スーパーフォーミュラ第5戦オートポリスの予選で焦点が当たったのが、ソフトタイヤのウォームアップだった。予選Q2では小林可夢偉(KCMG)がひとりアウトラップのあとにもう1周、ウォームアップを入れてからアタックし、2番手にコンマ5秒差を付けてトップに立ったが、この背景についてのやりとりで予選後の会見が湧いた。
可夢偉以外のドライバーはアウトラップの翌周にアタックしてタイムを記録する中。可夢偉だけが早めにコースインして、1周多く周回してアタックしていた。
会見でその経緯を聞かれると、可夢偉は「みんなが1周だけでアタックをしているのを知らなかった」と告白。「他のドライバー全員(1周のみ)だったんですね?」と可夢偉が聞き、メディアが頷くと、「今、はじめて知りました(苦笑)」と神妙な表情で応えた。ウォームアップを1周減らしていれば予選タイムがさらに向上した可能性が高いだけに、可夢偉としては予選3番手にも素直に喜べない結果となったのだ。
同じく予選会見に出たポールの野尻智紀(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)は、可夢偉が1周多くウォームアップしている状況について尋ねられると、「知らなかったです」と返答。
予選2番手の国本雄資(P.MU/CERUMO · INGING)は「Q2からQ3で(ウォームアップのやり方を)変えられないですよね。Q2で1周で温めていたものを、急にQ3でゆっくり2周かけて温めるやり方に変えるのはリスクがあります。Q2でも1コーナーからしっかりとグリップが出ていましたから変える必要はないなと思っていました」と、ドライバーのアタックまでのルーティンの繊細さを話したところで、可夢偉がカットイン。
「雄資、そういうのちゃんとLINEで教えてよ」と突っ込む可夢偉。「やっぱり1周だよね~。絶対、僕のことをバカだと思っていたドライバーが何人かいたはずですよ(笑)。誰か、教えてほしかったなあ~」と続けると、「ホント、クルマに乗っていたらわからないんですよ。Q2では一番最初にコースインして、アタックでは誰にも会わずに終えちゃったから他のドライバーのことがわからないんですよ」と予選中のドライバーの状況を垣間見せた。
ちなみに、野尻も国本もQ2では若干トラフィックに引っかかったこともあって、可夢偉が大差でトップタイムをマーク。可夢偉はQ3ではQ2のタイムを上回ることができなかったが、「守りに入ってしまった」と、Q2の大差のトップが影響してしまったことを示唆していた。
その予選でも話題になったソフトタイヤだが、日曜の決勝も主役となってレース展開の命運を握ることになりそうだ。
土曜の会見に出席した横浜ゴムの渡辺晋プランニングジェネラルマネージャーによると、決勝でのソフトタイヤのライフは「12周程度でミディアムとの差がなくなるのではないか」と予想しており、同じヨコハマタイヤを装着している全日本F3のセッションなどが多いことからも、路面に乗るラバーが多くなれば、さらに周回数を伸ばせることも推測される。
決勝で必要な給油量は満タン+10周程度と予想されていることから、決勝の王道戦略として、ソフトタイヤでスタートし、10周過ぎにタイヤがタレたところでピットインしてタイヤ交換&給油というパターンを選ぶドライバーが予選上位に多いはず。
その一方、グリッド後方のドライバーとしてはミディアムスタートで終盤までピットインを引っ張るパターン、または、もてぎ戦の塚越広大(REAL RACING)のように、2ピット戦略でソフトタイヤ→ソフトタイヤ→ミディアムという戦略を選ぶ可能性が考えられる。特に、もてぎでの塚越の成功例があるだけに、このオートポリスで2ピットを選択するチームは以外と多いのではないだろうか。
このオートポリスの予選日でもソフトタイヤ投入がスーパーフォーミュラに大きなアクセントを加え、決勝に向けても大きな楽しみと期待をもって戦略を予想できることだけでも、今回のソフトタイヤは十分成功していると言ってもいいのではないだろうか。