9月1日、富士スピードウェイは2018年6月上旬予定で、スーパー耐久を『富士SUPER TEC 24時間』として開催する計画があると発表した。実際にスーパー耐久に参戦するドライバーたちにとっては、この24時間開催のニュースにどんな感想をもったのだろうか。何人かのドライバーに話を聞いた。
スーパー耐久では2008年まで十勝24時間レースを開催しており、これが日本では唯一開催される24時間だったが、09年以降、日本で24時間レースは開催されていなかった。しかし9月1日、富士スピードウェイは2018年のスーパー耐久を24時間で開催する計画があると発表した。これが実現すれば、10年ぶりに日本に24時間レースが帰ってくることになる。
「僕は2006年から08年まで十勝に出ていて、その後は海外でドバイやデイトナには出ましたが、日本国内ではそれ以来の24時間になりますね」というのは、16年のST-Xチャンピオンドライバーのひとりである藤井誠暢だ。
「昼間にレースをする分には6時間レースも10時間も変わらないのですが、夜に走って朝を迎える……というのがあるのは24時間だけですよね。夜と朝を迎えるのは感動するんです。そういった体験が日本でできるのは嬉しいですね」
「自分も若かった頃に24時間レースを戦ってすごくいい経験ができましたし、僕たち1号車スリーボンド 日産自動車大学校 GT-Rが来季もそのままのプログラムで参戦するか決まっているわけではないですが、学生のみんなが関わって24時間レースをやるのは、絶対にいい経験になるし、感動すると思います」
藤井の言うとおり、ドライバーやスタッフ、そして観戦しているファンにとっては、24時間レースは何物にも代え難い感動と喜びがある。もちろん勝者は1台だけだが、完走したチームすべてが勝者とも言えるようなものだ。まさに耐久の醍醐味と言えるだろう。
■24時間レース開催に向けては課題も
一方、07~08年と2年連続で十勝24時間を制した“ラストウイナー”のひとりである片岡龍也は「日本には24時間レースがなかったので、その意味では面白いと思いますし、ずっと24時間がなくて寂しかったので、復活は嬉しいです」と喜んだ。
「富士なのでお馴染みの場所ですし、ファンの皆さんも都心部から比較的楽に観に来られると思うので、日本のモータースポーツが文化になる第一歩としては、画期的なものではないでしょうか」
ただ、片岡は今季スーパーGTではドライバーだが、スーパー耐久としては自らチームを主宰する立場になっている。「ドライバーとしては24時間は大好きだったんですが、現実的にチームを運営する立場になると『24時間の予算はどうするんだ?』となってしまいます(苦笑)。1年分を1レースで消耗してしまいますから。昔の十勝はどうやっていたのか考えてしまいますね」
他にも国内トップカテゴリーに参戦する複数のドライバーに話を聞くことができたが、ひさびさの24時間レース復活を喜ぶ一方で、ドライバーの視点からは今後に向けての課題もありそうだ。今回聞かれた意見は下記のようなものだ。
「(ST-XからST-5まで)クラスが多くて、危ない部分がある。特に夜間走行になると距離感もつかみづらくなるので、安全のためには誰でも出られる状況はなんとかした方がいいのでは」
「夜の富士は、ハイビームにしても次のコーナーが見えなくなる。照明は必要になると思う」
「現状では課題も多いと思う。スタッフの数や、マシンの耐久性も含めて来年までにやらなければいけないものも多いのでは。また、ここは(エントラント側も)食事をとるのが少し大変なので、その点も含めたインフラ面もどうにかしなければいけないと思う。でもチャレンジとしてはすごく面白い。課題を解決できるのであれば、ぜひ挑戦したい」
その他にも、周辺地域に対するエキゾーストノートの大きさや、他シリーズに参戦しているチームスタッフの負担等も含めて、24時間レース開催には富士スピードウェイもスーパー耐久も多くの課題はありそう。ただ、それを乗り越えエントラントもファンも楽しめるレースを作ることができれば、間違いなく日本を代表し、海外からも関心を集める耐久レースへと成長する余地はある。今後の発表を待ちたい。