「週刊文春」(文藝春秋)が、「週刊新潮」(新潮社)の中吊り広告を「カンニング」していた問題に終止符が打たれそうだ。文藝春秋社の松井清人社長が9月5日付けで新潮社に謝罪文を提出したという。朝日新聞が報じた。
新潮社の出版部・部長で、「新潮45」の編集長の中瀬ゆかりさんは同日、「5時に夢中!」(TOKYO MX)にコメンテーターとして出演し、「これからは正々堂々と出版ジャーナリズムを高め合っていきましょう」と器の大きさを示した。
「すでに謝っていることをネチネチ言うようなセコイ会社ではいたくない」
新潮が中吊り広告の問題を告発したのは今年の5月。文春は、当初「情報を不正に、あるいは不法に入手したり、それをもって記事を書き換えたり、盗用したりしたなどの事実は一切ありません」と疑惑を真っ向から否定していた。しかし松井社長は5日付けの謝罪文で「不適切な取り扱いと指摘されても仕方のない行為」と一転して認めたという。
中瀬さんは、この報道が番組内で紹介されると、
「うちとしては謝罪を受け入れたので、いつまでもこのことを言うのではなくて、紳士協定を守って正々堂々と出版ジャーナリズムを高め合っていきましょうということ」
と述べた。「すでに謝っていることをネチネチ言うようなセコイ会社ではいたくない」とも言い、今後は執拗に問題を追及したりはせず、お互いに切磋琢磨していきたいと前向きに語った。
文春は「取材の過程で他メディアの動向を把握するのは日常的なこと」と説明していた
新潮は5月18日発売号で、文春の「カンニング」疑惑を告発していた。文藝春秋の社員が、出版取次会社から発売前の新潮の中吊り広告を受け取ってコピーし、自社に持ち帰っていたというのだ。そのせいで、池上彰さんが朝日新聞から連載を引き上げるといったスクープを横取りされたと主張していた。
これを受けて、文春は同日、サイト上で「『週刊文春』編集長から読者の皆様へ」という文書を発表。疑惑を否定した上で、
「社会を騒がせている事件、人物等については、多くのメディアが当事者やその周辺を継続的に取材しており、その過程で他メディアの動向を把握するのは日常的なことです」
と弁明していた。
文春が疑惑を否定する一方、出版取次会社のトーハンは5月19日、「当社が文藝春秋様に中吊り広告を貸し渡したことは不適切な取扱いであり、既に新潮社様に対して、取引者間の誠実義務に欠けていたことを認め、お詫びをしております」と事実を認め謝罪していた。