インディカー・シリーズはこのワトキンスグレンで夏の3連戦が終わり、いよいよ天王山の最終戦ソノマを迎える。佐藤琢磨だけでなく、どのドライバーも今年の締めくくりを良い形で終えたいと思っているだろう。
夏の3連戦のうち2戦を終え、ここまでまったく結果に繋がらず空回りが続いてる琢磨。予選までのパフォーマンスは例年にないほどだ。もう予選で10位以下になることは想定外だと言えるし、決勝の結果さえついて来れば、ランキングで8位に甘んじることもなかっただろう。
残りの2戦をしっかりフィニッシュし、来年に繋げたいところ。琢磨のまわりでは来季に向けて雑音も多くなっている。それを払拭するには、まず結果を出すしかない。
プラクティスではチームメイトのライアン(ハンターレイ)や、アレクサンダー・ロッシのデータを参考にし、じっくりマシンを煮詰めていった感のある琢磨。
しかし予選になると、どこかにしまってあった10馬力を引き出しから出してくるように、素晴らしいパフォーマンスを見せた。
Q1、Q2では最初からレッドタイヤを履き、Q3をブラックタイヤで臨むという変わった展開となったが、琢磨はQ3のファイナルラップでおよそ0.1秒ほど遅れをとって、予選4番手に甘んじた。
ポールポジションはチームメイトのロッシ。そのあとスコット・ディクソン、ジョゼフ・ニューガーデンと、琢磨までが0.1秒以内で凌ぎを削った。
「本当に惜しかったですね。ターン9まではトップタイムみたいだったですけど、ちょっとだけ姿勢が乱れて……。でも昨年に比べたら、アンドレッティの車は飛躍的に良くなったし、アレックス(ロッシ)のポールも素直に喜びたいですね。明日は雨予報? 晴れでも雨でも大丈夫ですよ(笑)」
決勝に向けても自信たっぷりだった琢磨。予報通り朝から雨が降ったが、朝のウォームアップは路面も徐々に乾き始めるような状態だった。レインタイヤのライフもすぐに終わってしまい、不確定要素の多い決勝レースがどうなるのか楽しみだった。
しかし予想に反してレーススタートまでに雨は降らなかった。ただ路面がまだ濡れていたので、競技長はレインタイヤでのスタートを決め全車ウエットタイヤでスタートに。
グリーンでレースがスタートするとニューガーデンがトップに立った瞬間ロックアップ! はらんだところにロッシ、琢磨、ディクソンとなだれ込んでいく。琢磨はふらついたニューガーデンをかわして2番手に浮上。ターン2から、トップのロッシに追いつこうという頃にいきなり失速! 後続車に次々と抜かれ始めた。
1周を終え、ほぼ全車がタイヤ交換のためピットインするが、琢磨はその時点で14番手まで落ちていた。マシンの異常を探りつつ、システムを再インストールしてコースに戻ったものの、15周目に再びコース上でストップしてしまう。すぐにマーシャルに引かれてピットに戻ってきた。
マシンをチェックすると、ターボのウエストゲートの制御をするプラグが外れており、それを修復してすぐにコースに戻った。
この時点で4周遅れとなってしまった琢磨。マシンのペースも戻って、一時はファステストタイムを叩き出すほどだ。ファステストはこの後セバスチャン・ルデーに取られてしまうものの、26号車の本来の速さは証明できただろう。
琢磨に限らず、優勝したロッシ、3位のハンターレイとアンドレッティのマシンは速かった。どのドライバーにも勝つチャンスがあった。琢磨にとって4周遅れの19位というリザルトは、受け容れ難いものだ。
「今日は優勝できましたね、冗談ではなくて(苦笑)。スタートのターン1もうまくいったし、ターン2でニューガーデンをかわして、もうアレックスの後ろは見えてた。1周目はプッシュ・トゥ・パスも使えないから、アレックスをかわせていたと思います」
「その後のイエローコーションも、僕らにとっては悪いタイミングではなかったし、いいレースができたはず。コースに戻った時にはファステスト(その時点で)も出ましたからね。この悪い流れは何なのでしょう?(笑)。もうソノマでいいレースをして今年をスッキリ終えたいですね」
速さがあるだけに悔しいレースが続くが、インディ500での優勝も含め2017年が良い年で終われるよう、最終戦のソノマに期待したいところだ。