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窪田正孝ら“クズ”からの脱却なるか? 『僕やり』新田真剣佑が残したもの

2017年09月06日 10:32  リアルサウンド

リアルサウンド

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 5日に放送されたフジテレビ系火9ドラマ『僕たちがやりました』第8話は、これまでにないほどヘビーな展開となった。終盤に向かって徐々に明るい兆しを見せながら上昇して行った第7話から一転、“ジェットコースター展開”は90度の垂直落下を果たし、最大の転換期を迎えたのかもしれない。


参考:『僕たちがやりました』の“視聴熱”なぜ高い? ”視聴率”では語れないドラマの魅力


 刑事の飯室(三浦翔平)が、爆破事件の揉み消しの真実を知った主人公たちに言い放った「一生苦しめ」という言葉。市橋(新田真剣佑)と友情を深め、蓮子(永野芽郁)と付き合い始めたトビオ(窪田正孝)は、その言葉が頭から離れずに、“新しい自分”にも元の“そこそこ幸せ”にもなりきれずにいた。


 それはトビオだけではなく、仲間たち全員も同じだ。事件直後には、「自分たちが犯人である」という可能性に恐怖を抱いていた彼らは、事実上無罪放免となりながら、「自分たちが犯人だった」ことを知った瞬間から、もう罪の意識から逃げることができなくなっているのだ。心因性のEDに悩まされた伊佐美(間宮祥太朗)は被害者遺族の元を訪ねて歩き、パイセン(今野浩喜)は闇社会のドンである父親を探し始め、マル(葉山奨之)は元の不甲斐ない自分から抜け出そうともがき続けていた。


 しかし、これらはいずれも彼ら自身のエゴに過ぎない。始めは自分が何者かもわかっていなかったようなトビオが、自分の決めた方向に自分を導くことを選んだように、伊佐美は「性」を、パイセンは「愛」を、そしてマルは「力」を求め始めたというわけだ。今回の第8話で、全員が決定的に打ち砕かれ、それらを失ったことで、彼らはようやく“クズ”から脱却するチャンスを得ることになるのではないだろうか。


 今宵(川栄李奈)から妊娠を知らされ、「好きだけど、綺麗な人間じゃない」と、一方的に別れを告げられた伊佐美が、玄関越しに思いを告げる場面に漂う重み。事件を引き起こした4人がそれぞれに、飯室の言葉通り苦しみ始める。それは彼らだけでなく、今宵であったり、菜摘(水川あさみ)であったり、蓮子や市橋といった、周囲の人物をも巻き込み始めるのだ。


 蓮子との関係を市橋に話せずにいるトビオは、ビデオメッセージで面と向かって言えないことを伝えるが、肝心なことが言えない。それでも「まだ話したいことあるんじゃないか?」と見破る聡明さと、蓮子とトビオのことを知って笑顔で「コングラッチェネイション(コングラッチュレイションと言いたかったらしい)」と祝福する寛大な市橋は、おそらくトビオが事件を起こしたことを見破っていたのではないだろうか。


 第4話で、傷を負ったことで夢を諦めなければならないことを悔やみ、トビオたちへの恨みを抱いた市橋。彼が自ら命を絶つ直前にトビオへ送ったビデオメッセージで、トビオを「最高」だと褒めたのは、彼なりの“赦し”なのだろう。被害者である市橋がトビオを赦すということは、トビオにとって自分の罪を悔い改めることから逃れられない、最も重い罰になるはずだ。


 残り2回で、トビオたち4人が自分たちの犯した罪とどう向き合っていくのか。原作とは異なるフィナーレが待ち受けていると言われているが、まだもう1回転も2回転も起こりそうな予感が漂うこの“ジェットコースター展開”。決して油断できない。


■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。