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岐阜の陶磁器原料メーカーが投棄した産廃、土砂崩れで住宅街に流れる…法的な問題は?

2017年09月08日 11:03  弁護士ドットコム

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8月18日の夜に岐阜県瑞浪市の中央道脇で土砂崩れが起きて、6人の重軽傷者が出た事故で、影響が中央道以外にも広がっている。


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報道によると、土砂には近くの陶磁器原料メーカー・丸釜釜戸陶料の産業廃棄物が含まれていた。この土砂が近くの住宅街にも流れ込み、道路や側溝に溜まった。長期間大量に吸い込むとガンのリスクが高まるとされる「シリカパウダー」という有害物質も投棄されていたが、付近の大気中からは検出されなかったという。


同社は1977年から現場脇の斜面に規格外品を投棄していたことを認めている。現経営陣が就任した10年前からは毎月3トンを投棄して、2年前にやめたという。


岐阜県警は廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)違反容疑に加え、業務上過失致傷容疑も視野に入れてメーカーを捜査している。今後の展開はどうなるのだろうか。村田正人弁護士に聞いた。


●自社の土地でも不法投棄罪にあたる

不法投棄が見つかった場合、何をどのように調査するのか。


「一般的には、不法投棄が判明した場合には、ボーリング調査を行うことによって埋立て規模(面積と深度)を特定します。そこから、ボーリングで採取した円柱形の試料を検査して、廃棄物の物質の性質を特定します。今回の場合ですと、中央自動車道や人家に流出した汚泥が、不法投棄された廃棄物のどの程度なのかを見極めなければなりません」


今回、陶磁器原料メーカーが何らかの罪に問われる可能性はあるのか。


「自社が所有する土地であっても、産業廃棄物を許可なく埋め立てた行為は、廃棄物処理法の不法投棄罪に該当します(第16条違反)。廃棄物を捨てた者は、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または併科とされ、法人も3億円以下の罰金に処せられます。


1997年の法改正までは、汚泥や紙くず、木くず、繊維くずなどを捨てる1000平方メートル未満の管理型処分場は、ミニ処分場として許可が不要とされていました。しかし、97年の法改正で、面積規模にかかわらず許可が必要となりました。


そのため、埋立て時期が97年の法改正以降の埋立ては不法投棄になりますが、それまでの埋立ては不法投棄には該当しません。ただし、維持管理基準違反の問題が生じる可能性はあります」


この土砂は今後どうなるのか。


「岐阜県は、不法投棄の全容が解明された後、全量撤去か、現地封じ込めか、いずれの措置命令を出すかの選択を迫られることになります。廃棄物が流れ込んだ地域の住民は、撤去に要した費用を損害賠償請求できます」


「シリカパウダー」という有害物質も投棄されていたようです。


「大気浮遊物の測定が行われましたが、大気中からは検出されなかったということでした。今後、一般的には、他の地域と比較してガンが多発するなどの事態が起きた場合には、因果関係を証明し、長い潜伏期間を経て症状が現れた場合は損害賠償の問題となります」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
村田 正人(むらた・まさと)弁護士
1948年、三重県津市生まれ。76年に弁護士登録(三重護士会)。三重県を拠点に活動。得意案件は、交通事故や離婚、環境など。2003年三重弁護士会会長。趣味は旅行。
事務所名:三重合同法律事務所
事務所URL:http://miegodo.com/