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橋本環奈に「コスプレか!」 登場人物にツッコミたくなる、今夏の隠れヒット『警視庁いきもの係』

2017年09月03日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 視聴率こそ1ケタ台だが、SNSや口コミサイトを見ても、識者たちのコラムを拾っても、「おもしろい」という声ばかり。『警視庁いきもの係』(フジテレビ系)は、今夏の隠れたヒット作と言っていいだろう。


参考:橋本環奈、とうとう“千年に一人の美少女”のイメージ破るーー『銀魂』神楽役の振り切れた演技


 同作には「一風変わった刑事モノだよね」「“動物で謎解き”は狙い過ぎじゃないの?」なんて先入観を軽く吹き飛ばす、緻密な計算が施されている。


 まずプロデューサーの仕事である作品全体のバランスが絶妙。1話完結で見やすい刑事モノに、動物の癒しを絡めた映像は、ファミリー視聴の多い日曜夜にピッタリだ。動物にまつわる大小の事件を描き、豆知識を交えながら事件解決につなげていく脚本も、「なるほど」「そうなの?」と思わされ、不自然さはない。


 キャストは、すっかり演技派の重鎮になった渡部篤郎と、アイドル・橋本環奈のデコボココンビに、美男美女枠の三浦翔平と石川恋、浅野温子・でんでん・長谷川朝晴の曲者俳優、子ども向けの横山だいすけおにいさんまで、全方位対応。薄圭子(橋本環奈)の婦警姿に対する「コスプレか!」を筆頭に、「登場人物全員にツッコミたくなる」という意味では、多彩なキャラクターが舞台を駆けまわる喜劇舞台のようにも見える。


 細かいカット割りでテンポを生み出したり、須藤(渡部篤郎)と四万十拓郎(横山だいすけ)が寒いダジャレを連呼したり、エンディングでキャスト全員が動物の着ぐるみと踊るなど、脱力した世界観を徹底。刑事モノだけに殺人事件も多いが、暴力や無残な死体が登場するシーンはない。その上で、「須藤の頭部に銃弾が残っている」という連ドラらしいミステリーも用意しているなど、丁寧な仕事ぶりが光る。


■獣医ばかりの動物モノに風穴を開ける


 それにしても、ここまで多くの動物をさまざまなカットで見せるドラマは見たことがない。これまで動物を扱ったドラマと言えば、2003年の『動物のお医者さん』(テレビ朝日系)、2010年の『獣医ドリトル』(TBS系)、2014年の『獣医さん、事件ですよ』(日本テレビ系)などがあったが、いずれも獣医が主人公の物語だった。刑事が主人公の動物ドラマは、それだけで画期的と言える。


 また、これまでの動物ドラマは、「毎週メインの動物が決まっていて、それ以外はほとんど映らない」というのがお約束だった。しかし、『警視庁いきもの係』はメインの動物こそ決まっているが、ネコ、イヌ、ニワトリ、ハリネズミ、フェレット、ミニチュアホース……スキをみてさまざまな動物が映り込んでくる。


 たとえば第8話では、メインとなるフクロウが薄の頭に飛び乗ったり、クネクネと首を振って愛きょうを振りまいたり、クークーと鳴き声を出したり、足をバタバタさせてご飯を食べるなどのサービスショットを連発。その合い間を縫うように、ネコ、フェレット、インコ、コウモリが登場した。


 タレントネコ・ティティ(スコティッシュフォールド)をはじめ、動物たちの演技は素晴らしく、謎解きに絡む繊細な動きも難なくこなしている。さらに、それをしっかり映像化しているスタッフの技術力と努力も称賛しておきたい。


■癒し路線を「フジ復活」につなげたい


 フジテレビの日曜21時枠は、日本屈指のドラマ枠である裏番組のTBS「日曜劇場」に負けっ放し。しかし、『マルモのおきて』と『早海さんと呼ばれる日』は互角の勝負をしていた。どちらも視聴者に癒しを感じさせる作品であり、“熱い男たちの物語”が多い「日曜劇場」の対抗馬として機能していたのだ。


 しかし、単発に終わったことで視聴率は低迷が続き、今夏限りでの撤退が事実上決定。『警視庁いきもの係』を見ていると、「もし癒し路線を貫けていたら……」という思いを抱かずにはいられない。見方を変えれば、「終了前の作品だからリラックスして作り込めた」と言えるが、ここに「フジテレビ復活」のヒントが潜んでいるのではないか。ともあれ、動物好きでなくても、見て損はない作品だ。


■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月間20数本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。