サマーブレイクを経て、アジア・ラウンドの開幕戦を迎えたTCRインターナショナル・シリーズの第8戦が、9月2~3日にタイ・ブリーラムのチャン・インターナショナル・サーキットで開催され、本イベントに代打起用で参戦したノルベルト・ミケリス(ホンダ・シビック・タイプR)がオープニングレースを制覇。続くレース2は、オーレリアン・パニス(ホンダ・シビック・タイプR)がTCR初勝利を挙げ、シビックが酷暑のタイで見事な連勝劇を見せた。
M1RAのオーナーでもありWTCC世界ツーリングカー選手権でワークス・ホンダのエース格を務めるミケリスは、今季M1RAでレギュラーシートに座り、ここまで3勝を挙げランキング3位につけていたロベルト・コルチアゴの代役としてタイにエントリー。
49歳のコルチアゴは、前戦オッシャースレーベンのレース2でオープニングラップに巻き込まれたクラッシュによる負傷の影響で欠場を余儀なくされ、ミケリスはチーム代表兼ドライバーとして今季2度目のTCRインターナショナル参戦となった。
さらにM1RAはこの週末に向け3台目のシビックを用意し、そのシートにシーズン前半戦はウェスト・コースト・レーシング(WCR)のフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRをドライブしていた16歳のルーキー、ジャコモ・アルトを起用。18歳ながら選手権2位につけタイトルを争うアッティラ・タッシとともに、M1RAは強力な布陣でレースに挑むこととなった。
そのオープニングとなるレース1に向け、ポールポジションを獲得する速さをみせたのは、ベルギーに拠点を置くDGスポーツ・コンペティションのマット・オモラ(オペル・アストラTCR)。
オモラ自身は、その波乱含みだった前戦オッシャースレーベンのレース2でファイナルラップまでレースを支配する速さをみせていたものの、最後の最後でWCRのジャンニ・モルビデリ(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)に勝利をさらわれる苦い経験をしたばかり。このタイでは是が非でも今季初勝利を狙うべく、スタートから隊列をリードしていく。
その後方からは2番手にミケリス、3番手にクラフト-バンブー・ルクオイルのジェームス・ナッシュ(セアト・レオンTCR)が続き、チームメイトのぺぺ・オリオラ(セアト・レオンTCR)や、選手権首位のレパード・レーシング、ジャン-カール・ベルネイ(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)らが激しい3位争いの攻防を繰り広げる。
そんななか、14周レースも残り2周となった13周目に、先頭を走るオモラに異変が襲う。彼のオペル・アストラTCRは左フロントの負荷に耐え切れずバースト。前戦に続き、優勝目前での悲劇に見舞われたオモラは、成す術なくマシンを止めることに。
これで労せずして首位に立ったミケリスは「まるで期待していなかった」と語る通り、望外のTCRインターナショナル初勝利をマーク。
さらにファイナルラップには、そのミケリスを追走していたオリオラもギヤボックストラブルでまさかのストップとなり、ドゥサン・ボルコビッチのアルファロメオ・ジュリエッタTCRが2位。3位には、ベルネイとマシンをヒットさせながらの攻防を制した、M1RAのタッシが入り、シビック2台が表彰台に上がることとなった。
続くレース2は、前戦10位のリザルトでリバースポールからのスタートとなったブーツェン-ジニヨン・レーシングのパニスが盤石のレースを披露。
元F1ドライバー、オリビエ・パニスの長男であるオーレリアンは、今季中盤からWTCCを退きTCRインターナショナルへのスイッチを決断。TCRルクセンブルクなどで戦っていた同チームとともに、TCR最高峰シリーズを追うこととなった。
そのパニスだが、週末最初のレース1を前にエンジン載せ替えでペナルティを課され苦しいスタートとなったが、その決断が功を奏してレース2を危なげなく制覇。14周で一度も先頭を譲ることなく、見事にシリーズ初勝利をポール・トゥ・フィニッシュで決めた。
「フリー走行と予選では本当に速いマシンだったので、(載せ替えの決断は)不安だった。でもチームのおかげでマシンは最高にドライブしやすく、2戦目で勝つことができて本当にうれしい」と喜びを語ったパニス。
2位にはこちらもチームをスイッチしたばかりのアルトが入り、3位に2年連続王者のステファノ・コミニ(アウディRS3 LMS)が続いた。そして4位のタッシがベルネイを5位に抑えたことで、選手権ポイントをわずかに上回り、ポイントリーダーに返り咲いた。
残り2戦となったTCRインターナショナルの次戦第9戦は、10月7~8日に初開催となる中国の新サーキット、浙江国際サーキットを舞台に開催される。