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WEC:トヨタ、ダウンフォース不足で無念の敗北。可夢偉「次戦以降、僕らはもう一度良くなる」

2017年09月04日 15:52  AUTOSPORT web

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苦戦を強いられたトヨタTS050ハイブリッド
WEC世界耐久選手権は9月3日、第5戦メキシコの決勝レースが行われ、TOYOTA GAZOO Racingは8号車トヨタTS050ハイブリッドが3位表彰台を獲得し、僚友の7号車トヨタTS050ハイブリッドは4位となった。

 全9戦からなる2017年のWEC、シリーズの折り返しとなった第5戦メキシコ。トヨタはシーズン開幕2戦で好成績を残してきたが、第3戦ル・マンで勝利を逃し、その後の第4戦ニュルブルクリンクでも苦しいレースを経験した。
 
 標高2200メートルを超える高地での戦いとなるメキシコラウンドも空気が薄くダウンフォースを得られにくいコース特性から、ライバルのポルシェと比べてダウンフォースの発生量が少ないトヨタTS050ハイブリッドにとっては厳しいレースになることが予想された。
  
 事実、決勝前日に行われた公式予選では2台のポルシェ919ハイブリッドにフロントロウの独占を許し、トヨタの2台はセカンドロウからスタートすることとなった。
 
 レース中に雨が降るという予報が出るなか、現地時間正午に6時間レースがスタート。グリッド2列目からスタートした7号車トヨタと8号車トヨタは事前の予想通りポルシェのペースについていくことができず、序盤から一方的に差を広げられてしまう。
 
 最初のスティントではマイク・コンウェイの駆る7号車トヨタがセバスチャン・ブエミの8号車トヨタをリードしたが、スタートから90分を過ぎたところでブエミがコンウェイを交わして3番手につけた。
 
 第3スティントを迎えた7号車トヨタはホセ-マリア・ロペス、8号車トヨタは中嶋一貴が乗り込んでいくが、この際、マシンのダウンフォース不足によってタイヤの摩耗がほとんど見られなかったことから、7号車トヨタはタイヤを交換せずに3スティント連続走行を実施している。

 その後、順位を入れ替えて迎えた終盤のスティントでは、7号車トヨタは小林可夢偉に。8号車トヨタはアンソニー・デビッドソンにそれぞれドライバーをスイッチ。
 
 チェッカーまで残り30分となった頃、コース上にはわずかに雨が落ちて来たがウエットタイヤに交換するほどの雨ではなく、レースに影響を与えることはなかった。トヨタはこの最終スティントにおいて、チームオーダーを行使。ドライバーラインキングで2位につける8号車トヨタを7号車トヨタの前でゴールさせるべく、可夢偉がドライブする7号車トヨタをピットに戻し、順位を入れ替えている。
 
 この結果、狙い通り8号車トヨタは3位でチェッカーを受け、デビッドソン、ブエミ、一貴は選手権ポイント15点を追加。ドライバーズランキングの合計点を93ポイントとし、41点差でトップのポルシェ2号車(ティモ・ベルンハルト/アール・バンバー/ブレンドン・ハートレー)を追うこととなった。
 
 第4戦に続き、今回のレースもトヨタにとっては苦しいレースとなったが、シーズン残り4戦はトヨタにとって得意なコースが続く。次戦のアメリカ・オースティンは気温、路面温度も非常に高くなることから、タイヤに優しい特性を持つTS050ハイブリッドにとっては適したコースといえるだろう。トヨタは本来のマシンパフォーマンスが発揮できる次戦以降、ふたたび表彰台の中央を目指し、打倒ポルシェを胸に第6戦に挑む。


「非常に残念なレースとなってしまいました。我々はここメキシコへ勝利を目指してやって来て、両チャンピオンシップでのポイント差を詰めるチャンスだと考えていましたが、ポルシェに敵いませんでした」と村田久武TOYOTA GAZOO Racing代表は敗北を認める。

「ドライバーを含めたチームは今週末、全員が全力でレースに挑んでくれましたが、望んでいた結果にはなりませんでした。気持ちを切り替えて次のレースに備えます」

 第2戦スパ以来、3戦ぶりに表彰台に登った8号車トヨタの一貴は「僕ら全員にとって厳しいレースとなってしまいましたが、少なくともノートラブルで完走し、表彰台に上がれたことは良しとしなくてはならないでしょう」と語った。
 
「僕のスティントでは7号車トヨタがタイヤを3スティント連続で使うストラテジーを採った一方、僕はニュータイヤで出ていった。そうしたら、なぜか向こうが後ろになっていました」と自身の担当スティントを振り返った一貴。

 マシンのフィーリングは「最初のスティントではバランスが悪く、かなり苦労しました。バランスを良くするためにいろいろな面でクルマをいじっているうち、セカンドスティントになってから、ようやくドライブしやすくなっていった」という。

「僕たちの8号車トヨタにとっては第2戦スパ以来の表彰台であり、その点では良かったです。全体的に厳しいものとなったレースウイークですが、全力を尽くしました」

 また、7号車トヨタの可夢偉も「ベストを尽くしましたが、残念ながら今日はポルシェにプレッシャーをかけることができませんでした」とレースを振り返った。
 
「僕らのマシンがこのコースに合っていないことは分かっていました。ポルシェとはトラフィックの処理が絡んだセクター2でのタイムのバラつき方に差がありましたね」

 2週間後に迫る第6戦に向けては「メキシコと前戦のニュルブルクリンクがトヨタにとって一番厳しいところ。このふたつを乗り切れたので、僕らはもう一度よくなると思います。表彰台を逃したのは残念ですが、これもレースですし、オースティンに向けて士気は高まっています。次戦は必ず勝利を争えるよう、全力を集中して臨みます」と意気込みを語った。

 WECの次戦、第6戦は2週間後の9月15~17日にアメリカ・オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズで開催される。