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Plastic Treeトリビュートアルバムが示すもの 幅広い音楽性とバンドの本質を読む

2017年09月06日 19:42  リアルサウンド

リアルサウンド

 メジャーデビュー20周年を迎えるPlastic Treeのトリビュートアルバム『Plastic Tree Tribute~Transparent Branches~』が9月6日に発売される。アニバーサリーイヤーを彩る本作の背景には「自分たちの音楽を聴いてくれていた人たちと出会う機会が増えてきた」(有村竜太朗/Vo)という状況が関係しているという。


「以前から“自分たちのトリビュートアルバムがあってもいいな”と思っていたんですけど、ここ数年、その熱がどんどん高まってきて。個人的には2012年の『JAPAN JAM』に参加したこともきっかけになってますね。今回のトリビュートにも参加してくれたTHE NOVEMBERSの小林(祐介)くんが声をかけてくれて、dipのヤマジカズヒデさんも加わり、それぞれの楽曲をセッションして。その頃から“ずっと聴いてました”と言ってくれる後輩バンドも増えてきて、そのつながりが形になったらおもしろいなと思っていたんですよね」(有村)


「メジャーデビュー20周年というタイミングも良かったんだと思います。メジャーデビューをきっかけに“もっとたくさんの人に聴いてほしい”という意識を持つようになったんですが、20年経って、どれくらいの人たちに聴いてもらえて、気持ちを共有できたかを計ることができたので」(長谷川正/Ba)


 「水色ガールフレンド」(PELICAN FANCLUB)、「プラットホーム」(氣志團)、「メランコリック」(清春)、「エンジェルダスト」(People In The Box)、「サイレントノイズ」(相川七瀬)、「みらいいろ」(緒方恵美)、「梟」(a crowd of rebellion)、「空白の日」(GOOD ON THE REEL)、「3月5日。」(MUCC)、「ツメタイヒカリ」(LM.C)、「Sink」(R指定)、「アンドロメタモルフォーゼ」(THE NOVEMBERS)。世代、ジャンルを超えた参加アーティストのラインナップはPlastic Treeというバンドの多様性を表している。各アーティストの個性的なカバーを通し、このバンドが持つ幅広い音楽性が浮き彫りになっていることも本作の魅力だろう。


「すごく良い楽曲が揃ったと思うし、発見も多かったですね。『プラットホーム』を聴いて氣志團の根っこにあるロックンロールを改めて感じたし、『メランコリック』には清春さんのライブのカッコ良さが注ぎ込まれていて。『エンジェルダスト』は“この曲をここまで分解できるのはPeople In The Boxだけだな”と思ったし、緒方恵美さんの『みらいいろ』は僕らが大好きな“碇シンジ”の声の方に曲を歌ってもらえたこと自体が嬉しくて(笑)。いちばん近いところで刺激し合ってきたMUCCが参加してくれたことも良かったですね」(有村)


「PELICAN FANCLUBが『水色ガールフレンド』をネオアコのアプローチでアレンジしてくれたり、a crowd of rebellionが思い切りラウド系のサウンドでカバーしているのもそうだけど、自分たちの音楽的な個性を改めて感じられるトリビュートだと思います。どのバンドも原曲のメロディを大事にしてくれていたのも嬉しかったですね。Plastic Treeはいろんな要素を持ったバンドですけど、いちばんの強みはメロディと歌詞だと思うので」(長谷川)


 ボーナストラックにはPlastic Treeの楽曲「ゼロ」を収録。これは2007年9月8日に開催された初の日本武道館公演『ゼロ』の際に無料配布された“幻の曲”だ。


「2007年の武道館はちょうどメジャーデビュー10周年のタイミングで“自分たちのバンドのことを指した曲を作りたい”と思ったんですよね。今回改めて聴いてみると“音楽でつながる”ということだったり“受け継ぐ”というテーマも感じられて。音楽に対する敬意を含んだ曲だったのかもしれないなと思いましたね」(有村)


 ネオアコ、ギターポップ、ポストパンク、ゴシック、シューゲイザー、サイケデリック、ラウドロック、オルタナティブーー主に80年代中盤から90年代に生まれた音楽の要素を貪欲に取り込みながら、きわめて独創的な音楽世界を生み出してきたPlastic Tree。このトリビュートバアルバムをきっかけにして、彼らの多彩なバンドサウンド、独自の世界観に触れるリスナーも多いはず。そして本作はメンバー自身にとってもPlastic Treeの本質を再認識するきっかけになったようだ。


「いまだに10代、20代のころに聴いていた音楽の影響下にあると思うし、自分が好きだった音楽の輝きはずっと色褪せないですね。熱病にかかったように聴いていた音楽をもとにして、自分たちの独自の作品を作ってこれたのも良かった思います。紆余曲折はあったし、とても“一切ブレずにやってきました”とは言えないけど、楽曲、ライブの根底は何も変わっていない。基本姿勢が変わらなかったからこそ、ここまで続いているんじゃないかな」(有村)


「Plastic Treeの音楽はどういうものか?を説明してくれてると思うんですよ、このトリビュートは。自分自身も刺激を受けたし、この後の制作にもいい影響があると思いますね」(長谷川)
(文=森朋之)