7月中旬からの長いサマーブレイクを経て、FIAの欧州選手権であるETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップの第5戦がハンガロリンクで再開。このオープニングとなる土曜のレース1で、地元ハンガリーのドライバーであるノルベルト・キス(メルセデス・ベンツ・トラックス)がポールポジションからの優勝を決め、詰めかけたファンを大いに喜ばせた。
昨季の王者であり、今季からマシンをMANからイベコにスイッチしたヨッヘン・ハーンとのポールポジション争いを繰り広げたキスは、その王者を0.8秒差で下し今季3度目のポールを獲得。
チーム・タンクプール24・レーシングのメルセデス・ベンツ・トラックスは、キス自身「あまり上手くいかなかった」というスタートでも、なんとかフロントロウに並んだ王者を抑えることに成功すると、地元トラッカーたちが集いクラクションやエアホーンが鳴り響くスタンドを前に快走を披露する。
一方、4番グリッドからのスタートとなったポイントリーダー、バギラ・インターナショナル・レーシング・システムのアダム・ラッコ(フレートライナー)は、オープニングラップで同じく5番グリッドに並んだトラックスポーツ・ルッツ・ベルナウのアントニオ・アルバセテ(MAN)とのバトルでわずかにヒットされ、スピードを殺せないままコースオフ。芝生の広がるグラスエリアを辛くも切り抜け、なんとかコースへと復帰するスリリングな状況を味わうこととなった。
その後、アルバセテを含め複数のドライバーが、規定で設定された最高速の160km/hを上回るトップスピードを計時したとしてタイム加算ペナルティを受けポジションダウン。
結果、サマーブレイク前の前戦スロバキアでも2勝を挙げているキスが、直近5戦で3勝目となる地元勝利を挙げ、2位に王者ハーン。そして最後の表彰台となる3位には、予選でも3番手を記録していたシリーズの紅一点、シュティフィ・ハルム(MAN)が入った。
続くリバースグリッドのレース2からは、様相が一変。現ポイントリーダーのラッコが底力を見せつける展開となり、11周のレースで次々と前走者をパスする速さをみせ、王者ハーンとともにサイド・バイ・サイドでファイナルラップへ。
そのまま1周を回りきり、最終のライトハンダーでわずかに先行したラッコのフレートライナーが、ボンネット分の長さとも言うべき0.602秒差で王者をかわし今季7勝目。
これで覚醒したか、翌日の日曜日もラッコの勢いは止まらず、前日に続きポールポジションを獲得したキスのメルセデスに対し、コンマ差のリードを維持してレース3も勝利した。
続く午後の最終レース4でも、8番グリッドからのスタートをものともせず、最終的に2番手で食い下がったハルムを4秒以上も引き離す圧倒的強さで3連勝。これで選手権でのリードを58ポイントに広げ、初の王座に向け盤石の体制を築いた。
次戦ETRCのラウンド6は今週末の連戦となる9月2~3日となり、そのラッコの故郷でもあるチェコ、モストのトラックが舞台。フレートライナーがシリーズリーダーとして凱旋するイベントとなる。