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瑛太たちが本物のヒーローに? 『ハロー張りネズミ』最終回へのフラグが立った第9話

2017年09月09日 12:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 金にならない案件ばかりが続き、事務所の家賃を5ヶ月も滞納している「あかつか探偵事務所」は、窮地を脱しようとビラ配りまでして仕事を得ようとする。そんな彼らに舞い込んだのは、幼稚園でヒーローショーをするという、これまで以上に探偵の仕事とは程遠い依頼だったのである。


参考:森田剛が見せた“人情とお節介” 『ハロネズ』の『幸福の黄色いハンカチ』オマージュを読む


 「まるで便利屋じゃないですか」と、五郎を演じる瑛太と演出の大根仁がタッグを組んだ『まほろ駅前番外地』とリンクしてしまうような五郎のつぶやきから入った、8日放送のTBS系金曜ドラマ『ハロー張りネズミ』第9話。来週迎える最終回を前に、フィナーレへと繋がる重要なエピソードになるかと思いきや、これまでのどのエピソードよりも破綻した展開でシュールな仕上がりとなっており、改めてこのドラマの魅力を感じずにはいられない。


 ビラ配りをしていた五郎たちは、商店街で偶然、元悪役レスラーの外道番長(後藤洋央紀)と遭遇する。見た目とは裏腹に気さくな彼に興奮を隠しきれない五郎だったが、近所の幼稚園の先生・岸本杏里(樋井明日香)を見つけると様子がおかしくなる外道番長。その杏里が幼稚園の子供たちを楽しませようと、ヒーローショーを持ちかけるのだ。


 そんな杏里は元恋人からDVを受け、逃げ出してきたという過去を持っていた。そんな時に勇気付けられた子供たちに笑顔を与えたいという彼女の話が、単なる良い話で終わらないのがこのドラマのにくいところだ。ヒーローショー当日、突然乗り込んできた外道番長が杏里の元恋人だとわかり、五郎たちは本物のヒーローになって悪役レスラーと真剣勝負となる。


 依頼人の過去や、悪役レスラーの二面性、五郎と蘭子のラブストーリーに、最終回へ繋がる伏線と、どれも満遍なく取り入れながら、いたるところに先の読めるフラグを立てて、深くそれを追求せずに素早く回収していく。テレビドラマという気楽に楽しむことができるメディアの、しかも単発エピソードという特権を活かした作りではないだろうか。


 思い返してみれば家族愛のドラマから幕を開け、大手企業に渦巻くサスペンス、オカルトもの、哀しい愛の物語に、トレンディな片想いエピソード、そして先週は名作映画オマージュで再び家族愛ものに戻るなど、毎週観るたびに違うテイストのドラマを展開している『ハロー張りネズミ』。この“何でもあり”な雰囲気が、ドタバタ劇として集約されたのがこの第9話というわけだ。


 探偵事務所の4人に加え、最近あまり登場していなかった事務所の下の階のスナックのマスター(中岡創一)と萌美(片山萌美)も巻き込み、さらにオカルト回で大活躍した霊能力者の河合節子(蒼井優)が再登場。ドラマ序盤に登場したメインキャストを再び動員させて(リリー・フランキー演じる南は第7話でふらりと登場していたし)それなりに見せ場を与えるあたりは、大根仁のキャストを扱う巧さを感じる。


 実は大家だったことが描かれ、事務所の面々を追い出そうとするマスターに、蘭子とは正反対のタイプで魅力を放つ萌美。さすがに、子供たちの前で暴れまくって五郎たちを寄せ付けない外道番長に対して、節子が謎の特殊能力を使って動きを止める場面には唖然としてしまったけれども。


 いずれにせよ、最終回での徳川埋蔵金エピソードに繋がる、「家賃を払えずに事務所を追い出され、探偵たちは解散の危機に陥る」というフラグはしっかり立った。崖っぷちの「あかつか探偵事務所」にやってきた田舎臭い依頼人が持ちかける、徳川埋蔵金エピソードで、いよいよ来週フィナーレを飾ることになる。最終回はどのようなテイストで楽しませてくれるのだろうか。


■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。