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チームルマンの驚異のソフトタイヤ50周。スーパーフォーミュラ常識破りの戦略はどう生まれたのか

2017年09月10日 20:42  AUTOSPORT web

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まさかの4周後ピット&ソフトタイヤ50周という驚異の戦略でW表彰台を獲得したSUNOCO TEAM LEMANSのふたり
スーパーフォーミュラ第5戦オートポリスで優勝したピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)から主役を奪う驚きを与えたのが、SUNOCO TEAM LEMANSの2台だった。ドライバーのフェリックス・ローゼンクビスト、そして大嶋和也、そして今年からチーム監督になった片岡龍也に今回のレースについて聞いた。

「特別なレースになった。ふたりとも表彰台に上がれたことは良いことだし、嬉しいことだ」と、第3戦富士で2位、第4戦もてぎで3位、そして第5戦オートポリスで2位と3戦連続で表彰台を獲得したローゼンクビスト。

 スタート直後、先陣を切って4周目にピットへ入り、ミディアムタイヤからソフトタイヤに履き替えてコースに復帰したローゼンクビスト。この時点ではミディアム、ソフト、ソフトの2ストップ戦略だと考えられたが、実際にはそこから残りの50周を走りきり、10番グリッドから2位表彰台を獲得した。

「スタートの状況によってピットストップのタイミングを決めようという戦略だった。クルマはソフトタイヤの方が良かったし、ピットストップのタイミングは最初は中盤がいいと思っていたよ」と大胆な戦略を選択した経緯を話すローゼンクビスト。

「もしスタートで5位まで上がっていたらピエール(ガスリー)と同じ戦略でいっていたかもしれないけど、残念ながら僕のスタートがあまり良くなかったから、リスクがあっても最初の方で入ると決めた。ソフトタイヤが(50周)保つことはわかっていた。決勝はギリギリの計算をしながらのマネージメントレースだったね」

「チームは苦戦をしてきたし、本当に頑張ってくれた。努力の成果が出たと思っているよ。レース終盤にピエール(ガスリー)にも近づいたけど、タイヤが最後まで保つか不安があったし、どのようになるかわからなかったから、タイムをキープして最後まで走りきることに専念したんだ」

 同じく、チームメイトの大嶋和也も同じ戦略でレースを戦い、15番グリッドから3位表彰台を獲得。大嶋は6周目にピットに入りミディアムタイヤからソフトタイヤに交換。その後、ソフトタイヤで48周を走りきった。

「自分は金曜日からソフトタイヤを使い、決勝に向けて準備をしてきました。そのデータ的には決勝でもソフトタイヤが長く使えるだろうと。勇気は必要でしたけど、15位でゴールしてもしょうがないのでチームに勝負させてくれとお願いしました。この作戦にしてよかった」

「今年から久しぶりにフォーミュラに復帰して、いろいろな問題を抱えていたり、自分自身も思うように走れなくて非常に苦しいシーズンを過ごしてきました。チームもエンジニアを新しく海外から呼んでくれたので、結果が出せてよかったです」と、5年ぶりのスーパーフォーミュラの表彰台を喜んだ。

 チーム監督として今年から現場を束ねる片岡龍也監督も、満面の笑みでこの結果を喜ぶ。

「戦略は今日の午前の練習走行を見て決めました。燃費は4周走れば足りるということが分かっていました。クリアなところで走れればチャンスがあるし、4ラップ後に入れば、かなり攻めている戦略なのでウチより早く入るチームはないだろうと。あとはソフトタイヤを中心にしようと話していましたが、レースでどこまで保つか。ウォームアップでは(レースの最後まで)保つだろうと。保たなかったから仕方ない、もう一回ピットに入ろうと」

 直前の練習走行で、燃費、そしてソフトタイヤのライフを他のチームよりも精密に見極め、そのアドバンテージを最大に活かせる戦略を考案できたことが、今回のチームルマンを好結果に導いた。

「僕らは10番グリッド、15番グリッドからスタートするので勝負をしないと絶対に上位は狙えない。ただ、行ける予感というか、他の選択肢では前に行ける戦略にはならなかった。ですので、2台とも同じ作戦で行きました。トップのペースも思ったより遅かったのがウチのチームにとってかなりいい方に傾きました。スタートして10周目くらいには、『これってもしかして、すごく上に行っちゃうんじゃないの?』と思いました。あとは、最後まで保つことを祈るだけ(笑)」と片岡監督は続ける。

 半ばギャンブルのような思い切った戦略を選択できたのも、これまでのチームルマンとは違う雰囲気を感じさせる。今年のチームルマンはドライバーラインアップが2名とも昨年から変わり、片岡監督が就任。さらには、元F1フェラーリのエンジニア、そしてDTMのエンジニアと両外国人を迎え入れ、メカニックも変わった。ほぼスタッフ総入れ替えの状態で臨んでいるスーパーフォーミュラで、序々に好結果を残し始めている。

「これも監督のおかげ……と言いたいところですが(苦笑)、今年はチームのスタッフ、メンバーががらっと替わって、空気が変わったと思います。流れもいい方に来ているので、このままいい流れに乗って、チャンピオンシップも意識していきたいと思います」と締めた片岡監督。この勢いがどこまで本物なのか、次のSUGO戦でその真価が見える。