事故について調査委員会で運行について問われた際、パイロットは最短時間で安全に目的地に着くようにプランを立てているため、医師が指示を出すことが禁じられているとの指摘を踏まえ、「患者を助けたくなるため、消防からの患者情報に関する無線は聞かないようにしている。」との早川の言葉は、医療職ではなくとも、救命に携わるフライトチームの一員ならではであり、とても印象的だ。


 そして、2つめは、「現場でのリモート操作」だ。ファーストシーズン、セカンドシーズンの現場でフライトドクターへの指示に使用されていた携帯電話は、スマートフォンやタブレット端末に変わり、フライトドクターの胸元についたカメラを通して病院側からリモート操作で、実際の現場の様子を見ながら指示を出すというシーンに変わった。


 記憶に新しいのは、第6話で業務用冷蔵庫内の事故でのこと。多量出血した作業員に対して、チームーリーダーの白石恵(新垣結衣)がフェローの灰谷にリモート操作で大腿動脈の結紮術を誘導する場面だ。経験もなく、麻酔もないのに手術できないと狼狽える灰谷を見かねて、フェロー横峯あかり(新木優子)が取り掛かるも難航。別の現場にいるフライトドクター藍沢耕作(山下智久)がレシーバーで灰谷に「病院に戻って嘆くのか、ここで患者を救うのか決めるのはお前だ」と伝え、意を決めた灰谷が白石の指示で処置をやり遂げたというシーンだ。


 ファーストシーズンから約10年、リモート操作からも見て取れるように、医療は目覚ましい進歩を遂げた。しかし、救命の現場では今なお、生身の人間がさまざまな葛藤を繰り返しながら医療に向き合っているのである。


 「おまえたちは全員、動脈塞栓ひとつ満足にできない半人前だ。だが3人揃うことで12歳の子供の命を救った。お前たちがダメだと言っているわけではない。救命はチームだと言っているんだ」という第8話でのフェローたちに対する藍沢の台詞や、「仲間はいる。決して馴れ合いではなく、かといって敵でもない。長い年月と体験の共有、成功体験はもちろん、辛い体験、悲しい体験、恥ずかしい部分を含めてお互いをさらけ出す。そんな時間を経て私たちは仲間になる」というフライトドクターの緋山美帆子(戸田恵梨香)の言葉こそが、このドラマの鍵である「チーム医療」そのもの表わしていると言っても過言ではない。


 今作もいよいよラストスパート、過酷な現場を経験し、さまざまな自分と対峙しつづけてきた、ドクターたちはどんな未来を重ねるのだろうか。(内藤裕子)