F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。
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今回は2連戦ベルギーGPとイタリアGPをまとめてチェック。高速戦だけにPU寄与率が高いコースで『ドライバー力』を焦点に。
☆ ジョリオン・パーマー(13位/リタイア)
スパでは自信を取り戻したかのようにフリー走行からニコ・ヒュルケンベルグに先行。Q2を7位通過後、Q3でギヤトラブルが起き、またもグリッドダウン。モンツァではフェルナンド・アロンソ相手に食い下がるも(ペナルティ)、トランスミッション破損。自信回復の兆しは見えたが……。
☆ ロマン・グロージャン(7位/15位)
根っからのファイターなのだ。水浸しモンツァ・ストレートでプッシュまたプッシュ、あげくにスピン。その前から「これでは無理だ」と言いながらも、とことん攻めていったグロージャンの闘志。
☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ(6位/13位)
スパの予選では3戦連続、トップ4チームに相当するベストタイム。レッドブル勢に続くポジションだ。ロー・ダウンフォースで臨んだモンツァでは加減速時でのスタビリティを欠き、トップスピードも伸びず大苦戦。アップデートが限られている現状はつらい。
☆☆ ランス・ストロール(11位/7位)
突然、新人が伸びるときはある。スパのフリー走行からフェリペ・マッサを上回り、雨のモンツァで“覚醒”。予選ではとくにアスカリとパラボリカで深く進入、ウエットでの攻撃的なブレーキングによって予選4位(グリッド2位)。4台バトルのレースでもしっかり7位、高速コースをマスター。
☆☆ マックス・フェルスタッペン(リタイア/10位)
心境に変化を感じる。完走が許されない状態に各セッションで、タイム重視の疾走を心掛けているかのよう。レースもスタートからさらなるアグレッシブ・モード。たとえるなら80年代前期ロータスでリタイアが続いていたころのアイルトン・セナみたい。壊れるならば己の速さを示すのみ、そう映る。
☆☆ キミ・ライコネン(4位/5位)
意図的ではないが結果的にセバスチャン・ベッテルのナンバー2のようなレースが続いた。直面する相手はバルテリ・ボッタス、スパでは抑え込んだがモンツァでは競り負けて引き分け。終盤戦、ますますフィンランド対決が激化するだろう。
☆☆☆ バルテリ・ボッタス(5位/2位)
この2連戦を失速気味でいたのは否めない。しかしモンツァ決勝で“復調”、2位を固め最終ラップに自己ベストタイム、今季3度目のメルセデス1-2。このままチーム・プレイヤーに徹していくか。
☆☆☆ エステバン・オコン(9位/6位)
セルジオ・ペレスとの不和説に惑わされず戦う姿勢は、新人とは思えない芯の強さ。スタートよし、ブロックもよし、バトルもよし。何度も言っているがデビュー22戦全完走記録はいまどきのルーキーのベスト・パフォーマンス。
☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン(1位/1位)
辛勝の後は楽勝と本人も認めた2連戦。『絶対負けられない』このサマーブレイク明けをPPウインで勝ちとった精神力はさすが。注目したのはモンツァのスタート、新人ストロールの方を警戒して斜向加速、オコンをマークしなかった。何をしてくるかよく分からない18歳にチェックを入れたのは正しい。そうしておいて2位オコンを1周目に1.794秒もリード、全くチャンピオンらしい。
☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル(2位/3位)
敗れても笑顔を見せるのは大事なこと、大観衆ティフォシを前に空中表彰台でとった態度は立派。落ちこんだらチーム全体が沈み、これからの戦いにかかわってくる。スクーデリアとはそういう一喜一憂しがちなチーム、ミハエル・シューマッハーも敗れたときにこそ常に鼓舞する姿勢を見せた。敗因をつかみ、シンガポールGPに向けチームをまとめていくベッテル、それがエースの務めなのだ。
☆☆☆☆☆ ダニエル・リカルド(3位/4位)
完走レースほぼ全部が“ポジションアップ”、スパ6→3位、モンツァ16位→4位。抜けるから可能な彼のレース・キャラがはっきりこの結果に。フェルスタッペンと違いそのためにトップスピードを重視するセッティング、ウエット予選は難しくてもレースはドライ確実、先を読みとおしてそなえた。
ソフトで粘るロング・スティントから終盤はベッテルを猛追、タイトル戦線にいないレッドブルにはこういうレースを期待するしかない。2強の狭間で脅かした彼にファイブ・スターを。