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米ビルボード記者に聞くK-POPの躍進 防弾少年団はなぜ人気?

2017年09月07日 20:41  CINRA.NET

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防弾少年団。彼らは9月18日にニューアルバムのリリースを控えている。
アメリカ・ビルボードのK-POPコラムニストであるジェフ・ベンジャミンの言葉から、K-POPの世界的躍進の背景を探るコラムの後編。前回はPSYの“カンナムスタイル”の世界的ヒットの功績や、アメリカのファンから見たK-POPの魅力について話を聞いたが、今回は言語の壁を超えるK-POPの戦略や、韓国アーティスト初となった防弾少年団のビルボードアワード受賞について、そして期待の新人にも言及してもらった。

■K-POPとラテンミュージックのファンダムは似ている?母国語のまま全米進出する韓国アーティストたち

前回の記事で“カンナムスタイル”のヒットによって「韓国語のポップミュージック」というものをアメリカ人が受け入れ始めた、とベンジャミンは語っていたが、PSYの後に出てきた防弾少年団やEXOなどのアーティストも、基本的には韓国でリリースした韓国語の曲がそのままアメリカで売れている。日本では多くのK-POPアーティストが日本のレコード会社と契約し、韓国で出した曲の日本語バージョンや、日本オリジナルの日本語の曲を作って売り出したりするので、アメリカのファンとは違った聴こえ方がしているだろう。

ベンジャミン「私は言語学の専門家ではないですが、韓国語と日本語は韓国語と英語よりも似ていますよね。だから韓国のアーティストにとって日本語でレコーディングして説得力を持たせるのはそこまで大変ではないんだと思います。

一方で英語で歌うのはまた別の話です。韓国のアーティストが英語で歌ったのと韓国語で歌ったのを比べると、韓国語の方が聴いていて楽しいなと思いますし、結局のところ無理して英語で歌うよりも、自分たちが得意な韓国語で歌う方がアメリカで受け入れられるのではないでしょうか。」

日本のように現地のマーケットにあわせてローカライズするよりも、本国でやっているベストな状態をそのまま持ってくる方がアメリカにおいては良いのではないかということだ。K-POPアーティストの日本オリジナル作品は、しばしば本国でのイメージとはかけ離れたいかにもJ-POPな楽曲とビジュアルを展開してファンの間でも賛否両論が起きるが、韓国で作られた本来のアイデンティティーを守りながら国外でも受け入れられることは健全だし、誇るべきことだろう。

またK-POPのように非英語圏の音楽でアメリカでも人気があるのがリッキー・マーティンやShakiraをはじめとするラテンミュージックだが、ベンジャミンはK-POPのファンダムの広がり方とラテンミュージックやアメリカのパンクシーンのファンとの類似性を指摘する。

ベンジャミン「ラテンミュージックもパンクのシーンもアメリカでとても熱心で強固なファンベースを築いている一方で、「メインストリーム」の音楽とは考えられていません。それでも確実にこの国のカルチャーで大きな動きを見せています。特にアメリカのチャートで何週にもわたって1位に輝いたルイス・フォンシ、Daddy Yankee、ジャスティン・ビーバーの“Despacito”は、どんな言語で歌われていたとしても曲次第でチャートを制することが可能だと証明しました(ルイス・フォンシ、Daddy Yankeeはプエルトリコ出身。“Despacito”はスペイン語の曲)。」

■防弾少年団のビルボード受賞の功績とは? NCT、K.A.R.D、Seventeenら期待の新人も

『ビルボード・ミュージック・アワード』トップ・ソーシャル・アーティスト部門を受賞した防弾少年団のアルバム『WINGS』も韓国語の作品だ。彼らのビルボードアワード受賞は、K-POP全体にとってアメリカのマーケットにおけるブレイクスルーとなるのだろうか?

ベンジャミン「防弾少年団のビルボードアワード受賞によって、彼ら自身やK-POPはより多くの注目を集めるようになったので、それはとてもエキサイティングなことだと思います。ですが、「ブレイクスルー」というのはもっと音楽そのものでアメリカの人々と通じ合うことを指すと思うので、ビルボードアワード受賞が彼らのSNSでの功績であることを考えると、ブレイクスルーとは言えないかなと思います。

そうは言っても韓国人だけで構成されるグループが表彰され、英語と韓国語で受賞スピーチをするところがアメリカ最大のテレビネットワークで放送されているのですから、その功績は無視できないし、無視してはいけないと思います。それに私自身は、彼らがアメリカのオーディエンスと繋がることができたのは、彼らの音楽と歌にこめられたメッセージに惹きつけられたからだと信じています。」

最後にベンジャミンが今後期待を寄せるK-POPアーティストを挙げてもらった。

ベンジャミン「Seventeen、MONSTA X、NCTのような新人のヒップホップグループで自作したり、曲作りにメンバーが関わっているグループは、アメリカで人気を獲得し始めているところだと思います。2NE1のやっていた強いガールズグループのサウンドを継承するBLACKPINKや、メンバー自ら曲作りに参加する数少ないガールズグループの1つであるPRISTINにも期待しています。

男女混合グループのK.A.R.Dもアメリカで注目を集めていますが、これは今時でトロピカルなムーンバートンサウンドと、男性と女性が一緒に踊っても平気だという西洋風のコンセプトによるものだと思います。もしK.A.R.Dが清純なコンセプトでデビューしていたら、アメリカのオーディエンスとは通じ合っていなかったでしょう。」

今年の4月にビルボードはオンライン版と紙面に防弾少年団と彼らの所属事務所代表パン・シヒョクのインタビューを掲載した。ベンジャミンがインタビュアーを務めたこの記事の中でパン代表は防弾少年団のアメリカ進出について、英語の曲を発表するよりも、世界の人々が共感するような要素を加えながら、K-POPアーティスト・プロデューサーとしてのベストを尽くすことが重要だという考えを表した。

“カンナムスタイル”のようなバイラルソングは、伝播の速度と範囲も大きいが、消費されるのも早い。防弾少年団を筆頭に現在のK-POPアーティストは、本国でのスタイルを守りながら着実にファンを増やすことで、「韓流ブーム」のような一過性のトレンドの一部になるのではなく、個々のアーティストとしてのアイデンティティーを海外のファンにも浸透させていっているのかもしれない。

ベンジャミンが名前を挙げた新人のうちの1組・NCTのグループ名は「Neo Culture Technology」の頭文字から取られている。メンバー数に制限がなく、「開放性」や「拡張性」をキーワードに、グループ内でソウルをはじめとする世界の都市を拠点とした複数のユニットが構想されているという彼らは、EXOやSHINee、東方神起らを擁するSMエンターテイメントが長年取り組んできた「文化技術」戦略の最新形態だ。様々なテクノロジーに裏打ちされたカルチャーとしてのK-POP。ブームの隆盛と収束を経験しながらアップデートされてきたこの産業は、自分たちの得意なことをやる、という一見原点回帰とも取れるやり方で言葉の壁を越え、世界にファンダムを築いている。