2017年F1第13戦イタリアGPは、フェラーリの地元で圧倒的な速さを見せたルイス・ハミルトンが優勝。ニッポンのF1のご意見番、今宮純氏がイタリアGPを振り返り、その深層に迫る──。
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ルイス・ハミルトンが勝利の『定理』をモンツァで完全証明。PPを獲れば必ず勝つ、今年6勝すべてそうなのだ。速さで押しとおすレース・キャラ、第13戦イタリアGPでセバスチャン・ベッテルから首位奪還――。
土曜に雨煙のなか新記録69回目のPPを決め、日曜は秋晴れのなか史上5位の最速レース記録(平均243.626KMH)で独走。00年の16万人を超える大観衆ティフォシたちの前で見せつけた。
ハミルトンの定理を説明しよう。PPスタート69回から38勝は“勝率55%”、現役ドライバーでは群を抜く。ミハエル・シューマッハーが68回から40勝した“勝率58%”記録を残しているがそれを破る日も近いだろう。
ちなみにアイルトン・セナは65回から29勝、やや低い“勝率44%”はキャリア序盤時代、レース信頼性に劣るロータスでリタイアが多かったから。セナを超え、シューマッハーに匹敵するハミルトン、彼ら「三大超速ドライバー」の勝ち方にみられる定理である。
土曜の予選について。Q1途中で起きたロマン・グロージャン事故後、2時間36分もの中断が続いた。モンツァで予選が雨になったのは08年以来のこと、トロロッソのベッテルがPP1分37秒555(BSエクストラウェット)をマーク。あの時のコンディションと比べると印象記憶として、コース上の雨量はピット前ストレートを除きしだいに少なくなっていった。
再舗装されたのはパラボリカを出てから1コーナー手前までの直線区間、旧舗装から新舗装に変わるとまた旧舗装に戻る路面状態だ。当然そのグリップレベルは変化し、排水性(水たまり具合)も異なる。
グロージャンのハースがアクアプレーン症状のまま制御不能になった瞬間、個人的に思い出したのは昔の富士スピードウェイのストレート。
国内トップカテゴリーの『富士グランチャンピオン(GC)レース』では、雨天になると頻繁にその症状が起き、追突多重事故を何度も見た。グロージャンの後ろに何台かいたなら水煙で視界が遮られ、大事故になるところだった。
中断されている間、特例措置としてこのストレートにSCだけでなく何台かオフィシャルカー(一般車)を往復させ、溜まった雨水を排除する手段がとられてもよかったのではないだろうか。
アメリカン・レースではこうした作業が行われる。モンツァはこれまで雨にたたられるGPウイークが意外に少なく、スパ・フランコルシャンのような“ウエット対応策”があまりとられていなかった(と思える)。たとえばスパは新舗装・改修のたびにコース脇に排水溝を再整備、ピット前ストレートには横方向の“レイン・グルーブ(溝)”が以前から設けられている。
余談だが2時間半待ちの間ずっと立ったまま陽気に騒ぐティフォシたち。気温14度でも彼らの熱気はとても熱く、筋金入りのファンばかりと痛感させられた。これぞイタリアGP……。
前代未聞のグリッド・ペナルティについて。20人のうち半数近い9人に合計150ペナルティが科せられた。予選タイム順位のままのグリッド順位となったのはPPハミルトンのみ。
18位エリクソンは11位へ、19位ウェーレインは12位へ、ザウバー勢はノーペナルティなので今季最高6列目にグリッドアップ。現行規定による罰則とはいえ、この“フェイク・グリッド”はいかがなものだろうか(ロス・ブラウン氏にご検討いただきたい)。
ある意味でここを「捨てレース」にして次戦シンガポールGPにそなえたレッドブル。リカルド25グリッドダウン、フェルスタッペン20グリッドダウンもなんのそのダブル入賞4位&10位。
「チーム・オブ・ザ・デイ賞」があれば彼らがもっともふさわしい。なぜなら前代未聞の“フェイク・グリッド”を受けとめ、伝統あるイタリアGPでレーシング魂をつらぬいたから。さらに付け加えるなら、地元でフェラーリ/ベッテルを3位表彰台に立たせた4位リカルドは空気を読めるレーサー。