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DJ和、最新ミックス『ラブとポップ』ヒットの要因は? “2000年代Jポップ”に感じる音楽的な多様さ

2017年09月04日 19:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 8月9日にリリースされたDJ和の最新ミックスCD『ラブとポップ ~好きだった人を思い出す歌がある~ mixed by DJ和』(以下『ラブとポップ』)が好調である。90年代のラブソングを中心にした『俺のラブソング mixed by DJ和』(以下『俺のラブソング』)からアニソンをまとめた『J-アニソン神曲祭り-スパーク- [DJ和 in No.1 胸熱MIX]』を挟んでリリースされた今作は、主に2000年代前半の楽曲を中心にコンパイルされたもの。DJ和として最大の初動を記録した今作は、オリコンアルバムウィークリーランキングTOP5にも2週連続でランクインし、発売3週間で4万枚を突破。この先もさらなるヒットが期待される。


 今作の魅力はもちろん椎名林檎「ギブス」や浜崎あゆみ「SEASONS」といった時代を代表するナンバーを含むその収録曲にある……のは当然なわけだが、個人的にはまずこの作品の「外見」について触れずにはいられない。自分と同世代(アラサー世代から30代半ばまで、つまり今作の収録曲に何かしらの思い出が染みついているであろう世代)の男性で、広末涼子の写真が全面にあしらわれたこのジャケットに抗える人がどれだけいるだろうか? 音楽をデータで聴くことが普通になった今の時代だからこそ「パッケージとしてのCD」の見せ方は重要性を増しつつあるが、時代の象徴でもあった存在(自分含め彼女のことが「好きだった」リスナーも多いはずである)をがっつり使ったアートワークが今作の好調なセールスに寄与していることは間違いない。


 2000年代前半に広末涼子が出演したドラマとして田村正和と共演した『オヤジぃ。』があるが、その主題歌だった花*花「さよなら大好きな人」も収録されている今作。「さよなら大好きな人」の前後には河口恭吾「桜」や一青窈「ハナミズキ」といったバラードが並ぶが、そういった共通性以上に今作を通して感じるのは収録曲の音楽的な多様さである。RIP SLYME「One」 やnobodyknows+「ココロオドル」といったヒップホップ、CHEMISTRY 「PIECES OF A DREAM」やCrystal Kay「恋におちたら」のようなR&Bテイストの楽曲、ASIAN KUNG-FU GENERATION「君という花」やサンボマスター「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」などのバンドサウンドなど、そのレンジはかなり広い。90年代前半の楽曲主体だった『俺のラブソング』がどちらといえば今の時代との違いが際立つ作品だったのに対して、『ラブとポップ』は現在の音楽シーンとの連続性をより感じることができる。


 また、菅野美穂がドラマ『愛をください』の役名である蓮井朱夏として歌った「ZOO ~愛をください~」やWhiteberry「夏祭り」といったカバー曲(前者はECHOES、後者はJITTERIN’JINNがオリジナル)、YUI for 雨音薫「Good-bye days」やNANA starring MIKA NAKASHIMA 「GLAMOROUS SKY」といった映画の企画から派生した楽曲(前者は『タイヨウのうた』、後者は『NANA』)など、その出自が非常に幅広いのも今作の特徴である。最近の「90年代リバイバル」的な空気の中で2000年代のJポップは影が薄い存在になりがちだが、この時代こそJポップという概念が様々な文化と結びつきながら日本人の生活に入り込んでいく時期だったことを『ラブとポップ』は改めて実感させてくれる(もしかしたら、今度は「2000年代リバイバル」のようなムーブメントが起こる……こともいずれあるかもしれない)。


 『俺のラブソング』のインタビューでは「「Jポップ」っていう単語が指し示す概念を再構築したいなと思っているんですよね」と話していたDJ和。Jポップの黎明期である90年代前半、Jポップが定着し花開いた2000年代前半の楽曲を総括した彼が、今後どんな形でJポップの次の形を提示してくれるか楽しみにしたい。(文=レジー)