日本時間の9月2日、WECメキシコ戦のメディア・ブリーフィングにてACO/WECが発表した2018年以降のプランは、LMP1カテゴリーの将来像を大きく変えるものだった。今季限りでポルシェが撤退したあと、トヨタが参戦を続けるかどうかにも、当然影響を及ぼす内容だ。8月よりトヨタのチーム代表およびTMG社長に就任した村田久武氏に、このACO/WECの発表内容について聞いた。
まず、LMP1を“ひとつのカテゴリー”として、ノンハイブリッドマシンをハイブリッド搭載マシンと同等のレベルに引き上げて戦わせることについては、「このままだとハイブリットはトヨタだけになってしまうし、何よりもレースはファンのためのもの。競い合いがあってこそ見ていて面白いわけですから、プライベーターとのアジャストは完全にアグリーです」という。
トヨタとしては、自分たちよりもはるかに予算規模の少ないライバルたちと同じ土俵で戦うことになるが、「もともとトヨタがWECを始めたのは、ハイブリッドをサーキットに持ち込んで技術を磨くため。それにはお金がかかります。それを維持しながら、ライバルと競争ができるレギュレーションをオーガナイザーが作ってくれた、ということだと理解しています」と、自分たちの参戦意義を貫きながらも競争相手をなくさずに済む状況を村田氏は歓迎する。
外部からは「では、ハイブリッドを下ろして、安いコストでル・マンを勝ちに行ったほうがいいのでは?」という声も聞かれるが、「そういう選択はありえない」と村田氏は明確に否定する。
「プロレスじゃないけど、ショーをする目的でレースに出ているのであれば、それもありです。しかし、トヨタはそのためだけのレースはやらない会社。レースは技術を磨くための場であるという方針はブレません」
■“ウインターシリーズ化”した18年カレンダーは「誰が見てもル・マンが“ゴール”だから、いいと思う」
2日のメディア・ブリーフィングでは、今年のル・マンで発表した2020年規則も見直していくことが明らかになった。この規則はプラグインハイブリッドやEV走行の義務付けなど、技術としてはさらに“過激化”していく方向性のもの。
技術を磨きたいトヨタとしては歓迎方向の規則だったようにも思えるのだが、その見直し決定についても「長く続けるためには、費用の高騰はある程度抑えなければいけませんから、まっとうではないでしょうか」と賛同の立場をとる。
「次から次へと新技術を投入するのもいいですが、それが何のための規則なのかを考えなければいけません。市販車に必要のない技術までは、やらなくていい」というのがその理由だ。
カレンダーが“ウインターシリーズ化”してル・マンが最終戦になることについて村田氏は、「誰が見てもル・マンが“ゴール”だから、いいと思います。最終目標に向かって、テストもレースも使いながら磨いていくことは、あるべき姿だと思います」と語った。
今回の決定により、ハイブリッドを搭載しなくても最高峰クラスで戦えることになり、ローコストでの参戦を希望しているプジョーなどは、スポーツカーレースに復帰しやすい状況が整ったとも言える。
トヨタにとっても、アウディ、ポルシェに代わるライバルメーカーが登場すれば、この先の活動を続けていく“大きな理由”にもなる。
トヨタが翌年のモータースポーツ活動全体の決定を下すのは例年9月で、「そこに向けて、会社のなかで議論している最中」と村田氏は言う。10月のWEC富士戦の頃には、トヨタの来季について何らかの発表があるだろう。