自身2度目のポールをコースレコードで獲得した野尻智紀。マシンを降りて、ガッツポーズ。 全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦が大分県日田市にあるオートポリスにて開催され、公式予選では野尻智紀(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が自身2度目、今季初のポールポジションをコースレコードで獲得した。
昨年4月の熊本地震により、オートポリスとその周辺にも被害が及び、昨シーズン9月に開催予定だったオートポリス大会は中止、2年ぶりの選手権開催となった。今年は既に5月にスーパーGTが開催されており4輪ビッグレースとしては2度目のイベントとはなるが、スーパーフォーミュラにとっては震災後初のイベント。サーキットへ向かうミルクロードはまだまだ復旧作業に向かうトラックも見られ、窓から見える阿蘇の風景には一部の山肌が崩れ痛々しさも残っていた。
2年ぶりの開催となるスーパーフォーミュラ、前回と大きく違うポイントはタイヤサプライヤーが横浜ゴムに変わっての初開催、さらに、前戦もてぎから導入されている2スペックタイヤ制により、ソフトタイヤが導入されることに。
今回のオートポリスにはもてぎで使用したソフト、ミディアム両コンパウンドのタイヤセットの中から2セットの持ち越しが許され、新品タイヤはソフト、ミディアムそれぞれ2セットの計6セットでの戦いとなる。もてぎ大会前に発表されたソフトタイヤ運用方法では、オートポリス大会予選での使用制限はなかったのだが、もてぎ大会終了後、オートポリス大会ではノックアウト方式で行われる予選Q1でのミディアムタイヤの装着義務に変更になったことがアナウンスがされた。
設営日の木曜は霧と豪雨により設営も途中で引き揚げ、走行予定であったF3は全日走行中止という荒天だったが、金曜から土曜にかけては夏の暑さの名残が残るような好天となり、気温30度、路面温度44度のコンディションで予選セッションがスタート。
ミディアムタイヤの使用義務があるQ1の走り始めはユーズドタイヤとニュータイヤ、半々の台数に分かれのセッション開始となった。いつものようにマシンの確認とウォーミングアップに終始しながら各車ベストタイムを削っていく。セッション序盤でのトップタイムはニュータイヤを装着したアンドレ・ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM’S)の1分28秒727、山本尚貴(TEAM MUGEN)、ヤン・マーデンボロー(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)とつづく。
20分間のセッション時間の半分が経過するあたりで全車ピットに入り、マシンセットアップの最終調整を行う。残り7分30秒を切ったあたりでミディアムのニュータイヤを装着してのアタックタイムが始まった。
最初にコースへと向かったのはフェリックス・ローゼンクビスト(SUNOCO TEAM LEMANS)。そして残り6分を切ったところで残りのマシンが一斉にピットを離れていく。アタックラップ、最初にターゲットタイムとなるトップタイムを出したのは国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)の1分27秒968、その直後に小林可夢偉(KCMG)が2番手に入り、そのあいだをロッテラー、中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)が割って入るという目まぐるしい展開が続いた直後、残り時間46秒というところで赤旗が掲示される。
塚越広大(REAL RACING)がジェットコースターストレートエンドでコースオフ。大きなクラッシュをした模様で、左フロントのサスペンションが折れ、フロントウイングを落とした状態で芝生の上にマシンを止めていた。塚越は自力でマシンを降りて、大きな怪我はなかったようだ。
マシンの撤去に10分程度時間がかかり、その中断中にセッションの残り時間が3分に延長されて再開。再びQ2進出に向けて各車がコース上へと向かったが、トップ5に残っていた国本、一貴、可夢偉、山本、そして8番手ながらも石浦はピットに留まりQ2の準備へと移行していた。
赤旗から再開後のセッションは、アウトラップとアタック1周の勝負に。最終的にトップタイムは赤旗前と変わらず国本となったが2番手に野尻、3番手にマーデンボローがベストタイムを更新し、トップ3でQ1を終えた。Q1敗退は大嶋和也(SUNOCO TEAM LEMANS)、ニック・キャシディ(KONDO RACING)、中嶋大祐(TCS NAKAJIMA RACING)、小暮卓史(B-MAX)、そしてコースオフした塚越の6名となった。
Q2セッションはQ1の赤旗中断もあり当初のスケジュールより13分遅れての走行開始になり、全車ソフトタイヤを装着してのスタートとなった。7分間のセッションながら、開始直後にコースインするマシンはなく、セッション開始45秒を経過したところで可夢偉が最初にコースイン。その後、6分を切ったところで国本が動き、その後、各車続々とコースへと向う。
最初にタイミングモニター上にタイムを出したのは可夢偉。しかし1分35秒台というタイムに留まり、トラフィックに引っ掛かりアタック失敗したように思われた。そのあと、国本、一貴がタイムを塗り替え、計測1周目にベストタイムでトップに出たのは野尻という状況に。
これで順位が落ち着いたかと思われたが、計測2周目にアタックを行うマシンもありタイムを出していく。タイミングモニター下位の位置につけながら、赤塗文字の自己ベストセクタータイムを出していたのは可夢偉、関口、マーデンボロー、山下の4台。計測1周目がアタックラップでトラフィックに引っ掛かっていたかのように思われた可夢偉だったが、実は計測2周目に狙いを定めていた。この時点でウォームアップに2周を費やしていたのは可夢偉だけだった。
結果、可夢偉が1分26秒317のコースレコードタイムでトップに。このあと関口、マーデンボロー、山下のタイムにも注目が集まったが、3台とも上位タイムを残せずQ2敗退となった。その他ノックアウトはローゼンクビスト、伊沢拓也、ナレイン・カーティケヤンとなっている。
最後のQ3セッションではQ2よりも30秒ほどコースインのタイミングを遅らせながら、可夢偉が真っ先にコースイン。そのあと残り時間4分を切ったあたりで、残りのマシンもコースへと向かう中、石浦だけが少しタイミングをずらして残り3分10秒でコースへと向かった。
最初に計測1周目アタックでトップタイムを出したのはロッテラーの1分26秒637。まずはこれがターゲットタイムになる。その直後に野尻が1分26秒196のコースレコードをマーク。その後の注目は可夢偉のウォームアップを他のドライバーより1周多くした可夢偉のタイムに注目が集まる。
しかし、可夢偉はセクター1で野尻のタイムを上回るもセクター2、セクター3では更新ならず、野尻からコンマ2秒強遅れての3番手。2番手には国本が就いている。野尻は2016年の岡山大会以来のポールポジションを獲得。野尻は前戦のもてぎでも予選2番手ながらQ2で記録したトップタイムがもてぎのコースレコードとなったため、このオートポリスと合わせて2戦連続のコースレコードホルダーとなった。