前戦ポーランドに続き、夏のターマック連戦となったERCヨーロッパ・ラリー選手権の第6戦『バウム・チェコ・ラリー・ズリン』が8月25~27日に開催され、長年シュコダ・モータースポーツのエースを務める元ERC王者、ヤン・コペッキー(シュコダ・ファビアR5)が同イベント6度目の勝利をマーク。今季6戦で6人目の勝者ともなった。
ERCの名物イベントとして知られ、首都プラハから南に300km離れた大学都市モラヴィア周辺のターマック・ステージ群を舞台に開催された同ラリーは、初日から地元の英雄であるコペッキーと、今季前半の大怪我から復帰を果たしたばかりのロシア人、アレクセイ・ルキヤナク(フォード・フィエスタR5)との一騎打ちの様相となった。
金曜夜のオープニングとなった、ズリン市街地のスーパースペシャルと、明けた土曜早朝のSS2でコペッキーにトップタイムを奪われたルキヤナクは、続く11.55kmのSS3でまだ骨折の完治しない体に鞭打って反撃に転じ、チェコのライバルを6.3秒上回るステージベストをマーク。これで0.3秒のマージンで初のラリーリーダーに立った。
しかし、続くSS4はラリー最長の22.87kmのステージとなり、距離からくる肉体への負荷と集中力維持に苦しみ、再び足と腰、そして左のかかとに痛みを抱えながらのドライブに。
ステージを走破するため慎重なドライビングを強いられたルキヤナクはタイムロスを余儀なくされ、再びコペッキーに首位の座を明け渡すこととなった。
その後も、不屈の闘志を見せたルキヤナクは、SS5でもでトップタイムを記録し、コペッキーと激しい攻防を繰り広げるが、続くSS6ではスタート直後のヘアピンで痛恨のスピン。時を同じくして彼のフォード・フィエスタR5にはパワーステアリングのトラブルも襲い、デイ1最後のSS9では意地のベストを刻んだものの、初日終了時には16.6秒のビハインドを背負うこととなった。
これで楽な展開となったコペッキーだが、元ERC王者としても、地元戦で17戦無敗の記録を持つターマック・マイスターとしても、ドライビングの手を緩めることなく攻めの姿勢を貫き、デイ2のSS10からSS15までの全ステージを完全制覇。最終的にルキヤナクとのマージンを55.5秒まで広げて、自身6度目のホームイベント勝利を飾った。
「本当に素晴らしい戦いだった。チームや(コ・ドライバーの)パベル(・ドレスラー)がとても良い仕事をしてくれた。初日はアレクセイとタイトなバトルになり苦労したけど、彼は100%快適な状態でないにも関わらず、素晴らしいスピードを披露した」と、勝利の喜びとともにライバルへの賛辞を送ったコペッキー。
一方、本格復帰後初となるポディウムを獲得した2位のルキヤナクは、デイ2に入ってから左足の痛みが増し、ブレーキングを右足に切り替えての戦いを強いられていたことを明かしつつ、「残念ながら、今回は本格的に戦うことができなかった。今後僕らはもう一度、シリーズでの戦い方に関して焦点を合わせる必要があるね」と、ラリーを振り返った。
続く3位表彰台には、かつてWRC世界ラリー選手権にも参戦し、シュコダ・ワークスやMスポーツにも所属した経験を持つ地元のレジェンド、ロマン・クレスタ(シュコダ・ファビアR5)が入り、地元ファンを湧かせている。
また、今季から創設されたERCジュニアのカテゴリーでは、ドイツ人のマリアン・グリーベル(シュコダ・ファビアR5)がERCジュニアU28の初代タイトルを獲得。FIAからのプライズとして、来季2018年のWRCヨーロッパ・ラウンドの複数イベントにて、WRカーでの参戦というチャンスが贈られる。同じく、ERCジュニアU27はアレックス・ザワダ(オペル・アダムR2)が王者となり、10万ユーロ(約1300万円)のキャリア基金を手にしている。