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インディ第16戦:勝利の女神はロッシに微笑み今季初勝利。琢磨はまたしても不運に泣く

2017年09月04日 10:22  AUTOSPORT web

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2016年インディ500以来の勝利を挙げチームクルーの祝福を受けるアレクサンダー・ロッシ
ワトキンス・グレン・インターナショナルで開催されているインディカー・シリーズ第16戦。3日に決勝レースが行われ、ポールポジションからスタートしたアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)が2016年のインディ500以来となるキャリア2勝目を挙げた。予選4番手から挑んだ佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)は、またしてもマシントラブルが襲い19位となった。

 テキサス州ヒューストンなどに甚大な被害をもたらした大型ハリケーン・ハービーの影響は、カナダと国境を接するニューヨーク州の山中にまで及び、ワトキンス・グレン・インターナショナルでのシリーズ第16戦はとても気温の低いコンディションで行われた。

 予選ではアレクサンダー・ロッシがポールポジションを獲得した。コースレコードを樹立しての堂々たるキャリア初PP。昨年のアンドレッティ・オートスポートはワトキンス・グレンで全員が予選Q1での敗退を喫したが、今年はロッシがトップ、佐藤琢磨が4番手、ライアン・ハンター-レイが惜しくもファイナル進出を逃す7番手だった。マルコ・アンドレッティだけは20番手と不本意な成績に終わったが、ロードコースのマシン・セッティングの大幅向上を彼らは実現している。

 予選2番手はスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)。去年シボレーのマシンで圧倒的な速さを誇った彼は、ホンダにマシンをスイッチしても速さを維持。PPは逃したが予選2番手とフロントローにグリッドを確保した。ただし、この2番手は0.0001秒差で実現したものだった。

 ポイントリーダーのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が1分22秒5269を出してトップに立った直後、ディクソンは1分22秒5268でトップを奪った。最終的にロッシが1分22秒4639と0,0529秒差でPPを手にするのだが、3.37マイルに11個ものコーナーがあるロードコースで差が1万分の1秒! インディカー・シリーズの競争の激しさが現れていた。

 予選ではホンダがワン・ツー。シボレーの1台を3番手に挟んで4、5番手もホンダ。トップ10にホンダ勢が7人も入っていた。昨年はシボレーが予選でトップ8をさらい、レースでも1-2-3フィニッシュでシボレーが表彰台を独占している。


 レースは雨の心配がなされる中、全車がファイアストンのレインタイヤを履いてスタート。しかし、雨は上がり、気温も16度と予選までよりはやや高めとなったことから、1ラップを終えたところで21台中の19台がピットに向かい、スリックタイヤにチェンジ。ステイアウトした2台も次のラップにスリックへと交換した。

 ロッシはポールポジションからトップを守ったが、スリックでの1ラップ目終盤、ターン9立ち上がりで大きくホイールをスピンさせ、予選6位から2番手まで順位を上げていたエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)にトップを奪われた。

 さらに、ロッシは次のピットストップで燃料ホースにトラブル発生。ほとんど給油をまともに行えずにコースへ復帰。7周後にもう一度ピットに入って17番手まで大きく後退した。チームのミスで優勝のチャンスは泡と消えた。そう思われたが、幸運にも2周後にイエロー発生。ライバル勢が給油を行なった際にコース上にとどまり、トップに返り咲いた。

 しかも、ピットタイミングをずらす作戦を採った何台かをトップグループとの間に挟むことができ、大きなリードを手に入れることにまでなった。


 不運が幸運に転じたロッシは、そのまま優勝へと逃げ切った。レース終盤にはディクソンがワトキンスグレン5勝目に向けて猛チャージを仕掛けて来たが、前を走るロッシはアタックのチャンスを与えなかった。

「昨年のインディ500とは違い、今日の僕らには圧倒的に速いマシンがあった。トロントでインディ以降初めての表彰台に上り、今週は初PP、キャリア2勝目を挙げた。これでもうプレッシャーからは解放される」

「最後の12周はディクソンとの一騎打ちとなり、同じマシンに乗る彼と戦って勝てたのだから最高だ」とロッシは語った。

 彼はこのレースウィークエンド中に2018年もアンドレッティ・オートスポートに残留することを発表しており、初優勝のタイミングはベストのものとなった。

 佐藤琢磨は予選4番手からスタートし、ふたつ目のターンへと飛び込むところで2番手に浮上した。しかし、その直後に失速。ディクソンに抜き返された後は見る間に順位を落とていき、そのまま優勝争いから脱落する羽目に陥った。トラブルはターボのコントロール系に発生したようだ。

「スタートが良く、ターン2で2番手に上がることができた。その後すぐにロッシのスリップに入れたので、あのままちゃんと走れていたらトップに立てていた。優勝を狙えたはずですよ」と琢磨は悔しがる。

「ソノマはここ数年いい戦いができているコースだし、アンドレッティ・オートスポートが去年速かったコースだから、ロードコースでの優勝を目指す」と今年最後のレースでの活躍を誓っていた。


 ポイントランキングはニューガーデンが辛うじてリードを保った。最後のピットストップでチームメイトのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)と並んでダッシュするカタチとなったニューガーデン。

 パワーはポイント・リーダーに道を譲ったかに見えたが、ニューガーデンの加速が鈍く、パワーが先行。その直後に下り坂のピット出口でニューガーデンはフロントタイヤのグリップを失い、ガードレールに激突。

 そこへセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング)が突っ込んでマシンに大きなダメージを受けてしまった。ピットでの修理を受けている間に周回遅れに陥った彼は18位でゴール。13点しか稼げなかった。

 ポイント2位のディクソンはレースも2位フィニッシュして41点をゲット。ニューガーデンとの差は31点から3点へと一気に縮まった。

 実質的にはこのふたりのチャンピオン争いか? とも思われるが、ランキング3番手のカストロネベ今日4位フィニッシュしたことでニューガーデンとの差は22点と、ソノマで逆転タイトルを手にする権利は十分にある。

 ランク4番手のシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)はニューガーデンから34点差、5番手のウィル・パワーは68点差だ。

 シーズン終盤に来て好成績を続けて挙げているロッシは、今日の優勝によりグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)を抜いてランキング6番手に浮上した。ダブルポイントの最終戦で最後に笑うのは誰か?